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「都」構想で大阪はどう変わる? 元副知事・小西禎一さんに聞く

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 「大阪都」構想=大阪市廃止の目的について、松井一郎大阪市長は、「(大阪の)成長の流れを確かなものにするため」(市広報誌、上画像)としている。大阪市を廃止し、府に一元化すれば、これまでのような調整や対立がなくなり、大阪全体の成長戦略を推進できるというのだ。

 読売新聞の世論調査(9月8日)によると、「都」構想に賛成の人のうち56%が「大阪全体の成長につながる」と回答しており、賛成理由の中で「府と市の二重行政がなくなる」に次いで多くなっている。

 また、大阪市の権限と財源が府に移行すれば、「大阪府民全体にとって大きなメリット」という意見もある。

 住民投票で「賛成」多数になると、大阪市以外の自治体にはどんなことが起こるのか。そして大阪府はどう変わるのか。

 橋下徹・松井一郎両知事の下で大阪府の総務部長や副知事を勤め、地方自治に精通する小西禎一(こにし・ただかず)さんに話を聞いた。


――「二重行政の失敗」として、府と市がWTCとりんくうゲートタワービルを建てたことがよくあげられています。

 これは二つ建てたから失敗したわけではないんです。一つでも失敗で、「二重行政」でもなんでもないんです。日本全体がバブルに踊らされていた時代における、それぞれの施策の失敗であり、読み違いです。
 「都」構想推進の政治家は、「だから制度を変えて、一人の指揮官にしよう」と言っていますが、ではバブル期に「一人の指揮官」だったら一つしかビルをつくらなかったでしょうか。大阪府だって関西空港ができる際に先端企業を集約しようと、三つも「コスモポリス構想」の計画(岸和田、和泉、泉佐野)をしたんです。「一元化したら一つの計画しかしない」ということではないんです。


――大阪市の財源が府に移行すると大阪市外の人には恩恵があるのでしょうか。


 府に権限が増えるということは仕事が増えるということです。財源が増えるけど、増えた仕事に当てられるので、それを他市に使う余裕はありません。
 逆に大阪府には今までしなくてよかった特別区を補完する仕事が出てきます。
 特別区は一般市よりも権限が少ないわけですからもっと補完しないといけない。例えば、財政の問題が出てきたら財政的に支援しないといけないことが十分ありえます。実際に特別区設置後、十年間で今まで他のところに使っていた府のお金から財政調整交付金を二〇〇億円増額して特別区に支出するとしています。
 大阪市という一つの強い自治体をつぶして不安定な四つの特別区にするわけで、トータルでかかるコストが増えます。ですから、大阪全体としてはお金が足りない状態が続きます。この問題は特別区か大阪府にしわ寄せがくるか、あるいは両方にしわ寄せがくる可能性もありますね。

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――大阪市廃止が「大阪全体の成長につながる」という意見については、どうお考えですか。


 「賛成」の政治家は、「今まで指揮官が二人いて、意見の調整に時間がかかるから指揮官を一人にすれば成長がスピードアップするんだ」ということを言っています。でもよく考えると、大阪府内それぞれの地域の発展なしに成長があるわけではありません。

 「指揮官」を一本化してトップダウンで大阪の成長がスピードアップするというのは、特別区や市町村などを無視してもいいという発想です。特別区になっても二層制という自治制度をとる以上、府は四人の特別区長との調整をしないといけません。

 大阪府域の中心に高い行財政能力を持った大阪市があり、しっかり運営しているから、府は全体的な仕事に力をそそぐことができました。大阪市域を分割して弱い自治体にしてしまうと、府はこの補完を全部やっていかないといけなくなりますから、むしろ大阪全体の成長にとってマイナスになると思います。


――維新の会は、「調整ではうまくいかなかった」と言っています。

 大阪市廃止のように一方をなくしたらいいという発想ですね。二層制なので調整というのは避けがたいし、調整するような場面が出てくるからこそ、いい答えが出てくることがあるんです。府は広域行政の立場でものを言うし、市は基礎自治体の立場でものを言う。折り合いがつくところを見つけていくのが市民にとってのベストな解になります。

 調整を避けるとうまくいくときはよいですが、間違った考え方が持ち込まれたらどうするのか。二層制はお互いに調整し、歯止めをきかす仕組みを内在しています。調整をしなくてもよくなるということは、府が特別区を無視するということです。


――大阪市廃止は隣接自治体にどんな関係があるでしょうか。


 東京都との違いを人口で見ると東京都の特別区の人口は都全体の69%を占めているんです。ところが、大阪の場合は大阪市が特別区になったとして人口は府全体の31%ぐらいです。東京都と同じように「行政の一体性及び統一性を確保する」という観点からは、今の大阪市域では狭いんですね。

 例えば、水道だって31%だけ大阪府がやっても単なる大阪市の肩代わりというだけで、あまり意味はないわけです。特別区設置が実現されたら、自己目的的に膨脹していかないといけなくなる仕組みだと思います。

 もし、大阪市が廃止され、特別区ができると、それ以降、隣接する市を分割せずに丸ごと一つの特別区にする場合は隣接する市議会の過半数の賛成だけあれば住民投票はいらないんです。
 大阪市は住民投票で市民のみなさんを巻き込んだ議論をできますが、周辺市の場合は住民投票なしですすんでしまう可能性がありますね。


――もし大阪市が廃止されたら大阪府は、どんな自治体になると懸念されますか。


 『都』構想推進の政治家の思考を裏返して言うと、大阪市域の広域行政を大阪府がやらないと大阪は成長しないということ。つまり、大阪府は都心部の事業にのめり込んでいくことになります。
 これまでの大阪府は、大阪市域のことは大阪市にしっかりやってもらい、府は府域全体のことをしてきましたが、「都」構想は都心中心主義なので、大阪全体を考えてきた府が変質してしまうと思います。

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――小西さんから見て、今の大阪府の課題は何だとお考えですか。


 この十年間、優秀な職員を関わらせて「都」構想議論に時間を費やしたことは、大阪にとっての「失われた十年」だと思います。
 今、コロナ以降の感染症対策を考えると大事なことは「密」にならないようにすること。大阪府域全体で住み、働くということを考えていかないといけない。今までと違う政策・手法を考えないといけません。そのためには市町村と一緒になってやらないといけないことが、これから増えてくると思いますから、「都」構想の都心中心主義は逆行してしまいます。
 もう一つはインバウンド頼みではない成長論を考えていかないといけません。中小企業や商店街など今まで横に置いていた課題に向き合っていかないといけないと思います。


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