百人一首復習ノート・おかわり(九、一〇)
普段、現代語で短歌を詠んでいるのであって、文語に親しみたいわけでも、文語で短歌を詠みたいわけでもない。そうはいっても、永く日本人の体に染みついたリズムで、教養ある人が一度は親しんだ(無理やり覚えさせられた)歌に接することは、短歌に向き合うためには必要なことかもしれない。
教養としてではなく、あくまで自分の作歌のタネとして、作歌のテクニックという実利を期待して、「百人一首復習ノート」として、百人一首の歌の意味と解釈に触れた。
今度は、二周目として、和歌の後ろに広がる世界、短歌の持つイメージ、詩作の楽しみに触れてみようかと思っている。
一つのnoteには、2首ずつ取り上げる。2首ずつ取り上げる理由は、百人一首がペアが50組あるという作りだから。どうせなら意味のあるペアの形で触れるようにしたい。歌をまとめて取り上げる作業は、連作を作るアイデアにもなるかもしれない。
百人一首復習ノート(九、一〇)
九.小野小町(おののこまち)
花の色は うつりにけりな いたづらに
我が身世にふる ながめせしまに
(はなのいろは うつりにけりな いたずらに
わがみよにふる ながめせしまに)
現代語詠み直し
現代語訳(新作詩)
ちはやふる百人一首勉強ノート
感想
東さんの短歌は、長雨/眺めを残し、元の意味を感じさせるものにした。すごい。タヒさんは、「いたずらに」を透明なことを考える時間とした。詩は、短歌ほどに制約はないので、意味の重複は乗せられるけれど、それだけに留まらない、「いたずらに」過ぎる時間をどう捉えているか? 読者は情景から、その「いたずらに」過ごすことの意味まで想像できるだろうか?
一〇.蝉丸(せみまる)
これやこの 行くも帰るも 別れては
知るも知らぬも 逢坂の関
(これやこの ゆくもかえるも わかれては
しるもしらぬも おうさかのせき)
現代語詠み直し
現代語訳(新作詩)
ちはやふる百人一首勉強ノート
感想
東さん、こちらも現代語に訳しつつ、意味を保存できていてすごい。「これなのか」「別れてもまた」という言葉のチョイスがベストだったのかどうか。橋本治さんの場合、土地の言葉を使って「これかいな」としていた。
タヒさんは、こちらも想像豊かに、「逢う」ということがどういうことなのか、考えている。そっか… 残るものではないのね。確かに出会う人が増えるたびに何かが残っていては、溜まりすぎて身動きが取れなくなるよね。悲しい事実の発見。
※引用図書の紹介
歌人・東直子さんが、現代の短歌として、百人一首を詠み直したもの。
次は、詩人・最果タヒさんが、百人一首を詩として作り直したもの。
競技かるたのマンガ『ちはやふる』の作者・末次由紀さんが、マンガを描くにあたり、取材したメモを再構成したもの。東直子さん、最果タヒさんが詩情を感じたところが、どういった背景や人物像に立脚したものかを確認するために使おうと思う。
いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。