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「選」ばれた歌、「選」ばれなかった歌(2024年4月号)※「百葉集」掲載

短歌結社の会報誌に毎月短歌を投稿している。10首まで投稿できて、採用は5首前後の人が多い。短歌はその歌が選ばれる「選」もフィードバックの一つ。何が選ばれて、何が選ばれなかったか、その基準を自分で考えることで歌を見直すことができる。手書きの投稿という面倒さも受け入れて、毎月送っている。

今月は5首採用。

採用数は今一つだったが、その号の注目の短歌が並ぶ巻頭の「百葉集」に掲載いただいた。

あと、2月に参加した時に書いた歌会記が巻末に掲載されていた。創刊70周年の記念号、いろんな方が何度も目にする会報誌に、いつもより多めに名前を載せていただいたことは素直に嬉しい。

採用された歌(掲載順)

父の死が近いと医者が言ってから LINEの通知に怯え続ける
「ご自宅をまわりましょうか?」霊柩車はローンの残る家を経由す(百葉集掲載歌)
父ならば笑ってくれるネタ話 相手居ぬので霧消するのみ
子が潜りこんだ押入れの奥に未記入の婚姻届見つかる
妻になる人に贈られた歌集は四冊目なり 俵万智なり

選ばれた歌、選ばれなかった歌をみて感じたこと

亡くなった父をネタにしないといけないほど困っているわけじゃないが、一緒に暮らしていない息子のことも、病床にあった父のことも、パートナーとのいざこざも、そのタイミングでしか生々しい感情を記録できないので、人生のイベントはだいたい詠むように決めている。直接的に難しい時は、設定をフィクションにしてでも。でも、そのおかげでいろんな人の目に触れる機会を得ることができた。本人や周りの人が見て気持ちいいものかわからないので、息子や妹や妻には掲載については内緒にしておこうと思う。

投稿した歌

(投稿順、日付は詠んだ日、太字は採用歌、矢印は投稿時に推敲したもの)

12/2土
四年間息子を迎えた部屋の前 子どものおじぎは思ったよりふかく
→四年間息子を迎えた部屋の前 息子のおじぎはふかくてながく

12/4月
父の死が近いと医者が言ってから LINEの通知に毎度怯える
父の死が近いと医者が言ってから LINEの通知に怯え続ける

12/5火
昼過ぎには動かぬ父に会うために朝一番の飛行機を待つ
→昼過ぎにはすでに動かぬ父に会うために朝一番の便を待ってる

12/7木
通夜の席 泣く人の前では涙が出 そうでない人には涙が出ない
→通夜の席 泣く人の前では涙が出 泣かぬ人には涙が出ない

12/8金
「ご自宅をまわりましょうか?」霊柩車の運転席に二度頷いた
「ご自宅をまわりましょうか?」霊柩車はローンの残る家を経由す

12/18月
父ならば笑ってくれるネタ話 相手居ぬので霧消するのみ

12/28木
子が潜りこんだ押入れの奥 空白の婚姻届を置いていました
子が潜りこんだ押入れの奥に未記入の婚姻届見つかる

12/22金
佐賀の天気に「大丈夫?」って聞く相手、誰一人いなくなってしまった

12/23土
「短歌が趣味です」「じゃあ詠んでください」と歌人じゃないのに求められる技術
→「短歌が趣味です」「じゃあ作ってください」と歌人じゃないのに歌求められ

12/24日
妻になる人に贈られた歌集は四冊目なり 俵万智なり

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