2024年間ベストアルバム(邦楽)
よろしくお願いします。
はじめに
青い鳥を失ったあの日、謎の期待値Xが僕らの前に現れた。僕らはそれに何を期待し、期待されたのだろうか。もうわからない。
名前が変わっただけ、ただそれだけのことである。しかし崩壊は確実に始まっていく。
元々大したものなんて積み上げて築いてないから、簡単に消えていく。だけど何かこうフワフワした幸せがそこにはあったと記憶している。あの日、人々はもっと自由で優しかったような気がする。人は、過去を美化する生き物であるということを踏まえてはいても。
ついにその終焉の始まりに僕らは立ち会ってるんだなと言う実感が日に日に増すばかりである。もう時代変わりすぎて怖いな色々。流行りの曲もわかんねえよ…俺はいつも良い音楽を見つけて楽しく暮らしていきたいだけなのだが。
!!そう。年間ベスト発表の時間である。こんな話してる場合じゃない。うつむいてる暇とインターネットの奴らと喧嘩してる暇あったら音楽聞きこうぜ。まだ知らない音楽を求め旅を続けよく。必ずもっと自分の好きな音楽はある。諦めるな。
行くぜ!!!!!!
年間ベスト10レビュー
⑩THE BAWDIES/POPCORN
これは色々難しいこと頭で考えて考えて音楽を聴いて難しい顔してた時期になんとなく聞いて衝撃的だった作品。素直にうわあああ!!かっこいいい!!!が止まらない素敵なロックンロールだった。もっと簡単に聞いて良いんだなって気持ちを思い出すことができた。
これ、これめちゃくちゃ楽しくないですか?未だにこんなの作れるの!?ってびっくりした。飛び跳ねたいでしかないぞこんなの…
THE BAWDIES自体は昔から知ってるしライブも行ったことあるし結構好きだったんだけど色々趣味も時代も変わりしばらく聞いてなかった。それなのに全然彼らの音楽はやっぱり変わってなくて、それが今変わってしまった自分に響くことが嬉しかった。
時代は変わり続け最近は短い尺で踊れる曲で皆は動画を撮ってSNSに投稿して盛り上がってるらしいけど、考えてみれば彼らがやってる音楽も基本的に短い尺で誰が聞いても楽しくて盛り上がるだけなので非常に今にフィットするのではないかって気づいた。そこからもうさらに楽しくなって聞くことができた。
彼らは、きっと俺がわからないくらい複雑なことをしてるとは思うんだけど音楽自体はやはり単純明快なものをやってる。ロックンロールイズノットデッドですね。きっとこの先も変わらないと思うけど、こういうバンドが今もこの国にいてくれることがめちゃくちゃ大事な気がする。マジでありがとう!
⑨北村蕗/500mm
こちらはSpotifyの水曜新曲プレイリストの中から出会った作品なんだけど、少しだけ聞いてもう完全にヤバいなと思った。
流れてる音がジャケットそのままの透明度、色合いのまま弾け飛ぶような感覚がとても気持ちいいダンスミュージックだった。そこから景色がどんどん繋がり大自然の精霊と対話しているような神秘的な世界に誘われる。歌モノとインストの間のような感覚で操られているボーカルも非常に魅力的だ。
風呂に入りながら聞いた時なんかちょっとどうにかなりそうだった。何処かで一回ライブを見てみたいな。今年知ったアーティストの中でも気になって仕方ない。
インタビューを読んでいるとハイエイタスカイヨーテなどに触れておりルーツミュージックにも納得できた。5曲18分しかないので軽いBGMとして是非聴いて頂きトリップしてもらいたい。
⑧踊ってばかりの国/On the shore
