📘️ Book Club：法整備による義務化が進んでいるアクセシビリティ。PART4-ビジネスの視点から見てみる。

2022年3月3日 08:32

基本的に、アクセシビリティとは、プロダクトやサービスをできるだけ多くの人が利用できるようにすることを意味します。それに伴う魅力と効率は、より高い収益と相関しています。

今回はすべての企業がアクセシビリティに注意を払うことで高いROIを達成できる理由と、それらの収益を最適化する方法を調べてみました。

ROIとは「投資収益率」「投資利益率」のことで、英語のReturn On Investmentの略称です。

これはマーケティング用語であり、投資額に対して、どれだけの利益が取れたのかという指標をパーセンテージで表したものです。数値が高ければ高いほどより効果的な投資ができている証になるのです。

数年前まで多くの企業がダイバーシティとインクルージョンを頭痛の種と考えているようでしたが、さまざまな世界の動きによって、性別、年齢、民族の多様性がビジネスに直接的な影響を与えるという事実に私たちは目覚めました。同じ認識がアクセシビリティによってももたらされている様です。

アクセシビリティが企業に利益をもたらす理由

1つに私たちは、作り出すプロダクトやサービスをアクセシブルにすることで、潜在的な市場にさらに多くの人々が追加されます。
2つ目は、事前に多くの問題を考慮してワークフローを作り出すと、実際に市場に出された時にユーザーエクスペリエンスもよく、リターン顧客が増えます。
3つ目は、アクセシビリティを無視すると、多額の訴訟と一般公開されてしまう可能性も増えます。コンプライアンス違反のコストは、コンプライアンスのコストの約3倍かかります。

アクセシビリティ対応の義務化に関する法改正

2019年、ビヨンセの公式サイトがアクセシビリティへの対応が、不十分として全盲のファンによって訴えられたことはご存知の方も多いかと思います。

日本でも民間事業者等のWebサイトのアクセシビリティ対応の義務化に関する法改正が、去年2021年5月に可決成立、6月に公布されました。これにより行政機関等に加えて事業者、つまり一般企業に対しても、改正法の施行後には合理的配慮の提供が義務付けられました。

米国では、アクセスできないとされるウェブサイトに対する訴訟が増えており、昨年は2,500件を超える訴訟が提起されました。

合理的配慮とは？

合理的配慮とは、障害者が社会の中で出会う、困りごとや障壁を取り除くための調整や変更のことを指します。

例えば、あるWebサイトにおいて、障害者が他の人と同じように利用できなかったとします。その障害者から改善の申し出があった場合、過重な負担とならない範囲で、必要かつ合理的な調整・対応を提供することが、サイトを運営する組織が一般企業であっても、法的に義務化されることになります。

まずはチームに不足しているものを認識させることから始めます。

あなたのビジネスにアクセサビリティのトレーニング戦略を持つことは利益をほぼ50％上げることができます。

チームにアクセシビリティについて教育するときは、生産性を向上させるための新しいスキルをチームに与えるだけでなく、長期的にワークフローを最適化し、より健康的なチーム文化を育むことになります。

プロダクトやサービスをアクセシブルにすることで、潜在的な市場にさらに多くの人々が加わり、より多くの問題を事前に考慮することでワークフローが最適化されます。

techcrunch.com

今日、多くのチームが理解していないのは、アクセシビリティは単にプロダクトやサービスをより多くのユーザーに開放するということです。従業員にこれを認識させない場合、「アクセシビリティ」という言葉は、理解できない規制に囲まれていることを意味すると考えているため、彼らは引き続き敬遠します。しかし、そのプロセスをチーム全体で簡単に理解し、アクセシビリティに関する共有言語を作成すると、最終的な目標であるよりスマートなデザインと開発を理解しやすくなります。

