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現代音楽についてのおすすめ書籍やサイト

知識を深めてみませんか?

前回の記事では現代の声楽曲のおおまかなジャンルについて私なりに説明しました。気に入った音楽を聞いたり演奏するだけでも楽しいですが、クラシック音楽において音楽史や作曲家について知っているとさらに音楽を楽しめることが多いように、現代音楽においても大まかな歴史の流れや知識を持っているともっともっと親近感がわいたり楽しむことができるでしょう。そこで今回は現代音楽について最初の知識を深めるためのおすすめ書籍やサイトを私の知る範囲でいくつか紹介します。専門書はなかなか読みこなせないので私でもわかる、楽しめたという基準で選びました。絶版のものや洋書や海外のサイトも含みますが、そこは図書館や文明の利器、google翻訳などを駆使してぜひ触れてみてください。現代の声楽曲についての文献やレパートリーの探し方についてはまたどこかで取り上げようと思います。

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現代音楽の知識を深めるためのおすすめ書籍やサイト

やさしい現代音楽の作曲法 
木石 岳 (著), 川島 素晴 (監修)
こんな本が大学時代に欲しかった!という一冊。こちらは作曲法、という観点から様々な現代音楽のテーマが実に細かくそしてわかりやすく取り上げられています。興味のある部分から読み進めることが可能なところもありがたい。また同時代の他の芸術との関連も折に触れ述べられているところもすごく興味深いです。ちなみに付録には作曲ソフトOpen Musicの解説がついていてシュトゥットガルト音大で電子音楽の授業を取っていた際に私はすごく助かったのでした。

現代音楽を理解するための88のキーワード
ジャン・イヴ・ボスール (著), 栗原 詩子 (翻訳)
原書はフランス語のVocabulaire de la musique contemporaine、フランスで現代音楽を勉強する際には必携の一冊。この本は一つ一つの項目についてはかなり簡潔ですが、キーワード順に現代音楽における様々なトピックがとりあげられているので、例えば"ミクロフォニー"や"セリー技法"など耳にするけれどちゃんと説明がほしい単語にぶつかったときに辞典のように調べることができるのがとても便利です。

現代音楽小史現代音楽 1945年以降の前衛
ポール・グリフィス (著), 石田 一志 (著)
原書は英語のModern Music: A Concise History from Debussy to BoulezおよびModern Music: The avant garde since 1945。原著は改訂版も出ているようですが日本語版ではまず前者にてワーグナー、ドビュッシーあたりからシュトックハウゼン、ノーノ、ブーレーズあたりに至るまでのいわゆる現代音楽に突入するまでの音楽史が、後者ではトータルセリエリズム以降どのような流れが起こったのかが時代背景とともに俯瞰的にとりあげられています。この二冊を読んでもらえれば90年代くらいまでの現代音楽の大きな流れを時間軸で抑えることができるかと思います。

Emprise(エンプリズ)
後藤 英 (著)
電子音楽とその周辺のアートについて学びたい方におすすめの本。著者である後藤先生が実際に体験してきた記録とともに電子音楽にまつわる様々な作品及び電子音楽周囲の機械の発展や研究施設の歴史がまとめられている大ボリュームな一冊です。現代音楽と電子音楽の関わり、そして発展のプロセス、さらにはセンサー楽器やサウンド・インスタレーション、ニューメディアなど、幅広いテーマが取り上げられており私もとても勉強になりました。補足としてMIDIの概要およびCSoundによるサウンドシンセシスについても取り上げられています。

音楽的、音楽論的 西洋音楽史 まとめ

音楽について考えるwebサイトとして実に様々なトピックがまとめられていてとても面白いのですが、ここにも20 世紀前半の音楽(全10回)、20 世紀後半の音楽(全14回)として現代音楽の大まかな流れがざっくりまとまっています。読みながら参考にあげられている音源を聞けば現代音楽の歴史や系統がさっくりわかること間違いなし。これが無料で読めるって良い時代になったものです。ちなみにそれ以前の音楽についてもとてもわかりやすくまとめてあります。