今年は苦手だと思ってたサイケロック関連を掘り進めることができて楽しかった。きっかけはTempalayというバンドにハマったことが大きかったが、そこからもう一生絶対聞けないと思っていたゆらゆら帝国を聴けるようになったり洋邦問わず数多くのバンドを聴くことができた。
踊ってばかりの国は、その中のひとつである。とは言えジャンルを意識せずとも本作は非常に聴きやすい作りをしているのではないかと思う。
都市生活の中に自然や海の風景を思い浮かべることができる音像が鳴り響く。アルバムのカラーリングが最初から最後まで変わらず、濃淡だけで描いていくバンドサウンドが潔くて僕は好きだ。
風を切って歩いているうちに段々視界が広くなっていくような、海と空の境界がなくなって繋がるような景色を想像できる。
日常はなかなかスムーズにいかないから忘れがちだが、本来は音楽も人の営みも寄せては返す波のような美しさがあって、それは当たり前の事象であり誰にも邪魔されてはいけないものなんだなということを思い出す。
上手くいかなくても、輪廻転生するこの世界と音楽のように日々を繰り返していきたい。それを幸せと呼びたいのである。
⑦Number_i/No.I
昔からボーイズグループは好んで色々聴くんだけど、正直同じようなグループ多くて最近よくわからず…これはちょっと想像しない方向から攻められたんで最高にかっこいいなと思った。いや、ダサいんだけどね。INZMでイナズマってお前…
ミクスチャーロック系の楽曲なら他のグループにもあるけど、ここまでぶっ壊れたやつは中々聞けないなと思う。平野紫耀の低音やがなり、岸くんのリスナーを掌の上で転がすような遊び心、神宮寺勇太から溢れ出す色気…この3人のボーカルバランスも良いし、一周して向井秀徳的にも聞こえる言葉選びと無駄のない低音+強強ビートが耳に突き刺さる。
シンプルだけど結局自分はこう言う曲が1番好きなんだなと問答無用でわからせてくれる。UVERworldなんかにも通じるけどダサいと思われそうなことを本気でやると魅力が溢れてくるんですよね。
アルバムを見渡すと上記と正反対に位置するような90〜00年代ポップス、その間を橋渡しするような楽曲が多数収録されていて不思議と居心地が良い。海外的なビート感覚だけでぶっ放すのではなくジャパニーズポップスの良さやダサい所をしっかり混ぜたことで耳に残る感覚を作るのが上手い。
個人的には別EPに収録されている明らかに“最後の雨”リスペクトだろっていう“夢の続き”も外せない。モロだけど、こうやって良い曲をやはり後世に伝えていく役目も果たしてるのが憎い。
そしてラストに収録されたのはINZMのバンドverなのだがコレがもう本当にかっこいい。アルバムの最後にシングルのリミックスを入れるような手法にも見えて少し懐かしくなった。これが最後に来ることで収まりのいい作品になっている。
今後の活躍を期待するとともに、あとSixTONESと対バンしてくれたらめちゃくちゃ嬉しい。
⑥三浦大知/OVER
前作“球体”ではファンを超えた支持を獲得していてもう十分成功している…と言えるわけだが全く手を緩めずに今回も聞き応えのあるアルバムを出してきた。少々小難しく現代音楽寄りだった“球体”の収録時間75分に対して、今回は収録時間34分で挑んでいて非常にわかりやすい作りなのが好印象である。
1周すると「これ三浦大知何人いるの??」って思わせるくらい声色を操っていてその無敵感覚に殴られる。これを維持しながらライブだとめちゃくちゃ踊るんだよな?…マジでどういうこと??
