見出し画像

ゾンビの現れた夜に会いにいきたいと思う人が欲しい。

ソンビが現れた。そんな夜に会いたいと思えるような人が欲しい。夜中に車を走らせているとふとそんなことを思うことがある。

寝静まる街にゾンビが急に現れたとしたら、大半の人が絶体絶命なんじゃないのかな。寝ているから噛まれる寸前まで気がつかなさそうだし、仮に起きたとしても寝ぼけた頭ではベストな判断ができそうにもないし。

となると、このタイミングで車に乗っている私は比較的生き残る確率が高いのではないだろうか。だってゾンビが襲ってきても車で体当たりすればいいし、アドレナリンがめっちゃ出て……みたいな感じで頭の回転も速くなっていそうだし。

しかし、仮に生き残ることができたとしても、緊急事態の街で長く1人で生きていくのは少々不安。かといって運よく出会った生存者とすぐに信頼関係を築くことも難しいだろうなと思う。食糧とか武器とかで揉めるに違いない。そういうことは、すでに学習済みである。ゾンビ映画で何回か見た。

ならば、私が最初にすべきことは逃げることでも闘うことでもなく、誰かを迎えにいくことに限る。まず運命を共にする相手を確保すべきだ。

ゾンビに恐怖する世界では、どのような人を選ぶべきなのか。

一緒に生きていきたいと思える人。これは絶対条件。背中を預けることができる人。これも必須だ。あとは、死ぬ間際に顔を見たいと思えて、もし片方が死んでしまってもその後も1人で生きていける人であって欲しい。

肉体が死んでも、誰かが私のことを覚えてくれていればまだ完全に死んでいないと思っているタイプなので、共倒れはなるべくしたくない。2度目の死はうんと後がいい。

ゾンビの蔓延る世界では、パートナーを恋心や好意だけで決めるはいささか危ない。これはお遊びじゃないからだ。ならば、私はできるだけ後悔しないよう、運命を共にする相手をこれでもかというほど吟味したい。

生死が掛かる緊急事態。そんなとき真っ先に思い浮かぶ人が私は欲しい。運命の相手が欲しい。人生のパートナーが欲しい。とびきり信頼できる人が欲しい。もし、それが難しいのならば、この人なら身代わりになって死んでもいいと思えるほどに恋い焦がれる人が欲しい。

今日も今日とてゾンビは出ない。それでもいつか、ゾンビが襲撃してきたら…… 私は誰を迎えにいくのだろう。それは恋人か友人か、はたまた一方的に思いを寄せる相手か。いやもしかすると、誰も迎えにいかず1人で生きていこうとするかもしれない。どんな道を選んでもいいが、最後は笑って終焉を迎えたい。

そんなことを考えては、私は真夜中まだほらたさ見ぬ緊急事態に思いを馳せている。

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

眠れない夜に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?