📘️ Book Club：よりよいデザインへ向かうために、デザイン批評とは？デザイナーとしてコラボレーション・スキルを身につけよう。

チームで作業する機会がある方々は、コラボレーションの機会がたくさんあると思います。ただメッセージが混在したり、意見が異なったり、途中で複数回の編集が行われたりする機会があることも意味します。

成功するデザイナーは、他のデザイナー、クライアント、およびマネージャーからフィードバックを上手に受け取る方法を知っているようです。優れたデザイナーは、前向きで、敬意を持って対応し、適切な質問をすることもできます。チームは、コラボレーションを促進し、全員が一緒に成長して改善できる安全なスペースを提供する方法を理解する必要があります。

このような場で、デザイン批評が役立ちます。デザイン批評は、チームがデザインを評価するための構造化された時間を提供すると同時に、デザイナーに貴重なフィードバックを提供します。

ポジティブで建設的なフィードバックは成功するデザイン批評の核であり、これはデザイナーに新鮮な視点を与え、多くの場合は、より優れた、より革新的なデザイン・ソリューションにつながります。

今回は、デザイン批評について調べてみたいと思います。

デザイン批評とは？

多くの組織のデザイン・チームは、プロジェクトに対するフィードバックを集めるための、デザイン批評と呼ばれる特別なミーティングを実施しています。

私の所属するデザイン・チームでも週1でデザイン批評のセッションが行われます。これは、新しいアイデアなどを提案することを目的とするブレインストーミングとは違い、今ある解決策についてのフィードバックを集めるためのミーティングです。フィードバックを与える側のデザイナーはフィードバックの過程をシステム化することができ、時間を生産的に使えます。

毎週木曜日の午後3時に行われるのですが、形式はかなり単純で、木曜日の朝、何かを共有したいと思っている人は誰でも、プロダクトデザイン専用のSlackチャンネルに簡単な説明を投稿します。これを使用してアジェンダを設定します。

デザイン制作を進める際に、一人のデザイナーがで最後まで作ってレビューするのではなく、その期間に、こまめに批評しながらイテレーションしていきます。

💡イテレーションとは、一連の工程を短期間で繰り返す、開発サイクルのことです。 短いスパンで開発手法を見直す「アジャイル開発」の一概念として知られています。 デザイン、開発、テスト、改善のサイクルを短期間で繰り返すため、問題の発見や改善が容易になります。

1. チームやクライアント、ステークホルダーにデザインを見せて、フィードバックをもらう
2. それらのフィードバックをもとにデザイナーが改善していく

というのを繰り返します。

デザイン批評が重要な理由

なぜ、デザイン批評が重要なのでしょうか？デザイン批評をどのようにデザイン・プロセスの中に組み込むべきでしょうか？

チームメイトにデザインアイデアを提示し、チームの意見を聞くことは、デザイン・プロセスの不可欠な部分です。一部のデザイナーは自分の小さなバブルにとどまりたいと思っていますが、チームメイトにデザインや、仕事を見せ、彼らのフィードバックを聞くことで、アプリやウェブデザインが正しい軌道に乗っていることを確認することができます。またこれらのデザイン批評ラウンドは、チーム全体の士気を高めるための優れた方法だと思われます。

適切なプロセスが整っていれば、誰もが自由に意見を共有し、デザインプロセスに投資してもらいながらコンセンサスを構築できます。チームメンバーがデザインに投資していると感じると、プロジェクトに情熱を注ぐだけでなく、より効率的に作業する傾向があります。

またデザイン批評は、デザイナーがコミュニケーションスキルを向上させるのに役立つ優れた方法です。これにより、デザイナーはデザイン上の決定の背後にある理由を明確にすることができます。

実際、150人以上のUXUIデザイナーを対象とした最近のAdobeXDの調査では、回答者の45％が、コミュニケーションとコラボレーションのスキルの開発に最も関心があると述べています。

デザインプロセスの早い段階で仕事を分かち合うと、デザイン批評を最大限に活用できます。多くのプロジェクトには問題が発生する可能性があります。それらをすぐに根絶するのは良いことです。デザイン批評はそれをするための素晴らしいフォーラムとなります。

私は数年前まではフィードバックを受け取るのが苦手でしたが、デザイン批判で早期にオープンに共有することによって、前進するか、大幅に改善されていくことを学びました。そして才能のある同僚とデザインを共有することで、私は多くのことを学びました。

デザイン批評における役割

デザイ批評においては、プレゼンター、オーディエンス、ファシリテーターなど、各人に明確な役割が存在します。

ミーティングにおいて、それぞれが自分の役割を守ることは非常に重要です。プレゼンターは、解決すべき問題や調査されている解決策について説明します。

👉 ファシリテーター
ファシリテーターはグループ全員がアジェンダに沿うように促します。

👉 プレゼンテーター
プレゼンテーターは準備をしっかりしましょう。プレゼンテーターはオーディエンスにプロジェクトのコンテキストを与えることが必要です。

👉 オーディエンス
オーディエンスの役割は問題と解決策の背景を理解することが大切です。デザイン批評においては、明確な質問がもっとも重要なものです。核となるような問題について質問をすれば、プレゼンターのスピーチの優先順位を決めるために役立ちますし、細部が明確になれば新しいデザインの決定がしやすくなり、アイデアも出やすくなります。