次曲“全開”ではKREVAをフューチャーし、彼のあの畳みかけるような口技を久々に堪能できたことに感謝申し上げたい。続けて放たれる“好きなだけ”もやばい。削ぎ落とされたビートの中で「俺は音楽と踊ることが好きなだけ、それだけなんだ」と繰り返すだけの楽曲に音楽好きの心が踊ってしまう。曲も良いがアーティストとしての佇まいが良い。
終盤、音楽という名の環境と一体化するようなエレクトロチューン“ERROR”→目が覚めるような高音で視界を広げていく“SHEEP”で一気に攻める。個人的にはこの収録時間でやれるほぼ最大限をやり切ってる作品だなと感じた。だからこそもっともっとこの人やれるだろって気がしてくるのでどんどんおかしい曲持ってきて欲しい。もっとすごいのまだ作れるきっと。
⑤石原夏織/Calm Scene
朝日を浴びたように輝く音色が鳴り響いた所からニヤニヤが止まらず、どんなファンとの距離感も肯定するラストが染みて泣きじゃくった。こんな未来があるなんて、生きててよかった。
突然休止した某ユニット時代から知ってるから古参ぶるけど…俺は今胸を張ってあなたを歌手として皆に紹介できるよ改めて。
やっぱりね、声、歌声がめちゃくちゃ好きです。どんどん進化していくし凛とした表情も愛しい表情も何を歌っても含まれていて、それに引き寄せられるように名曲が生まれ続けたのがわかる。ストリングスの美しさ、バンドサウンドの力強さ、女神のような歌声、終盤にかけてQueenぽくなってくるともうロック野郎は頭を降らずには居られないし最後は拳突き上げて大勝利。これ本当に好き。ライブで聴いた時に「うわーーこれマジでみんなに!もっとみんなに聞いて欲しい俺!すげえええええ」ってなった。
声優アーティストポップスは基本的にトレンドから数年は遅れていて(最近はその差が縮まってきた気もする?)大半は00年代邦楽へのリスペクトが強い傾向があるんだけど、その意味合いや面白さを理解しつつも自分のやりたいこともやり切ってる気持ち良い作品だなと思った。
全体を見渡しても新しい音楽とか、革命的な部分は少ないにしても軽い気持ちで通して聴けるポップスとして最高なのではないかと思う。そしてやっぱり声が好きだ。
新しい部分の楽曲だとこの感じは嬉しい誤算だった。声の出し方が上手い(声優やぞ当たり前やろ)。春野さんが好きなんでね、クレジットで現れた時は驚いたし歌詞めちゃくちゃ好きで…
ここ数年間のシングルをほぼ収録しないって所にも驚いたけど優れた新曲を入れるだけのスペースを用意したのも僕は正解だったなと思う。確かに“Plastic Smile”も“Starcast”も確実に名曲なんだけど、これを収録しないって発想が普通は出てこないわけで…45分くらいのサイズ感で聞きやすくて、彼女の成長を感じさせながらもファンにちゃんと寄り添う物語を描く…と言うところに目標を定めたからこそ作れたんだなと思う。
超えられない壁に見えた前作を壊すのではなく優しく包み込むエバーグリーンな覚悟と物語が美しい。
最後これで終わるのズルいんだよな…
多分ずっと熱心に応援してきた人達も泣きじゃくってるし、俺みたいなFCもやめて都合の良い時だけ顔出してる奴も泣きじゃくってる。
推し活が最近加熱していて、たくさんお金使ってたった1人に全てを注ぎ込んで自分の人生も頑張って…そういう人が偉いんだよって価値観を押し付けられてるような気分になっていたから…偉いし多分楽しいとは思うけど。みんながみんなそんな風に生きられるわけじゃないのに。みんなそれぞれの距離感で良いんだよって優しい言葉かけられたから泣いちゃって。
それで「いつも君のことを歌ったよ。幸せを描いてきたよ」ってこんなカスみたいな俺に歌ってて、昔サンボマスター久々に聴いた時に「君の不安を終わらせにきた」って歌われた時の気持ち思い出してもう無茶苦茶になって…ちょっと客観的にもう評価できないな。
声優アーティストって良いんですよ結構。騙されたと思って聞いてみて。
④ストレイテナー/The Ordiary Road
まっすぐ25年歩んだ先、その集大成にThe Ordiary Roadだなんてタイトルを最新作に持ってくるバンドは素敵だなと改めて思う。アルバムの最初から最後まで、過去のストレイテナーで聞いたことがあるような懐かしいサウンドが並ぶのだが不思議とマンネリ感がない。
足繁く通う名店の新メニューが、ちゃんと店の伝統や味付けを継承しながらも新鮮な食材で丁寧に作られているような安心感がある。そして食材の組み合わせや調理法が少しばかり現代的あるいは刺激的な感じ、まさに客を飽きさせない作りである
↑これ大好きですね。色々好きな曲あるけどデジタルダンスロックチューンを作るのが本当に上手いなと思ってて、ここ数年はあんまりやってくれなかったけど?ついに真骨頂出てきたなと…喉潰れそうなサビかっこ良すぎるし、でもデジタルすぎない質感にしててイントロのリフや躍動感が本当にストレイテナーなんだよな。
言葉にできない。これがストレイテナーなんだよなこれが。次の“Exelion”のぶっ飛んだバンドサウンドもやられた。こんな乱暴な曲調のくせに英訳したら「時代を超えて愛と未来を俺たちは信じてる!」的な内容でめちゃくちゃ好きだな。あと“工場夜景”もメロディーメーカーすぎてやばいし“雨の明日”が何より名曲…たまらんですよねこれ。こういう優しい曲は今の強みですよね。天才、ホリエアツシ天才!
