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藝大での日々 1

さて、めでたく?かろうじて藝大に合格し、藝大生となった私。
東京の片隅ではじめての一人暮らしが始まりました。

6人家族て賑やかに暮らしていたので都会での一人暮らしには大いに不安がありました。
足立区の綾瀬に1k六畳間の部屋を借り、東京メトロ千代田線で根津駅で降り、徒歩で上野の山を登り、朝から晩までお稽古漬けの日々です。
私の専攻科、邦楽科能楽専攻では当時、謡、仕舞、囃子謡、四拍子(笛、小鼓、大鼓、太鼓)を履修し、合間に学科の必修科目、これは確か舞台芸術に関わるものが多かったと記憶しておりたす、外国語、教養科目、体育、副科なども履修しなければなりません。
体感的な濃度で言うと都留文科大学の時の2倍はあったように思います。

私は藝大に入るまでは野村幻雪先生のお稽古を一年ほど受けていただけだったので、全ての基礎である謡をほとんど覚えていませんでした。ゆえに謡の上に成立している囃子のお稽古はとてもしんどいものでした。
この点は小さい頃から子方(お能では子役のことを子方こかた と言います)として舞台に出て謡を謡い、謡に接し、知らず知らず謡が体に染み付いている代々のお家の子女はアドバンテージがあるように見えました。

まず謡を覚えて、お腹の中で謡いながらお囃子をお稽古する。これが本当に大変でした。
しかも、私はシテ方専攻なのであくまで仕舞と謡を最も勉強しなければなりません。 

運動神経が悪いのと、お人のなさるのを見て真似るのが下手なので、仕舞のお稽古も難航しました。幸い藝大の第四ホールというところは立派な能舞台があるので他の人がお稽古していなければいつでもお稽古できる、とても恵まれた環境でしたので先生のお稽古の後、先輩方にお稽古をつけていただいたり、アドバイスを頂いたりと田舎から出てきて右も左もわからない私を随分助けて頂きました。

多くの大学がそうなのか、わかりませんが、2年次までは教養科目と学科の基礎科目を履修し、3年次からゼミに入り専門性を追究するのが都留文科大学での生活でしたので、1年次から明けても暮れても能、能、ひたすら能にどっぷりの毎日はある意味カルチャーショックでした。お陰でこの頃少し痩せてしまい、帰省した時親を心配させてしまいましたが、秋にはすっかりリバウンドしてしまいました…笑

また、先述の通りお仕舞のお稽古を本舞台で行うのですが、お稽古の前に下級生が舞台拭きをすると言う慣例がありました。野村先生も舞台拭きは足腰の鍛錬に非常に有用であること、神様が降りて来られるお舞台を清浄に保つことの重要性を教えてくださいました。また、舞台拭きを通して舞台の寸法を体得するのだとも仰っておられました。

観世流シテ方の下級生は四年次まで入学してこず、四年次に入学して来た後輩は1人だったため、結局4年間毎週舞台拭きをすることとなりました。

能の舞台の寸法は三間四方(一間は畳の長い方の辺)ですが、囃子方や後見の座っている後座、地謡の座っている地謡座、幕と舞台を繋ぐ橋掛もあり、全部拭くと全身汗だくになりかなり疲れます。
これも今となれば良い思い出です。


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わたなべみずこ
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