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常識を超える──ミュージカル「キャッツ」の魅力【観劇編】

こんにちは、お久しぶりです、乃湖です。

今回は、ミュージカル「キャッツ」の魅力について私がひたすら語る記事の2本目です。1本目出したのが去年の11月だったのでなんと8ヶ月ごし。。1本目覚えてくれてる方が1人でも来てくれれば万々歳です。

1回目は、入門編と称し、「キャッツ」がどんなミュージカルなのかについてと、「キャッツ」の魅力について、構成と、登場キャラクターの観点からお話しています。こちらもぜひ。

1本目を全部読むのがめんどくさい人へ、キャッツとは簡単に、猫がひたすら歌って踊るミュージカルです。ロンドン発ですが、その後世界中で上演されました。日本では劇団四季が上演しています。
このミュージカルは、設定、構成、演出、舞台等、あらゆる点において人々が「演劇」「ミュージカル」と聞いて思い浮かべるイメージを大きく超える独創的で、唯一無二の作品です。この、他には無いキャッツのおもしろさ、

今回は、観劇編。「キャッツシアター」と呼ばれる、キャッツが上演される劇場そのものについて、そしてキャッツの演出についてお話します。


キャッツシアター

キャッツの独創性のひとつに、上演する劇場そのものが挙げられます。
キャッツを上演する劇場は、「キャッツシアター」と呼ばれていて、劇場に入るだけでキャッツの世界に入り込めるよう、様々な工夫がされています。

劇場に入るだけで、ここまで世界観に入り込めるミュージカルは、なかなかないのではないでしょう。

キャッツの客席に足を踏み入れた途端、目に入るのは、人間に捨てられたガラクタたちで埋め尽くされた景色です。
キャッツの舞台は、満月の夜、都会のゴミ捨て場。劇場でありながら、どこか薄汚れた雰囲気です。
ゴミの山は、ステージのみならず、客席の横の壁全面を埋めつくし、劇場全体がキャッツの舞台になっています。客席と舞台が一体化してキャッツの世界観を表現しているんです。

劇場の壁
開演前のステージ

こちらは、私が観劇したときに撮った、劇場内の写真。あと、この記事の表紙の写真も2階席から舞台全体を撮ったものです。(開演前のみ、自席から劇場内の写真を撮ることができます)
この色合いがリアルで大変良い。

写真だとサイズ感が分かりにくいですが、実はキャッツシアターのゴミはすべて、実物の3~5倍の大きさで作られています。つまり、猫から見た大きさです。
劇場に足を踏み入れることで、役者さんのみならず私たち観客も、猫の視点でものを見ることができるのです。私は、これがキャッツシアター最大の特徴だと思っています。

ゴミのいくつかは、ただの舞台セットではなく、上演中に小道具として使われます。
特に印象的なのが、『スキンブルシャンクス-鉄道猫』のナンバー。ゴミをみんなで持ち寄って汽車を組み上げる場面は圧巻です。この汽車、本当にクオリティが高いんです。子どもも大人も、この場面は大好きだと思います。一応ネタバレにならないとも言いきれないので写真は貼らないでおくけど、気になる方はぜひ公式サイトのギャラリーから見てみてください!

舞台セットも全てゴミの山でできていて、例えば、舞台上手側に積まれた本は猫が登る階段になっていますし、ネタバレなので詳しくは言えないのですが、舞台奥の巨大なタイヤが物語上とても重要な役割を果たします。

ゴミ捨て場にあるものだけで、大抵のことは出来てしまうジェリクルキャッツの強かさも、私は大好きです。

ここでキャッツのゴミ情報をもうひとつ。
前回の記事で説明したのですが、キャッツは、どこか一か所の都市で一定期間上演し、終わったら次の都市に移動するというかたちで、日本全国をゆっくり飛び回って(?)います。
そこで毎回話題になるのが「ご当地ゴミ」です。
劇場のゴミのなかには、40年前の日本初演時から大切に使われているものもあるそうですが、一方で、上演する土地限定のゴミも紛れ込んでいます。
例えば、少し前まで上演していた名古屋の劇場には、でっかいウイロバーの空き箱、東山動物園のチケット、名古屋城のしゃちほこまであったそうです。
開演前や休憩時間にゴミを観察するのもキャッツの楽しみの一つです。