全体的には所謂ストレイテナーオタクが満面の笑みで「これこれ!これが聞きたかったのよ!!」と膝を打つような楽曲が他にも多数収録されているのが個人的に本作の強みだとは思うのだが、それと同時にストレイテナーを初めて聴く人にもオススメしたいアルバムでもある。色んな名作を過去にリリースしているバンドではあるが、あえてこの最新作をお勧めしたい。なんか全部のバランスがいいし、聞きやすいメロに満ちてるし1枚聴くだけでこれまでのストレイテナーの魅力をほぼ全て感じられるくらい過去作と色々繋がってるから。最後の曲とかめっちゃ王道なロックで良いんですよ。こんなの最後に持ってくる?って笑いそうになるくらい綺麗な曲。最新作を初めての人にお勧めしたい…って多分バンドにとって最高の褒め言葉の一つな気がする。是非よろしくお願いします
③SEKAI NO OWARI/Nautilus
いやーこれは良かったよね。マジでポップスのお手本みたいに綺麗な展開するアルバムなので気持ちがいい。初期に獲得したポップ性、実験的だった時期の経験値、そしてhabitによって獲得した新たな大衆性の総決算で完全優勝って感じ。
深瀬が持つ純粋なポップ性やファンタジーが名盤“Tree”後から数えて最も開花しただけではなく、現代社会と心の問題を曖昧にせず1人の一般人として寄り添いながら歌う所に素直に感心した。昔からまあまあ売れてるから明るいバンド、薄っぺらいポップスだと思ってる人も中にはいると思うけど歌詞を見るとやっぱり俺はそんな風に思えなくて…
これ聴いた時、それこそペラい言葉で言うけど「救われたな」と思った。去年まで少しお金がいい会社にいたけど全然自分に合わなくて生きた心地しなくてもうダメかと思ったけど、大事なのはやっぱり生きやすい場所だよなと思って転職して良かったもん俺…自分語り急に始める奴で草。逃げても沈んでも良いんで俺を傷つけたアイツらなんかより笑って楽しく長生きしなきゃね。
で、話戻すけどこれ初めて聴いた時「セカオワも踊って動画撮る系バンドの仲間入りか…」って少し残念だったんですがアルバムで聴くと全然違って大変申し訳なかった。この感じを生バンドでやってるのめちゃくちゃかっこいい。
そもそも所謂ドラゴンナイトブームから約10年が経過しているにも関わらず、令和においても“habit”のような楽曲を若者を含む大衆に届けられるのって本当にすごいと思う。同じような例があまり思い浮かばない。
ヒット曲をしっかりアルバムの中で機能させながらも本作は生バンド、特にギターの鳴りがとにかく素敵だなと思える楽曲が多い。元々バンドサウンドに拘った活動ではなかったからこそ得られたハネ感も、生の躍動感も音源レベルでしっかり聴かせる…2度美味しいバンドになったのではないだろうか。
これも好きな歌詞、行き止まり=自分が選んできた道は間違いだったと仮定して来た道辿ったら実はその過程に美しい景色がたくさんあったんだよって話。じゃあやっぱりあの壁はこれから出会えるたくさんの景色のために超えるべきかもしれないと。考え方素敵だなあって思いました。
サビの歌メロもEDMドロップも共存してブチ上げる感じは打ち込みを実験的に続けてきた良さがしっかり出てるなと思う。
