後始末

秋も深まってきた10月の終わりでした。父からの電話でがんが肝臓に拡がって腹水も溜まり、抜いても抜いても溜まるということでした。
父からは期待もなく何もできない感情から発露される言葉ばかりで、私はとりつくしまもありませんでした。

この状況でどうすれば父の感情を少しでも前向きにさせることができるのでしょうか。末期がんの家族をもった方しかこの気持ちはわからないでしょう。
病があろうが運命が悪かろうが心を積極的にすることが大事だ、と敬愛する中村天風師の考えがあります。
ただ、こればかりは当人がそのような気持ちにならないと、外野が叫んだところで心が変わることはありません。何もできない自分がもどかしいと感じた時期でした。
この時こそ、誰でもいいので何かできることがあるのか、誰か教えて欲しいと心底思いました。

運命の11月を迎えます。
後から聞いたのですが、11月に入って父は弟とともに家にある物を結構処分したようです。母の服もそのままにしていたようでしたが、必要のないものを一気に片付けたとのこと。家の名義も弟に変更するなど、自分の命が終わる前に後始末を進めていたようです。

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