IBMのEqual Access Toolkitから、Microsoftのインクルーシブデザイン、A11Yプロジェクトまで、企業がアクセシビリティに頭を悩ませる簡単な方法があります。しかし、無料のアクセシビリティリソースへのアクセスの欠如が懸念されており、これは私たちのより広いコミュニティが変えようとしている重要な問題です。

意識とトレーニングを通じて、ユーザーのためだけでなく、自分の仕事の経験を向上させるために、アクセシビリティの重要性についてチームを説得し始めます。

アクセシビリティを念頭に置いて作業することで、従業員の作業プロセスがより効率的になり、将来発生するエラーのコストが削減されます。さらに、管理者は、作業を監督するために費やすリソースを減らして、基準に適合していないデザインに準拠していること、またはデザインを作り直していることを確認します。

さまざまな人々がプロダクトやサービスを操作するさまざまな方法を知っていれば、従業員は顧客のニーズをはるかに理解できるようになります。統計的に重要でないグループについて話しているのではありません。障害を持つ人々は、最大のマイノリティです。米国では成人の4人に1人が障害に苦しんでおり、世界全体で11億人にもの方々がなんらかの障害があると言われていますが、医師の診察を受けられない、または診断を受けていない多くの個人を考慮すると、それよりもはるかに多くなります。

おそらく生涯を経験したことがある方々も多いかと思います。たとえば腕を骨折して数ヶ月ギプスを知ったまま生活したり、深刻な手術から回復したりするなどの一時的な障害は、特定のプロダクトやサービスを念頭に置いていない場合、そのプロダクトやサービスを使用する能力に影響を及ぼします。

最後に、この意識的なトレーニングを提供することで、スタッフは、労働条件と文化を改善する方法について話し合うことができることを知ることができます。

より良いテスト、より良い効率

これを修正することは、ターゲット市場をどのように想定するかから始まります。ターゲット・ユーザーベースに障害者がいますか？言い換えれば、あなたは障害をもつ方々に手を差し伸べて含めようとしていますか？

たとえば、あなたが家を建てているとします。それが進むにつれて、修正を加える順応性が低くなります。すでに2階と3階を建てている場合、新しい家の最初の列のレンガを修理するのは困難でしょう。

そのため、テストを再考する必要があります。プロダクトやサービスを継続的に試してみると、進歩するにつれて何を微調整する必要があるかがわかります。問題は、障害を持つ人々がテストプロセスから除外されていることです。また、データセットに表示されている場合でも、健常者から見たパターンに従わないため、データは異常として扱われることがよくあります。

次に、定性的入力と定量的入力をテストします。多様なユーザーにプロダクトやサービスの操作についてどのように感じているかを尋ねてみましょう。そして次のような質問や洞察をしてみましょう。

特定の機能がどのように機能するかを学ぶのに時間がかかりましたか？
何か障害はありましたか？

保持に関するデータや訪問ごとに費やされた時間と同様に、それらがソフトウェアとどのように相互作用するかを理解する必要があります。

これは、収益に直接影響します。コンプライアンスの問題は、多額の罰金を支払い、プロダクトやサービスのコア要素を再構築するときに、さらに苦痛をもたらします。アクセスできないとされるウェブサイトに対する訴訟が増えており、昨年は2,500件を超える訴訟が提起されました。

より正確なテストを行うと、プロダクトやサービスライフサイクルのどこでいつツールを挿入して変更する必要があるかを理解できるため、プロセスがより効率的になります。基本的に、ワークフローを最適化します。

必要に応じて調整を行うために制作を一時停止するのではなく、反復しながら直線的に進みます。プロダクトやサービスを発売して消費者の手に早く届けることができます。

理想的には、プロダクトやサービスの成功に個人的に投資している多様なコミュニティ内でテストを行うことで、より迅速で詳細なフィードバックループが得られます。

内部アクセシビリティチームを作成する

アクセシビリティを理解するのは全員の仕事です。

ただし、プロダクトやサービスのデザイン、開発、およびマーケティングのイニシアチブが確実に満たされるようにすることに特に焦点を当てている人々は常に存在します。

このグループの人々は、アクセシビリティについて他の人をスキルアップし、インクルーシブなデザインの頼りになる責任を負う必要があります。数百人の会社が約10人にタスクを割り当てることができます。しかし、初期のスタートアップでは、1人か2人で仕事をするだけでは十分ではありません。アクセシビリティをデザインと開発のコア部分にすることは、関係するすべての人にとってより広い文化に組み込まれる必要があります。