他にも民族音楽ぽい“ターコイズ”のノリなんて昔は彼らから想像できなかったしギターソロがちゃんとロックしてて良い。Saoriボーカルの“バタフライエフェクト”はメロかわいくて何やっても上手くいかない俺らの歌だなと思ったし、あと個人的には“タイムマシン”や“Diary”のようなバラードの美しさも相変わらず素晴らしいものがあるなと心底感じる。その少年性、美声と共に永遠にこの音楽性が失われないことを今後も願ってやまない傑作である。
一人一人の闇が消えることはおそらく永遠になくて向き合うしかないんだけど、そんな時にセカオワの音楽があれば状況は少し違うだろうと1枚通して聴き終わった時には思える。
誰も、何も諦めないで欲しい。最悪な日々が続くこともあるから逃げても良いし深く沈んでも良い。それでも生きやすい場所を探して楽しく笑えれば良い。いつか“普通”が苦痛だった日々を乗り越えて、誰もが自分の生きやすい場所を探す権利がある。俺は彼らの音楽を聴くたびにそれを思い出せる。
②SixTONES/THE VIBES
本当に面白い男達だなと常々思う。日本語ラップ文学とロック&ファンクで殴り合う1曲目に圧倒されるのはまだ序の口…その熱を維持したまま往年のSMAP的ズルさでど真ん中を撃ち抜いたかと思えば00年代ミクスチャーロック、治安最悪パーティチューン、およそボーイズグループの域を飛び越えすぎなメタル楽曲で一気にブチ上がる。
あまりに、あまりに詰め込みすぎである。しかし窮屈な印象はなく、「次にどんな楽曲が再生されるのだろうか??」と思えるようなワクワクが最後まで続く余裕がしっかりある。ジェシー、京本のボーカルが相変わらず圧倒的なリードとして機能しながらも残り4人のメンバーが遊べる振り幅が拡大している印象が強い。
文字通りバイブスを上げていく楽曲が並ぶが、結局はなんでも混ぜ合わせて楽しい方向に向かっていくミクスチャーロック魂のようなものがリリースを重ねるたびに強く強く彼らに根付いているように感じる。個人的には、君の不在をダークエレポップで決める“君がいない”にはやられたし
松村北斗のインテリ文学性と田中樹の叩き上げヒップホップ文化が日常会話のように展開される“スーパーボーイ”ではスチャダラパーの“サマージャム95”が引用されておりさすがにやばすぎて大横転した。
全体的な印象としては、目の前の治安をぶち壊し自らフィールドとシーンを組み立ていくのが上手くなっているなあと。顔が良い、柄が悪いだけならそんなに面白くはないのだが、個々のメンバーが外の活動で得てきた収穫や知性をSixTONESという運命共同体に持ち込んでブラッシュアップを重ねる姿勢がやはりオンリーワンなものづくりを可能にしているように見える。なおかつ本人達もSixTONES像を固定せずにファンの期待に応えたり良い意味で裏切ることを繰り返してるのが良い。
事務所云々の問題も有り昨年は苦しい思いをする場面もあったと思うが、音楽ジャンルや人種を飛び越えて日々をブチ上げ肯定する力強い本作の存在は本当に大きなものとなった。今年はフェスにも3本出演したことで多くのミュージシャンやファンを味方につけることができたので本当に良かったと思う。いよいよ国民的グループとして皆に覚えてもらえる楽曲の誕生も望まれるが、とにかく6人が今後も楽しいことをやるんだぞという気持ちを忘れず笑いながら活動していく姿を音楽好きとして、1人のファンとしてニヤニヤしながら見つめたい。新年にまた新しいアルバム出るのでよろしく!
