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さすがスターバックス

久々にスターバックスに行った。
数人の方の後ろに並び、注文する順番を待っている時だった。

「なにしているの!」

女性の声がした。振り向いた瞬間、母親が女の子を叱っていた。親子だとすぐにわかった。
母親は床に落ちたフォークを拾い上げ、さらに子どもを叱っていた。
その状況から、女の子がフォークを床に落としたのだとわかった。

「だから、よそ見をしないでちゃんと食べなさい、って言ったでしょ!」

店内のほとんどの人がその光景を見ていた。

女の子は下を向き、声を抑えながらも泣いているのがわかった。

母親が立ち上がり、落ちたフォークを片手に持ち、カウンターに向かおうとした時だった。
カウンターから店員が出てきた。
手にはフォークを持っていた。
全ての状況を知っていたのだ。

まだ若い店員だったが、そっとお母さんにそのフォークを渡した。
その時、さりげなくお母さんの差し出す手の肘を支える仕草を見せた。そして何か声をかけていた。

お母さんは、深々と頭を下げ、店内の方にもそっと頭を下げた。

新しいフォークを手にした母親は、娘の隣に座った。
母親は娘に何か話しかけていた。
娘は顔を上げた。
頬に流れる涙もそのまま、でも、笑顔になっていた。
フォークで目の前にあるワッフルを切り、娘の口に持っていく母親。
娘は母親に甘えるように大きな口を開けた。

それだけでは終わらなかった。
カウンターから店員が親子のテーブルに向かった。
そこで差し出したものは、金属のフォークではなく、プラスチックのフォークだった。
このフォークなら何回落としても、何本もありますよ、と言っているようだった。

スターバックスにはマニュアルがない。
マニュアルがないからこそ、その場に応じた対応ができる。

店員のさりげない気配りに店内も温かい雰囲気になった感じがした。
もちろん、その親子も忘れられない時となっただろう。

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