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PANK PONK magazine vol.9 痛み/マナー  歯医者/駄菓子屋

歯医者に通っている。久しぶりに。
先日麻酔の注射を打たれた時に「痛みに強いんですね。」と言われた。
「へ?」と思った僕は「なぜそう思うのでしょうか?」と尋ねた。「顔色ひとつ変わらないので」と。目からウロコである。聞くところによるとみんなもっと痛そうに顔をしかめたりするらしい。そうなんだ。歯医者ってもっと感情を露わにしていい場所なんだ。知らなかったなあ。
そういえば歯医者で他の人の治療風景を見ることはない。「うわあー」とか「ぐわあー」とか耳にしたこともないから、平然と何事もなかったかのように涼しい顔をするのがマナーだと思っていましたよ。
口の中って性器より他人に見られたくない場所。(他にも手は見られたくないですね。指短くて女の子より小さい手だし、考え事してると爪噛む癖が治らないからコンプレックス)
歯医者の人や歯科衛生士の人も僕の口内みて「うわああー!汚い!」「こんな歯の男とはぜったいキスしたくない!」とかおくびにも出さないじゃあないですか。そのお返しとしてこちらも多少痛いとしても涼しい顔で何事もなかったかのような態度を決め込むのがお返しとしてのマナーだと思ってましたよ。なんか損したなあ、とそれから歯医者に行った時は感情を解放しようと思い「う」「ぐ」などと呟いてみたのですが恥ずかしくて聴こえないような微弱の音量しか出すことができません。なかなか長年の習慣を変えることは難しいようです。
もちろん僕も痛いし怖いですよ。だから歯医者に行きたくないので重症化して我慢できずに行く頃合いには、さらに痛い&怖いのです。
いつも思うのですが歯医者さんて毛深い人多くないですか?男性ホルモンが多いことが歯医者としての適性に有利なのかどうか分かりませんが、手にもびっしり毛が生えていてそれがゴム手袋でピタッと撫でつけられてヒョウ柄みたいになって目前に迫ってくるのですよ。サバンナで猛獣に迫られてる気分で背筋が凍りつきそうです。女性が男性を怖いというような気持ちもこんな感じなのでしょうか。

考えてみればテーブルマナーやデートでの振る舞いなど諸々よくあるようなマナーや立ち振る舞いって本やネットで学んだり人に尋ねたりできるけど、どうでもいいというかあまり話題にならないようなことって人によってぜんぜん違ったりするけど、中身がブラックボックス化してるので他人がどうしてるか完全に不明なことってあるなあ、と。
以前に書いたのですが回転寿司での友人の皿の取り方とか。そういうマニュアル化されてないような未分化な事柄に自分は惹かれます。

なんでもマニュアル化されたのが行き過ぎてて、デザインやアートなどなど通常想像力が必要とされるようなことにまでマニュアル化が及んででつまらないな、と日々思いながら街の景観を眺めては「つまんねーなあ」とぼやきながら暮らしています。

接客苦手なので、学生時代はずっと皿洗いのバイトしてたのですが、「ありがとうございました!」とか元気に言えなくてどこのバイトでも皿洗いに回されてました。居残りで訓練とかさせられるのですが、どうしてもお辞儀の角度とか、こういう時はこう言え!と言われたら出来ないのです。人によっては簡単なことかもしれませんが自分にとってはやりたくないとかそれ以上のことなのです!(そもそも明るく元気な接客って本当に必要ですか?暗いのも嫌ですが適度がいいです。たまに過剰に下手から丁寧な店員さんいるのですが、なんか自分が傲慢な態度で振る舞っているような気がしてきて落ち着きません。)

「こうしなくてはならない!」という命令が出されると自分がロボットにさせられているような気がしてきて胸が苦しくなってきて喉も締め付けられて声も出ないし、身体も動かなくなってくるのです。
だからずっと接客は自分には出来ないと思ってたのですが自営業で飲食店やってみて、マニュアルなければ全然余裕で出来ました。

最近は子供の頃10円とか100円握りしめて駄菓子屋(プラモとかメンコとか文具もある!もちろん糸に当たりがついたキナコの飴も!)行ってたの楽しかったな、と思い出して、駄菓子屋とか経営してみたいな、とたまに夢想するのですが、かつて昭和にいたおっさん、おばはん、ジジイ!やババア!(「一生女の子宣言」などが出される昨今では失礼かと思いますが愛着/撞着をこめてこう呼ばせてください)をどう確保するかが問題です。既に絶滅を危惧されていますのでスカウトするのも大変ですし、かといって養成しよかうかと思ってもマニュアル化したらすべてが台無しです。というかマニュアルの無さがウリなので不可能です。実現すれば子供にも高齢者にも地域にも良いことづくめだと思うのですがね。毎日10円の飴玉1000個売ってやっと売り上げ1万円かあ。補助金もらうとかNPOみたいなのじゃないと無理だな。誰かベンチャーとか地域再生みたいなの得意な人、夜露死苦!!

家の近所の「ほっかほっか亭」にまさにいい感じの昭和のおばはん(顔もそうだが愛想も微妙に良くないが、感じが悪いというのではない。むしろいい感じ)が数人いるのですが、どう経営しているのでしょう?一度社長にインタビューしてみたいです。

そこはBGMも演歌で最高の雰囲気です。
近年BGMが演歌の店ってあるのでしょうか、演歌がBGMいいですね。以前とある飲食店で便意を催しトイレに入ったのですがご丁寧にトイレにまでスピーカーを設置しBGMを聴かせていただけるのですがパンツをずり下げちんこをぶら下げながら「君が好きでたまらない」などと、のたまわれられるのは勘弁して欲しいです。便座自動上下サービスと同じで過剰サービスと思います。
演歌がBGMといっても昭和レトロを模した居酒屋でかけられてもあまりよくありません。あくまで店員さんがほんとに好きで演歌かけてるのだろなー、と思えないと台無しなのです。
僕が現在通っている歯医者ではJのPOPがかかっているのですが、働いている人は30歳から50歳くらいとおぼしき人だけです。好きなんですかねえ「大好きだー♪」とか「大嫌いだけどー♫」とか。
デトロイトテクノの重鎮デリック・メイが来日した際に渋谷のファミレスで「君たちはこの曲が好きで好きな曲を聴きながら楽しく働いているのか?どうなんだ?」「いいえ。趣味じゃないです。」「じゃあなぜこんな糞な曲を聴きながら仕事してるんだい?「あのー、社で決められているので」「じゃあ俺の曲をかけてくれ」と胸ぐらを掴み詰め寄った、とかいう話があるとかないとか。ね。(たぶん僕の記憶違いで誇張されてますが、概ねこんな感じだと思います)


マニュアルで片付けるのでなく出来るだけナマの感情で生きていきたいですね。人生はお祭りだ。共に踊ろう!

T-shirt design 浜吉竜一
Photo 当時バイトで一緒だった写真学校に通う学生
Model 友人のユウタ 


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