①柴田聡子/Your Favorite Things
今年一番聴いた。だから1位です。
ブラックミュージックの何とかを日本的に云々、様々な洋楽の引用が云々…その手のレビューをたくさん見るし音楽好きに聞かれるためにはそれで良いと思うのだがもう少し敷居を下げても良いと思う。
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/37100
※こちらで紹介されてるアーティストをいくつか聴いて納得したり感心しました。こう言う記事はプロの仕事だなと思うし、新しい音楽との出会いを提供してくれるのはマジでありがたいです。
さて、簡単に言うと僕がこのアルバムを気に入った理由は、作品の空気感に住みたいと何度も思ったから。歌詞は日常に流れる見過ごしがちなハッとする感覚を描いたものから正直鬼才すぎて何を歌ってるのかわからないものまであるが、聴きやすいメロディラインとポップ性に潜む仕掛けを何度も聞きながら説く楽しみに満ちていて飽きが来ない。わからないことがあるのはこんなにも嬉しいことなのか。
僕は、ライブに行く時いつも「音楽で会場とひとつになりたい」だなんて思わないけど「音楽とひとつになりたい」とずっと思っている。本作はその願いを史上最高の純度で叶えてくれた。
1曲目“Movie light”から息を呑むような美しいストリングスと甘いメロディに誘導される。
こんなにも美しい曲がまだこの世にはあったのか…36年生きて色々聴くと「またこう言う曲かあ」、「このタイプはもうお腹いっぱい」とか思うことは増え続けるのにまだまだ素直に感動できること、それが2024年現在の作品であることに喜びを隠しきれない。
気づけば部屋を飛び出したくなる。その足取りはマイペースなもので良い。ドラムのリズムが僕にそう話しかけてくる。最高の散歩BGMであり、部屋で1人でじっくり聞いてもいい。なんて幸せな音楽体験だろうか。
元・森は生きているの岡田拓郎氏の音作りが本当に心地いい。最低限まで削ぎ落とした音数により日本語がしっかり歌として届く喜びに触れていると嬉しくなる。無駄はないが余白はある。このバランスが素晴らしい。
本当にその通りだと思う。思いつき、適当な妄想、なんでもいい。信じてるだけでなんとかやっていけるような気がする。そしてまた歩ける。
変幻自在のボーカルワークに耳を癒されながら、思い通りの所に楽器のフレーズがハマっていく。空虚に思えた世界のパズルが少しずつ埋まっていくような快感、そうかと思えば曲がり角から突然キュートな猫が飛び出してくるような意外性のあるフックにやられる。気持ちいい予定通りとハプニングが繰り返される。こんなにも自分にフィットするアルバムは中々ない。勘違いでもいいけどこの作品は自分自身だと思った。
名曲の連打から曲間ゼロ秒で解き放たれる“白い椅子”の気持ちよさ…アルバムを通して聴くと言う行為を日常的に20年以上繰り返してる自分でも驚く。長野県木崎湖の様子を描いた“kizaki lake”をインターバルBGM的に差し込んでから後半はガラッと景色が変わる。見晴らしが良すぎて僕はもう何を悩んで日々を生きていたのか忘れそうになる。音楽ってすごい。柴田聡子流イタロディスコで踊らせる“side step”に心まで踊り出す
空虚みたいな穴を見つめて期待したりされたり…挙句よくわからない世界線で煙のない所から炎上していく世界を見るのはもう嫌だなと日々思う。それより僕と踊りませんか、夢の中へ行ってみたいと思いませんか?…そんな名曲まで聞こえてくる。
「Step in」というセリフから曲間ゼロ秒で繋がるネオシティポップ“Reebok”にまたしても大興奮を覚える。一体このアルバムはあと何回僕を楽しませてくれるだろう?
良い歌詞だなあ。こういうのが誰でも書けそうで書けない歌詞だなと思う。
ラストの“素直”、“Your Favorite Things”については柴田聡子さんのセルフライナーノーツで全部語られていて自分が言葉を尽くす意味がそこにあるのかという疑問すら生まれてくる。
とにかく僕はこのアルバムを聴くと背筋がピンと伸びて胸を張って音楽とひとつになった後に生活に戻れる。これからも大切に大切に聴いていきたい。何を失っても後悔しても素直に、この作品に流れる人間像のように生きていきたい。
何食べて暮らしたらこんな歌詞書けるのかな。綺麗な日本語だな。すごいな…しか言葉出てこない。
音楽を聴くと言う行為は刺激的、特別な体験である…と同時に我々のような人間にとっては日常的な動作に過ぎないと常々思う。きっと来年も、死ぬまでずっと。その意味合いでは生活に最も寄り添うことが出来た1枚が結局お気に入りになってしまう昨今。これ以外に今年は思い浮かばなかった。それだけの話である。
ありがとう柴田聡子さん。ありがとう2024の音楽たちよ。
年間ベスト10簡易版
①柴田聡子/Your Favorite Things
②SixTONES/THE VIBES
③SEKAI NO OWARI/Nautilus
④ストレイテナー/The Ordinary Road
⑤石原夏織/Calm Scene
⑥三浦大知/OVER
⑦Number_i/No.I
⑧踊ってばかりの国/On the shore
⑨北村蕗/500mm
⑩THE BAWDIES/POPCORN
以上!!