Unerhörte Töne
Gestaltung experimenteller Instrumente und Tonerzeuger

ドイツのハレ・ギービッヒェンシュタイン芸術大学 (Burg Giebichenstein University of Art and Design Halle - Design Campus)内における「前代未聞の音」というプロジェクトでは現代音楽、特にサウンドアートの歴史に関する様々なトピックがテクストとビデオで取り上げられています。ビデオや音源がついているので実際に音を聴きながらわかりやすく説明してもらえるのがとても良い。ドイツ語の勉強にもなって楽しいです。

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もっと深めるために

Neue Zeitschrift für Musik(新音楽時報)
最新の、今生きている音楽の動向を知りたい方はぜひチェックの現代音楽専門の雑誌。デジタル版も配信されています。毎号テーマにそった寄稿文やインタビューを始め、新譜、新著情報はもちろん注目のフェスティバルやラジオ放送予定など実に様々な内容を入手できます。パラパラと見ているだけでも楽しいです。そしてこの雑誌を創刊したのが、あのロベルト・シューマンかと思うと音楽の歴史って繋がってるんだなぁと味わい深い気持ちになれます。笑

Samuel Andreyev(Music explained in 10 minutes,Music analysis)
カナダ出身フランス在住の作曲家、サミュエル・アンドレーエフによるyoutubeチャンネル、色々あるのですが中でも10分間で説明しよう!というシリーズと音楽分析シリーズがおすすめです。現代音楽の中でも解説してもらいたい、とっつきにくい音楽を説明してくれているので勉強になります。たまにうっかり違うジャンルの分析もあったりしてそれも興味深い。英語の勉強にもなります。

MUSIQUECONTEMPORAINE.INFO
現代音楽を愛好するすべての人のための、というフランスのサイト(手作り感あふれています)。作曲家やそれぞれの用語、歴史などさまざまなトピックから現代音楽にまつわる膨大な内容がまとめられています。編成から曲を探すこともできるので、フランス語で調べ物をするときにはとても便利です(レパートリーの探し方についてはまた別の機会に紹介します)

作曲家がゆく  西村朗対話集
ここまで見て、日本の現代音楽事情についてまとめた本はないの?と思った鋭い皆さま。残念ながら私の知る限りでは個々のグループや作曲家についての本はあるものの概要をまとめたものをまだ見つけられていません(あったら教えてほしい!)。しかしこの対話集という形で現代音楽周辺の邦人作曲家、評論家、ピアニストとの対談がまとまったこの一冊を読むと、一気に作曲家や現代音楽にも親近感がわくと思います。個々の作曲家についての資料はたくさんあると思いますので興味を持った作曲家がいればその人についてそれぞれまた調べていくのが手っ取り早いと思います。

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最後に

ここまで色々書きましたが最も現代音楽に興味を持つ方法はやっぱり自分で楽譜を見てみたりコンサートや音源を実際に聞いてみたりと、あまり肩肘はらず縁や興味そして好き嫌いを大事にしながら自分好みの音楽に出会っていくことに尽きます。特に最近は楽譜つきのyoutubeもたくさんありますし、様々なアンサンブルが配信コンサートも行っています。もしここにあがった本やサイトを読んで興味を持った作品があればどんどん聞いてみてください。さらに今回ここにあげた本もほんの少しなので内容も偏りが否めません。というわけでここに挙がっていないおすすめ文献があれば私も知りたいのでぜひぜひ教えてください。

追記

投稿したら色々と教えていただけたのでここに追記としてまとめました。教えてくださった皆さま、本当にありがとうございました!

現代音楽のパサージュ(青土社) 松平頼暁 

日本の電子音楽 増補改訂版(愛育社) 川崎弘二 

聴取の詩学(勁草書房) 庄野進

現代音楽の記譜 エルハルト・カルコシュカ (著), 入野義朗 (翻訳)
 原著はDas Schriftbild der Neuen Musik

「線の音楽」 近藤譲

楽譜のお勉強(稲森 安太己さんのnoteマガジン)

Music of the Twentieth Century : A Study of Its Elements and Structure
Ton de Leeuw(トン・デ・レーウ)

現代音楽史-闘争しつづける芸術のゆくえ (中公新書)沼野雄司

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