ドレスing

野菜をめかし込み、きらびやかに彩るもの。いわゆる野菜のドレス。それがドレッシングである。

などというファンシーなことを言うつもりはさらさらなかったのだが、部屋の掃除をしていたら、フレンチのアルバイトをしていた頃のレシピメモが出てきた。

ペーペーの私は前菜を担当していたため、営業時間が始まる前はキッシュのタネやアミューズの準備、各種野菜のカットやドレッシングを作っていた。

生野菜を使い、季節ごとに移りゆくドレッシングの味はどれも素晴らしく、作ってからほんの一日、二日経ったものは酢の“かど”も取れて、それをかけた野菜は本当に美味しく感じられたものだ。

そんなわけで、市販のドレッシングは好きではない。化学調味料の変な味がするものが多い、というのも理由の一つだが、何よりドレッシングはその時の気分で様々なものを楽しみたい。

やれ今日はバルサミコ、白ワインビネガー、練りゴマ、粒マスタード、わさび、マヨネーズ、肉汁、オリーブオイル、各種スパイス……冷蔵庫にあるもので可能性は無限大だ。

無限大なのだが、今日はそのうちの三つに限定してレシピを紹介しよう。分量はその時冷蔵庫にあるものとの兼ね合いもあるので、味を見ながら各自で調整して欲しい。

▼バルサミコドレッシング
- マスタード
- はちみつ
- 白ワインビネガー
- バルサミコ酢
- ベルモット
- 塩
- オリーブオイル
- ブラックペッパー
その他の物、ビネガー、オイルの順に混ぜ合わせる。これは、バルサミコの酸味とはちみつの甘みが食欲をそそるドレッシングで、葉野菜など、薄く切ったものと相性が良い。フレッシュでみずみずしい野菜に一振りして、メインの前の腹ごしらえとしよう。

▼ごまドレッシング
- オリーブオイル
- ねりごま(白)
- はちみつ
- 白ワインビネガー
- バルサミコ酢
- 醤油
- ブラックペッパー
たとえ洋食でも、醤油を一振りするだけでたちまち日本人の舌と胃に響く味になるのはなぜだろうか。一説によると、日本人のフランス料理人たちはソースに醤油を入れる欲望といつも戦っているらしい。つい、入れてしまう胃の欲望と戦わねばならぬというのだ。入れてしまえば良いものを、と思うものだが、事はそう簡単ではないらしい。

▼粒ドレッシング
- 卵黄
- 粒マスタード
- オリーブオイル
- 塩
- 白ワインビネガー
これは白身魚の前菜などとも良く合うドレッシングだ。濃く、固めに作れば根菜などともよく絡んで、かぶのサラダなどにも良い。ニンニクを擦って入れると、野菜をもりもり食べられるパワーのあるドレッシングになり、肉との相性も良くなる。

以上、ひとまず三種類だ。もちろん、白ワインビネガー等は時として穀物酢などと代替されて食卓には供されることとなる。また、オリーブオイルが重いようならサラダ油と半々にしたり、いろいろの油で試してみるのも手である。

一時期、おたまで作るドレッシングを作るのに執心していたことがあった。
タコのカルパッチョに、熱々のオリーブオイルをかけて仕上げる料理を見てから、もしかして野菜でもこれはうまいのではないかと思った次第である。

作り方は簡単、おたまにオリーブオイル、塩、好きなスパイスやニンニクを入れ、コンロの上でオリーブオイルが熱々になるまで熱する。
後はサラダに直接かけるだけだ。

これは野菜の甘みが油に溶け出し、大変美味しい。野菜を食べた後の油をパンにつけて食べるのが何よりの楽しみとなる。皿に残った最後の一滴までこそげ取る、下品な食べ方だ。

しかし、誰が何を言おうとうまい物はうまいのである。

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