TOP10圏外の注目作など
ここからは惜しくもランクイン外となったものの紹介したいアルバム、楽曲をピックアップします。良い曲たくさんあったので。
・UVERworld/PHOENIX
俺知ってるよ、UVERworldは男祭りとかやってるし過去になんかやらかしてるし、現代的に見ても倫理観危なそうだしTAKUYA∞が痛すぎて音楽好きのメイン層から嫌われてるって。絶対聞かないでしょ?でも聞いて欲しいんだよマジで。
YOASOBIアイドル的な歌乗せと爆音でブチ上げてからあっという間に興奮の渦に巻き込まれる。不特定多数のリスナーを巻き込んで踊らせるだけのバズソングとしての中毒性を持ちながら、拳を注ぎ上げたくなる様なロックバンドとしてのアンセムをスタジアム規模でやり切ってる。こんなバンドいないと思うんだよな、いたら聞きたいんで教えて欲しい。UVERworldは今後も色々言われるかもだけど、この勢いで次のアルバム作って欲しい。マジで今1番好きな音出してるこのバンド。
・水瀬いのり/heart bookmark
今だからこそ勝ち取ることができた自分らしい表現や“好き”の気持ちを今年さらに強く優しく貫いてくれたと思う。最強なんですよねこの人。
Mr.Children的ポップスの集大成=フラーグムも必聴ではあるが、やはり1番はこちら…
日本人の中に根付く祭りの系譜…例えば椎名林檎さんの“長く短い祭り”とかサカナクションの“夜の踊り子”のような精神にEDMとサンバを混ぜた無茶苦茶な曲である。しぬほど聞きましたねこれ。
アルバムとしてはシングル2曲の置き所がファン目線でないと理解できない…と言うことでTOP10には選出しなかったが、来年も活躍期待してます!
・Tempalay/((ika)
武道館も成功させたサイケロックバンド、まだまだ知らない人が多そうなので紹介。本作は70分超えの超大作、久々に集中してじっくり音楽を聴く大切さを改めて教えてくれるような作品だった。
これなんか聞きやすいし今後盆踊り的な夏の定番になってほしいなあ。アルバムとしてはボリュームが多すぎて整理に少し困るがこれだけ詰め込めるのは素晴らしい。あとやっぱりライブすごいんで一回見て欲しい
・ZAZEN BOYS/らんど
10年ぶりの新譜!ギターロックイズジャスティス、This is 向井秀徳でしたね。なかなか軽く聞ける作品じゃなかったけどイントロ1発目の鋭い音聞いたらもうね…っていうか本当に音質が良くなったと思う。唯一無二のリズム感、言語感覚を維持したままシリアスな“永遠少女”になだれこむ展開は圧巻。いつまでも誇りにしたい日本のロックバンドです。
・Base Ball Bear/天使だったじゃないか
こちらもギターロック、思わぬところにサウンドが回帰したけど毎度毎度みんながやらないことをわざとやる小出くんの姿勢が上手いことハマった作品。
これたまらんですよね、恋でした。全体的には初めてギターを手にした少年のようなサウンドで駆け巡る気持ちよさと未来への肯定感に満ちた20分って感じ、好き。THIS IS ロックンロールなフレッシュさと円熟味は長年やってるからこその長所かな。間違いなく彼らも日本のいいロックバンドです。
・YUKI/Slits
昔から歌声ほんまに好きで…声優アーティスト好きになったのもこの方の影響かなり強いと思う。これまでの彼女のイメージを覆す挑戦的な序盤からこれぞYUKI!!って曲まで振り幅もバランスもめちゃくちゃ良いポップスアルバムだったと思う。
これ、これの歌詞読んで泣いたよね俺…時代は窮屈になっていくけど、好きなものを大きな声で「好きだ」って叫ぶのは何も悪いことじゃないんだよな。俺もそんな時代にしたいと思う。過去の栄光ではなく、2024現在進行形で時代を歌う彼女の姿をぜひ耳で感じて欲しい。
・んoon/First Love