上の動画は、ご当地ゴミの製造過程。もちろんご当地ゴミもビッグサイズなので、実物をそのまま使う訳には行かず、技術のスタッフさんがひとつひとつ作っているみたいです。
さらに、ゴミ感を出すため、わざと汚したり壊したりして、キャッツシアターに馴染むようにしています。
この作業めちゃくちゃ楽しそう。私もやりたい。

舞台の常識を超える

まず、キャッツの舞台は回転します。ステージそのものが回るようになっているのです。
その仕掛けが使われるのは一番最初のオーバーチュア。オーバーチュアとは、物語が始まる前に流れる歌のない曲のことです。
ここで舞台が半回転することでらゴミで隠れていた舞台の全体像が明らかになり、キャッツが始まる!という期待感を高めてくれます。

キャッツの舞台には、お客さんのための工夫も。
舞台の奥から手前に向かって、床が2°ほど傾斜しているのです。これは、舞台の奥を少し高くすることによって、舞台全体を見やすくする工夫だそう。以前テレビで特集していたのを見たのですが、2°の傾斜でも、普通の人がその上で動いたらかなりの違和感を感じるそうです。その上であんなに激しく踊って(しかも猫として)たくさん歌って走り回っている俳優さんたちの身体能力は一体全体どうなっているのでしょうか、、恐ろしい、、、

また、キャッツシアターには、普通の劇場にあるような「舞台袖」の概念がありません。いや、本当はあるはずなのですが、観客にそれを感じさせません。劇場のそこここに猫が出入りできる穴がさ舞台に溶け込むように作られていて、そこが舞台裏との出入口になっています。
観客に裏を感じさせないことで、より私たちはキャッツの世界に没頭することができるのです。
これが、キャッツが『観劇』いう概念を超えた体験をさせてくれる理由の一つだと思います。


どこまでも『猫』な演出

ジェリクルキャッツは神出鬼没

キャッツに登場する猫たちは、みなジェリクルキャッツと呼ばれます。さっき、舞台袖の話で書いた通り、猫たちはいろんなところから舞台に出ることができるので、彼らは劇中、いつどこから出てくるか分かりません。

その特徴がよく表れているのが、1,2匹の猫しかいないところから、徐々に集まってきて、気づいたら20匹を超える猫が集結しているという場面。舞踏会が始まる、、!という期待感が膨らんでいく、わくわくするシーンです。
登場する場所や、登場の仕方に一匹いっぴきの個性が出ていておもしろいし、各々好きな時に好きなように、ぬるっと登場するところが最高に猫って感じがして大好きです。なんか猫の数が増えてきたなーと思っていたら、本当にいつの間にか全員集結してるんです。
その瞬間始まる、歌とダンスがピタッとそろうパートはいつ聞いても感動します。

話がそれてしまったけれど、そんなわけで、キャッツの劇中、すべての猫の居場所を追うことは不可能です。だからこそ、本当に見ていて飽きないし、目がいくつあっても足りないです。
前回の記事でも言いましたね、これ。


観客との距離の近さ


猫たちと私たち、つまり役者と観客の距離の近さもキャッツの魅力です。
たとえば、劇中には、客席とロビーを繋ぐお客さん用のドアから猫が入ってくる場面もあります。前回私が観劇したときは、ちょうど真横にドアがある席で、そこから出入りする猫たちを見ることができて、さっきまで自分含めた人間たちが通っていた入り口、歩いていた通路が舞台の一部になっていることに感動しました。
また、猫たちは、劇中に何回か客席の通路まで来てくれます。その中でも印象的なのは、一番最初、オーバーチュアでの演出です。これから舞台が始まりますよ~というわくわく感を高めてくれる曲なのですが、ここの演出が初っ端からほんとに素敵なんです。
劇場の照明が落とされ、音楽が始まると、暗闇の中、舞台上、劇場の壁など至る所で猫の目が光り始めます。やがてたくさんの猫の目は通路で動き始め、観客たちを鋭く睨んで去っていきます。
この、通路で動く目の正体は、光る目が映されたゴーグルを持った猫たち、つまり役者さんたちです。
暗がりの中ですが、自分の近くに来てくれるとどの猫か分かることもあるし、目だけでなく、しっかり全身猫の動きをしていることが分かります。
また、終演後、カーテンコール(キャッツシアターにカーテンはありませんが)で猫たちが客席に降りてきて、お客さんとグータッチをしてくれるというファンサービスもあります。お客さん全員の所に来られる訳では無いですが、通路側の席や、前が通路になっている席を選ぶとほぼ確実にタッチしてもらえるはずなのでおすすめです!