プロセスを正確に実行するために数人を割り当てることによる長期的な利益は、常に初期費用よりも高くなります。これらの人々は、各チームがすべてのユーザーに対して最適に機能し、互いに同期していることを確認します。標準を下げるために貴重な時間を無駄にすることはありません。

予算の配分方法について

どこにお金を使うか決めるとき、短期的に考えることはできません。

今日のビジネスは、最も具体的で即時の利益に向けて予算を振り向けるようにデザインされています。それでも、急成長と猛烈な成長に現金を注ぎ込み、迅速に売り込み、現金化することは、それほど単純ではありません。

企業は欠陥のあるプロダクトやサービスを購入しません。プロダクトやサービスについて、そして誰がそれを使用しているのかについてほとんど考えられていないとき、ブランドは持ちこたえません。

強力なビジネスリーダーは、投資には時間の範囲があることに気付くでしょう。インクルーシブデザインは、コスト削減モデルであると同時に利益を生み出すものでもあります。またコストをかけるだけでなく、会社を倒産させる可能性のある落とし穴からも回避することもできます。

そのため、プロダクトやサービスロードマップと一緒に、最初から最後まで、専用ツールの購入、チームの教育、テスト戦略のデザインなどを考慮して、アクセシビリティ予算を割り当てます。

各目標を達成するための期限を設定し、プロセスごとに個別のリソースとタイムラインを割り当てます。チームが報酬を確認して感じることができるように、新しいプロジェクトでの迅速な勝利から始めて、繰り返すことをお勧めします。チームを教育したり、テスト戦略をデザインしたり、専用のツールを購入したりするときに、最初はより多くの費用を費やしている可能性があります。

まとめ

アクセシビリティからのROIについて話すとき、誰もがスキップしているように見える最後の欠けている部分が1つあります。アクセシビリティ分野の他の人々は、SEOのメリット、リソース使用率の低下、ユーザビリティの向上などについて話したいと思っていますが、本当の欠けている部分は、実際には障害をもつ方々と接することで見つけることができる新しいビジネスです。

Webサイトをよりアクセシブルにするだけでは十分ではありません。実際、単にWebサイトにアクセスしやすくするだけで、法的リスクを軽減することでお金を節約できます。最高のROIは、障害を持つ人々に直接マーケティングすることから得られます。

米国だけでも約5400万人の障害者がいます。また障害を持つ人々は、米国の雇用者の5％を占めています。これは約660万人です。障害のある雇用者の収入の中央値は、障害のない人とほぼ同じです。

アクセシビリティの真のROIは、Webサイトをよりアクセスしやすくするだけでなく、障害を持つ人々にもアピールするということです。

一般的なアクセシビリティの問題の範囲と性質は、アクセシビリティを市場の差別化要因として使用することで、多くの新しいビジネスを獲得したり、より多くのビジネスを維持したりできることを意味します。

アクセシビリティについて積極的に取り組み、アクセシビリティに関する取り組みについて話し合うマーケティングキャンペーンを作成することで、アクセシビリティリスクをアクセシビリティROIに変えることができます。

私も色々勉強中なので、皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。
お読み頂きまして、ありがとうございました。

メルボルンを拠点にプロダクトデザイナーとして働いています。主にデジタル・プロダクトの制作に携わっています。

［参考資料］

https://karlgroves.com/2019/08/27/the-truth-about-the-roi-of-web-accessibility

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