外国語

辞書を使わずに外国語を習得する

外国語を覚えるのって、簡単そうでなかなか難しいです。

語学コースを受講したり、留学したり、皆さん自分の学習スタイルに合った方法を試みるわけですが、成果は・・・それはまあ、人それぞれ、ですよね。

今回のケーススタディ(?)は私自身です。
なので、本題の「辞書を使わず」に入る前に、少し私の背景を説明させてください。
(これがないと、たぶん分かり難いと思うので)


私の場合

私の場合なんですが、英語圏ではないので、予備知識ほぼゼロで来て、現地に着いてから本当にサバイバル状態で始めました。
(どうしてそんな無謀なことをしたのか、という話はまたいつかの機会にでも。読んでくださる人がいれば・・・ですけど)

最初に行った先は語学学校なので、とりあえずそこで言葉の勉強に専念すれば良かったのですが、あまりのできなさに、今何を勉強しているのかもわからないほど。
先生に話しかけられても口が開けずに、目で必死に「わかりませ〜ん」と訴える感じでした。
あるクラスのときには、クラスメートで、ちょっとお母さんっぽい雰囲気の人がいて、気にかけてくれたりもしたんですが、それさえも情けなくて、申し訳なくて、素直に頼れないという・・・。
ペア学習のときにも、何もわからなくて、できなくて、パートナーになった人に「チッ!」と舌打ちされたこともあります。
ただでさえ苦しんでるのに、こういうの、本気で心が折れますから・・・。

その学校は基本的に学生寮もなくて、ホームステイとは名ばかりの、ただの間借りで1人の生活でした。ステイ先の家族との交流とかはなかったです。

今思い出しても、よく最初の半年で日本に逃げ帰らなかったな、という気がします。 「今が一番苦しいんだ。言葉ができるようになれば、楽になる」と思うことで、苦しさに堪えていたように思います。

そんな私なんですが、それでも約3年後には、最難レベルの語学能力試験に合格しました。
2次試験のひとつに「自由テーマでの発表」と、その内容についての質疑応答があったのですが、ここで試験官から「どうして試験なんかに来たの?今更テストなんて必要ないでしょう?」と言ってもらえました。
このときの私を、昔の語学学校の先生が見たら、きっと腰を抜かしていたことでしょう。
(試験を受けた理由は簡単で、正式な会議通訳者としての登録申請に、このテストの合格書を添える必要があったんです)
こうして結果だけを見ると、落ちこぼれだったとは思えないほどの進歩だと思います。


勉強法は?

ここで勉強法なのですが、答えはとても簡単です。

読書」です。
それも、わざと辞書なしで本を読みました。

私が読んだ本は、過去に日本語訳で読んだことのある小説や、小・中学生向けくらいの小説、あとは自分が多少は知っている歴史上の人物についての本、SF・ファンタジーなど、ジャンルはいろいろでした。
本の数は、多ければ多いほどいいです。

学校用の勉強するのに文法書は使いましたが、これも日本語ではなくて、その言語で説明してある文法書で、辞書もその言語(日本だったら国語辞典)でした。
勉強用に日本語の辞書(日英辞典みたいなの)を常時使ったのは、最初の3ヶ月くらいでしょうか。
それ以降は、よほどのことがないと日本語訳の辞書は使いませんでした。

自分で買った、純粋な読書用の本は、最初から辞書なしで読みました。
でも、本を読んでも、もちろんわからない単語ばかりですから、読んでいてストレスは相当あります。はっきり言って、読むのがものすごく苦痛、です。
だから1冊の本を読むのにかなりの日数がかかります。
それでも、諦めないで、ひたすら読むんです。

外国語の習得法として、これは効率的ではないかもしれません。
でも、結果として、語彙力や表現力は確実につきます。
単語や表現によるニュアンスの違いも、よくわかるようになります。
辞書で単語を調べると、意味が幾つも並んでいますが、どの文脈でどういう使われ方をするのか、というのは辞書だけ見ていてもなかなか身につきませんから。
しかも、辞書を使わず、文脈を頼りに推測したり想像力を働かせたりして読んでいると、「一度日本語に訳して理解する」というのを徐々にしなくなってきて、「その言語で理解する」、「その言語で考える」という能力も(意図せず)できてきます。

最初こそほとんど進歩の見えない状態が続きますが、ある時を越えると、ビックリするような伸び方を自分で感じることができますし、長い目でみるとこの方法で習得した言語は、より「自分のもの」になっていると思います。

***

このやり方が誰にでも合うとは思っていませんが、私には正解でした。

私は、もともと話すのが苦手で、人見知りをする性格です。(自慢にもならない・・・)
そんな私が、ましてや、外国語で気軽に誰とでも話せるわけなどないので、1人でいる時間がとても多かったのです。
それに、暗くなってから1人で外にいるのも嫌だったので、早い時間に自分の部屋に帰っているのですが、TVも電話もPCもない生活なので、勉強するか、本を読むか、寝るしかありません。
寝るのは大好きですし、学校のための勉強も確かにするにはしますが、それでも時間を持て余すことが多いので、本はとても良い時間つぶしなんです。
もっとも、読んで面白ければ良いのですが、残念ながら「全然わかんないよ〜!」と本を投げ出したくなる衝動と戦いながら読むので、それはキツイのですが・・・。

このやり方は、結局のところ本が好きだからできたのかな、と思います。
読んで内容がわからなくても、本のない生活は考えられなかったんです。


外国語の習得法として、私の場合は読書でしたが、人によっては「耳から覚える」という人もいるし、適した学習方法は人それぞれです。

辞書なしで、というのは一見すると無茶なやり方に見えるかもしれませんが、これは試してみる価値のある方法だろうと思います。
活字がお好きな方にはオススメです。

***

今私は、外国語ができるようになって、読める本の選択肢が格段に増えたので、とても幸せです。
偉そうなことを言っても、何のことはない、これが外国語習得の目的だったんですよ。
「mission complete」です。


20年以上の海外生活に終止符を打ち、2020年後半には日本へ帰国します。サポートは皆さんとお会いするときのお茶代として還元させていただきます。