デザイン批評におけるルール

デザイン批評のセッションがスムーズに進むように、オーディエンスには心に置くべき4つの主要なルールがあります。 

→ プレゼンターの誰もが一生懸命仕事に取り組んだことを念頭におきましょう。
→ デザイン、またコンテンツについてのみ話し合い、デザイナー本人については話し合いません
→ オーディエンスは建設的な批判をするように心がけます。
→ 誰も決定を擁護する必要はありません。

このセッションはチームの皆が安全な場所だと感じることが一番大切です。誰もが明確で率直であることを望んでいますが、親切心を持ち、セッションに参加します。

プレゼンテーションを行う場合の準備方法

→ コンテキストを与える。
→ プロジェクトの段階を定義する
→ 問題を誰のために解決していますか？
→ どのような問題を解決しようとしていますか？
→ ここにたどり着くまでにどのようなステップを踏みましたか？

これらは正式なプレゼンテーションを行う必要はありません。 Notionドキュメント、Googleスライド、Figmaリンクなどを使用できます。そして次に

→ 質問を準備します。
→ どのような種類のフィードバックをお探しですか？
→ グループに対してどのような質問がありますか？
→ どのような課題について支援が必要ですか？

推奨される形式

5分：コンテキストの提供
10分：フィードバックを受け取る

デザイン批評でフィードバックを集める

フィードバックが多ければ多いほど、作業は改善されます。フィードバックが不明確な場合はフォローアップの質問をし、必要に応じてより多くのコンテキストを提供します。

デザイン批評でフィードバックを集めたら、すべてのメモ、アイデア、提案を見直しましょう。考えるための時間を作りましょう。決して、急いでプロジェクトに変更を加えないでください。

経験の少ないデザイナーは往々にして、自分より経験あるデザイナーのコメントを行動の指針として受け取り、批判的な目で見直すことなしにそれを受け入れ、採用しがちです。

デザインとは、ビジネスとユーザーの問題を解決するための美しさと機能性のバランスを永遠に探し続けることです。たった１つの正解があるわけではなく、そして誰もが間違いを犯します。細部にいつまでも拘らず、特定の解決策に固執しないようにしましょう。

フィードバックを与える方法

実際に批評されるのを楽しんでいる人を見つけるのはかなり珍しいことです。誰も彼らの努力がバラバラになるのを見たくありません。しかし、批評を行う方法はいくつかあるので、それは前向きで、敬意を持って、効果的であり続けます。個人的に批判を受け取らず、フィードバックを利用して成長することも、デザイナーとしての私たちの責任です。

では、どのようにしてデザインを効果的に批評しますか？これを達成するための最良の方法の1つは、フィードバックに前向きな要素と改善すべき領域が含まれていることを確認することです。片方がもう片方なしにならないようにしてください。

同様に正のフィードバックを提供することを忘れないでください！ すべてが批判である必要はありません。

具体的かつ客観的であることが大切です。

👎 “I just don’t like this color”
「私はこの色が好きではありません」

👍 “I think red clashes with the green on this page and it reminds me of Christmas”
「このページでは、赤が緑と衝突していると思います。クリスマスを思い出します」

その他にも質問をして議論を盛り上げることが大切です。

👎 “I don’t agree with the direction you chose.”
「私はあなたが選んだ方向に同意しません。」

👍“Why did you choose this direction?”
「なぜこの方向を選んだのですか？」

まとめ

ネット上のレビューシステムやSNSの誕生で、誰でも製品やデザインに対して「批評」を行いやすくなりました。フィードバックを受け取り、プロダクト、 ウェブサイト、およびその他のデザイン・プロジェクトの成長を支援するためのデザイン批評が必要です。 

ウェブサイトやアプリのデザインに焦点を当てているかどうかにかかわらず、構造化されたデザイン批評をプロセスに追加すると、それらがどれほど効果的であるかがわかります。

批評でデザインを進めることで、複数人の視点が入ることで、より多角的に改善が必要な点を洗い出しましょう。建設的なフィードバックをどうやって求めるか、受け取るか、そして与えるかを学ぶことで、作品の問題点が見えるようになり、プロフェッショナルとして成長できるでしょう。

［参考資料］

Design crits — how we make better products by sharing openly

Using the 30–60–90 Framework for Design Critique

5 Powerful Dos & Don'ts of Design Critique | Adobe XD Ideas

みんなではじめるデザイン批評―目的達成のためのコラボレーション&コミュニケーション改善ガイド 単行本（ソフトカバー） 

よりよいデザインへ向かうために、コラボレーション・スキルとしての「批評」のしかたを身につけよう。

本書では、デザイン・コミュニティで著名な2人の著者が、その豊富な経験から生まれた教訓を活かし、よいフィードバックと悪いフィードバックについてや、「批評」を制作プロセスに組み込むためのヒント、実行可能なアドバイスや会話のテクニック、チーム内や対クライアントとのコミュニケーションやコラボレーションの構築のしかたなど、本来目指すべきかたちで、よりよいデザインを生み出すための方法を解説しています。

デザイナーだけでなく、作っているもの、生み出されるものをもっとよくしたいと思うすべての人に読んでもらいたい一冊です。

みんなではじめるデザイン批評―目的達成のためのコラボレーション&コミュニケーション改善ガイド

私も、色々勉強中なので、皆さまの、ご意見・ご感想をお聞かせください。お読み頂きまして、ありがとうございました。

メルボルンを拠点にプロダクトデザイナーとして働いています。 主にデジタル・プロダクトの制作に携わっています。