既にめちゃくちゃ注目されてるバンドの1stアルバムなんだけどマジで何者なんだろうか?ジャンルの横断や混ぜ合わせ方がすごくて一瞬で虜になる音してて何も言葉出てこなくなる。何かこう刺激的な音を求めていた自分に刺さりました。形容するならディープでポップに突き抜けるクラムボンのような印象かな…とても良かったです
・Dos Monos/Dos Atmos
めっちゃラップ上手いので有名な人たち(浅い知識)に生バンドの肉体感を合わせて強い音だった。ミクスチャーロックは好きですかーーー!?って叫びたくなる。歌詞は結構むずいので考察したい向けだと思い割愛します。
・ena mori/なんてね
ポカリのCMでおなじみ、今年1番良かったサマーソングでしょうね。電波ではないがその系統とも言える電子音、日本語の美しさと語感の面白さ、なぜか漂うK-pop感、全てが天才的に絡み合ってて最高。
・King & Prince/Harajuku
かっこいいですよね、無我夢中で踊り出したくなる。Mega Shinnosuke先生大優勝の最強ダンスチューンに2人の声が合ってて素敵。
終わりに
はい。みなさんこんばんは。
ここまで読んでる人すごすぎるよ。ありがとうございます。あとはダラダラ雑感書きます。
今年は例年と比べてあまり新譜ばかりを追わずに本当に自分が好きな音楽はなんだろう??って考えて掘ることをメインにして…もしかして俺はサイケロックが好きなのか!?と思って色々聴いたけど結局ひとつを掘るの苦手すぎてよくわからんくなりました。でもやっぱり聴いた音楽は財産なので、それを武器にして来年はもっともっと色んな音楽を聞ける自分になれる!…気がする。それが嬉しい。
あと音楽を聴く時間を削ってドラマを見たり(海に眠るダイヤモンド、西園寺さんは家事をしない、アンチヒーロー、虎に翼、おっさんずラブ2など)…ちょっといつもとは違うムーブをしていました。色々聞けば聞くほど何歳になっても知らない世界を音楽は見せてくれます。あの時わからなかった音楽が今になって気持ちよく聞けたりします。生きててよかったですね。生きててよかった。
それと今年はライブで関東に行く機会が激減(声優アーティストのライブに行く機会が減ったのも大きいかな)したことで東海地方のライブをたくさん見に行く機会が増えました。
東海地方になんて何もない…と思ってましたが、それは本当に僕がちゃんと見てなかっただけで…きっとそれぞれの地域に色んなイベントがあって色んな音楽が鳴っていて暮らしがあるんだと思います。例えばこんなフェスもあります。
コレめっちゃ良かったんでおすすめ、東海地方の誇りにします。
あと向井秀徳と崎山くんのデュエット見れたのやばいんだよな↓↓東京や大阪じゃ見られない。
だから改めて色んな地域で色んな人が色んな音楽を楽しんでいることを知ったと言うか、俺もその1人なんだよなって実感した。それでサブスクを使えばなんでも聞ける。こんな幸せな時代でよかったーー!なんて思ったり。
その結果、音楽の好みは細分化し続けていて、なかなか同じ曲を同じように良いよねって言い合えることが難しい時代になってしまった気分もありますが…だからこそ自分の言葉で自分の好きな音楽を伝えていくって今本当に大事なことだなと思います。
わかりあえなくていいから、誰かの“好き”に触れるのは絶対良いことですよね。今感じたことを言葉にできる人は強いはず。そして伝える力さえあれば言葉を放棄して弱いものイジメしてくる人たちにだって負けないんじゃないかなと思います。
俺はめんどくさいし暑苦しいし、こんなベラベラ書くヤツもう時代に合わないってわかるけど多分やめられないので続けていきますこの感じで。そんな俺もニューかわいいと思います!
と言うわけで、来年も音楽聴いて楽しく生きて笑っていきましょう。ありがとうございました!