猫の動きを完全再現


そう、今書いたオーバーチュアのシーンなんですが、この間観劇した時、近くに来てくれた猫の動きを見て、猫ってほんとに可愛いんだなあって思ったんですよね。メイクと衣装で猫になりきっているとはいえ、役者さんは当然人間の体型で、2足歩行の部分もあります(キャッツの猫たちは時と場合によって2足だったり4足だったりです、踊ったり走ったりしなくちゃなので)。それでも猫の動きをしっかり再現したらちゃんと可愛いんだな、猫も劇団四季もすごいなって。デフォルメされたにゃんにゃん♪みたいな動きじゃないんですよ、ちゃんと猫を観察して体の使い方を真似してるって分かる動きです。腰や関節の使い方とか、くるってふりかえる感じとか、全部こだわってるんだろうなあ、凄すぎる。
あ、猫の動き方について印象に残っているシーンをもうひとつお話させてください。
キャッツは2幕から成っていて、幕間に休憩があるのですが、休憩の終わりの方から2幕に入るまでに、はけていた猫たちが少しずつ舞台に戻ってきます。(なので休憩の後半はなるべく自席にいた方がよいでしょう)
で、舞台の横に花道みたいな猫用通路が伸びているんですね。その通路の横の壁にも猫がの通る用の穴があって、そこから出てくる猫もいます。つまり前の方の端の席に座っていれば、真横を猫が通ってくれるわけです。私が観劇した時は前後でいったら真ん中、左右で言ったら右端の席で、真横を猫が通ることは無かったのですが、その花道を歩いている猫を後ろから見ることができたんですね。休憩中、そこから出てきた猫が(タントミールというメス猫でした)結構ゆっくり歩いてくれたので、じっくり観察していたのですが、よく見ると歩き方も凄くて。
そのとき彼女は四足で歩いていたのですが、皆さんは四つん這いで歩けと言われたらどうしますか?
多分、大抵の人は膝をだいたい直角に保ったままちまちま歩くと思うんです。でも彼女はそうではありませんでした。一足ごとに膝をふくらはぎともも裏がくっつくぐらい大きく曲げ、手をぐーんと伸ばすので1回で進む距離がでかい。そして足を大きく曲げているので背中も大きく上下します。この歩き方にとても猫を感じるんです。それぞれの猫の個性や歩くスピードの違いはあるので、全ての猫が全場面でこの歩き方をしているわけではありませんが。というか、歩き方ひとつに個性を出せるのも凄いことですね。
そしてこれ、自分がやるって想像してみてください。めっちゃ疲れません?私、これやったら4歩ぐらいでへとへとになるだろうなと思って。もっと大変そうなダンスとか歌とかいくらでもあるのに、歩き方ひとつにここまでのこだわりと神経と体力を割く俳優さんたち、やはり尋常ではないな、私はキャッツにはなれないなと改めて思ったものです。
もちろん、歩く以外の動作や振り付けにも猫に見せるためのこだわりが詰まっています。また、猫同士で威嚇したり、頭をすりすりして挨拶していたりする場面もあって、それもとても可愛くてとても猫なので、ぜひ見て欲しいです。



ここまでで5000字弱。過去最長!
読んでくださってありがとうございます。
今回はめちゃめちゃ停滞しながら書き進めたけど、やっぱり好きなことを文字に起こすのは楽しいです。書ききれてよかった、、、
キャッツについてはまだ肝心の音楽について書いていないので、あと1本ぐらい記事にしたいなと思っています。そっちはもうちょっと短期間で書くの良かったらまた読んでくれると嬉しいです。

今回はこれで以上です!
それでは〜🐈‍⬛








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