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エリックサウス稲田さんが語る、南インド料理とレシピの作り方 #クリエイターフェス

南インド料理専門店「エリックサウス」の稲田俊輔さんを迎えてのnoteイベントを視聴しに、麴町まで行ってきました。

スープ作家の有賀薫さんが聞き手です。

視聴したメモをこちらのnoteに起こしておきます。

セブン-イレブン「エリックサウス監修ビリヤニ」

2023年夏、セブン-イレブンのエリックサウス監修ビリヤニが話題になりましたね。試作してテスト販売、試作してテスト販売、二か月おきに内容を変えてテスト販売を何度か行ったそうです。最初の頃、地域限定版のビリヤニはマニア寄りの味だったそうですが、最終的に販売したバージョンは、初心者とマニアの真ん中を好みに設定したそうです。

マニア向けの味も、初心者向けの味も、要望があればその中間の味のレシピも作ることができると稲田さんは言います。インタビュアーの有賀さんも、稲田さんも、どこにニーズがあるのか普段から考えているそうですが、実際にどのように設定すればいいのか、いつも正解はわからないそうです。

なので、その味の設定は(数々の商品を世に出し、データももっている)セブン-イレブンさんにお任せしたそう。

もちろん「おいしい」という意見が多かったそうですが、それ以外の感想は、

・スパイスがほどほど/お店より刺激が物足りない
・(2つのカレーのうち)右が好き/左が好き
・量が多かった。2回に分けて食べた/少ない

と半々に分かれたようです。

エリックサウスの味

現地の味を持って来るという原則ということ。日本人好みにアレンジすることはしません。じゃあ現地でおいしいと思ったものなら、どんなメニューを持ってきていいかというと、そうじゃありません。日本人の好みに合うものを見つけるまで探すそうです。ある料理をそのままじゃなくても、さまざまなバリエーションの中で日本人に好まれそうなものをピックアップします。

稲田さんは、メニューに関して自分の頭で創作することはしないそうです。
(作曲家というより、DJ)

(有賀)
現地のレシピをコピーするってことですか?

(稲田)
パーツに分解してコピーします。それぞれの工程や要素のセオリーをコピーして、持ち帰って、組み合わせます。組み合わせで、NGのパターンというものがあって、地域が違うもの同士、宗教的なセオリーでNGといった制約もあります。「そんなセオリーなんて無視していいじゃん」って言うと、自分の頭で考えたことになります。そういうことはエリックサウスではしません。現地にあってもおかしくないものを作ります。

もともとは稲田さんがすべてのレシピを作ってたそうですが、クリエイティブな仕事をしたい人のモチベーションがあるので、最近は、メニュー作りも他の人に任せるようになったそうです。

現地の料理を持ってくるので、おいしく食べる方法も現地の方法です。

ミールスの食べ方

エリックサウスはじめた頃は、三角食べみたいな感じで、カレーを混ぜて食べることをしない人も多かったそうです。で、混ぜて食べるとおいしいよ、ということを教えたくて、食べ方のPOPを作りました。

でもそうすると、混ぜすぎる人が出てきたそうです。
皿の上のカレーを全部混ぜちゃうと…… それは………

で、POPも作り変えたそうです。
「混ぜすぎないで! でも混ざっちゃってもいいよ」という内容のPOPにしたそう。

もちろん食べる人が自分の好みを探索した結果、混ぜすぎるならそれはOKです。牛丼に紅ショウガをたっぷり入れて、全部混ぜて食べる人もいますし、それを否定はしないそうです。現地の料理をおいしく食べる提案まで、ということですね。

店舗ごとの戦略

エリックサウスは、店ごとに特色があるそうです。店舗ごとの違いについて稲田さんは、語ってくれました。

稲田:
やりたいことが見つかっても、この店ではできないという制約がまず見つかります。厨房の作り、今のメニュー構成ではこの店舗では作りにくい、などの制約が見つかります。じゃ、次にその制約がない店舗を作って、やりたいことをやろう!

という流れで新店舗が生まれるそうです。

本当は「店ごとの個性があったほうがおもしろい」みたいな回答のほうがかっこいいけど、実際はやりたいことをやるために店舗が増えるというのが実情だそうです。

レシピ本

レシピ本を作るときの目的

読者がその一冊の料理を身に付けたら、その後は読者がオリジナルで料理を作れるようになることを目指しているそう。

本の作り

例えば、レシピ本にある料理の基準を「2人前400g」と仮定すると、先に塩4gが決まって(※)、それに合わせたスパイス量が決まります。次に400gの内訳が決まります。例えば、こんな感じ。

主:160g
玉ねぎ:120g
トマト:80g
その他:40g

で、その中で玉ねぎ量が決まれば、油の量も決まると言った具合です。このルールをレシピ上は見せないけれど、ルールから生まれるレシピを提供するそうです。途中、ちょっとだけルールから外れた例外も混ぜる。そうすると、レシピの裏にあるルールを体感できるし、例外のレシピで違和感も覚えるようになります。

そして、巻末にネタ晴らしするそうです。レシピ通りに作って、無意識にやっていたことが明文化され、基準に沿わないレシピの違和感も巻末で解消する。そっからは自分でオリジナルレシピを作れるようになる! という流れですね。これを稲田さんが作るレシピ本では目指しているそうです。

聞き手の有賀さんも、料理は手でやるものだから、理屈はあとづけがいいと考えていると言います。他の理由として、先に理屈ありきだと本が売れないんじゃないかと有賀さんは感じているそう。普段から手を動かしてる人がレシピ本を買うので、理屈先行だと受け入れられにくいというのがその理由です。

※ただ塩の量は決めの問題

ミニマル料理本

◎第10回料理レシピ本大賞in Japan2023 【プロの選んだレシピ賞】受賞!

有賀:
ミニマル料理を本にした理由は?

稲田:
最初は本になるなんて思ってませんでした。料理は好きだけど、どうしても飽きてしまいます。その中で、調味料を足すより、調味料や工程を引くことのおもしろさを感じています。工程や調味料の中には、その料理を構成する上で、抜いちゃいけないものもあるので、抜き過ぎて失敗することもあります。でも、最小限をはっきりさせれば、応用がききます。まず最低限を作って、あとは皆さんで! という本にしました。

有賀:
現代は、情報量が多すぎるので、ミニマルを知ることが難しいですよね。

稲田:
料理が好きな人は、一番の基本形、ミニマルなものを理解して受け入れますが、(好みのブレがある)家族に出したら、批難ごうごう、なんてこともあります。なのでミニマルな料理に続く、調味料を足したレシピの提案も本の中で行っています。

お店で食べるものはお店で食べればいい。家庭料理は、外で食べられないものが食べられる(だけスパみたいなもの)、というのは、お二人も同意する主張でした。

Q&A

オンラインの視聴者と現地の視聴者のQ&Aを最後に。

最近の稲田さんの本はこちら

有賀さんの最新作はこちら

感想

カレーというより、料理の基本的なことについて、伺った90分でした。自炊をはじめて2年、レシピ通りに作るばかりで理屈がまるで頭の中になく、調理することに飽きてきたところもあるので、ちょうどいいタイミングで、調理する気持ちを刺激するお話を聞けたと思います。ミニマル料理本を片手に、自分でも探求したくなりました。ほんと、おいしく食べれる料理の最小構成ってわからないものですよね。

いい刺激をいただけました。
稲田俊輔さん、有賀薫さん、ありがとうございました。


いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。