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父親、初恋。

 今日夢に父親が現れた。
 
 小さい頃に離婚していたから父親の記憶はほとんどない。だからこそ父親が夢に出てきたことが強烈に頭に残っていたのかな。夢なんてすぐ忘れちゃうのに。

 夢の全体の話は覚えていないけれど、小さい頃ぶりに父親と再会し、とてつもなく抱きしめられたくなり、抱きしめてほしいとお願いするシーンだった。

 目が覚めてそのシーンを思い返して、急に「あ、私の初恋って父親かも」という感情が流れた。
 考えて整理して出てきた考えではなく、勝手に流れ込んできた感情に、私はなんとなく納得した。

 今までずっと「初恋」というものがわからなかった。
 初恋っていつ?だれ?という会話にはついていけなかった。

 物心ついたときから父親はいなかった。
 たまに面会みたいな感じで父親と過ごす時間は何回かあったけれど、小学生になったらそれもなくなった。

 母は父のことを嫌っているから、父親の話を自分から聞いたこともなく、聞かされるのはよくないことばかり。

 話を聞く限りたしかにロクでもない男だったのだろう。
 喘息持ちなのにヘビースモーカーで、しょっちゅう体調を崩し、酒を飲めばすぐ誰かを殴って警察沙汰になる。
 
 そんな男と結婚なんてとても考えられないけど、私にとって父親は架空の存在で、絵本の中や小説やドラマの世界の中にしかないレベルの存在。一緒に暮らしたことも、直接嫌なことをされたこともない。だから母と違って、「嫌い」なイメージは全くない。

 父親との記憶はほとんどない。名前は知ってる、覚えてる。私のことを名前で呼び捨てで呼ぶこと、記憶の底に刻まれてるから、異性に名前を呼び捨てで呼ばれると父親に呼ばれていた記憶が蘇って変な気持ちになる。

 名前を呼び捨てで呼ばれると少しきゅんとすること、あなたにというより、ともに蘇る父親の記憶に。
 それから父親は、かっこいい。
 写真の中の父親を小さい頃みて純粋にかっこいいと思ったし、小学生まで好きなタイプを聞かれたら「父親の顔」と答えてた。

 それも中学生くらいになると言わないほうがいいのかもと無意識に心の中に潜めていたら気づいたらそんなことも忘れていった。でもたしかに父親の顔が、好きだ。

 父親がいなくて困ったことは全くない。会いたいと思うこともなかったけれど、最近は会いたいなと思う。
 1人の人間として話ができる年齢になったからか、会って話がしたい気持ちが生まれた。
 連絡先も何も知らないから叶わないけれど、できるなら会って話をして、ハグしたい。

 深い意味はなく、ただ、抱きしめられたい。
 触れて、確認したい。

 ずっと昔から基本的に年上が好きだった。
 高校生の頃、数学の先生が好きで、大学生の頃、ゼミの先生のことが好きだった(恋愛的とかではない)。

 年上の異性には強烈に惹かれるものがあった。
 父親がいないからかなーとぼんやり思っていたけど、あるときふと思った。

 理想の顔の父親と会ったら、私はもうそれを好きになってしまうのでは?と。恋愛感情はわからないから恋愛云々ではなくて、単純に1人の人として好きになるのではないか。先生を好きになっだ感覚と同じように。

 そして不安になった。
 普通の感覚として存在する、親、兄弟とそういう関係には当たり前のようにならないという感覚。

 それが私には1ミリもわからないことに。
 父親と会ったとしても家族のような気持ちには当然ならないだろう。ただの1人の人間としてしか認識できないと思う。嫌悪感も生まれない気がする。
 ふつうに好みだとしたら寝れるような気もする。
 全く考えられない!みたいな気持ちが少しもわからないから、だから逆に会ってみたい。

 父親に憧れがきっとある。
 父親の癖を覚えているし、小さい頃はその癖を自分も持っていて、その共通点に密かに嬉しかった。明確にうれしいとは感じていなかったけど、今言葉にすると、なんとなく嬉しかったんだなと。

 次第に母が嫌がるから癖を封印したし、そうしたら父親の癖のことも忘れていった。

 それでもときどき思い出す。
 父親の存在を。顔を。私の名前を呼ぶ声を。言葉を。

 ……会いたいなぁ。

 たまーーーに思うのだ。
 父親にまた、名前を呼ばれたいと。

 生きてるのかもわからないけれど、死ぬまでに一度会えたらと思います。
 
 (もしかして気持ち悪いことを書いているのかな笑。)

 父親と手を繋いでる子どもとか、子供に笑いかける父親とかを街中で見かけると、泣きそうになる。
 そんな現実があることが、信じられない。

 それは、私には、存在しない世界線。 


 

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