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こどもおとな

男の子と遊ぶのは楽しい。例えば口笛を吹けるようになるまで、1日中それだけをやって、ぐったりして眠ればいい。全ての子供がそうだとは限らないけれど、わたしと親しい友人の子だからか、そういう印象がある。もしかしたらこどもらが、しつこいわたしに付き合ってくれていたのかもしれないけれど、それは質問したことがないので分からない。

実は女の子と遊ぶのは苦手だ。わたしは女性だけれど、女の子との遊び方が分からない。女の子はそんなわたしを察してくれて、だいたいは勝手に一人遊びを始めたりしてくれるので救われる。「ねぇ どうおもう?」と聞かれた時は、真面目に返そうと心がけているだけだ。

そういえば小さい頃は、近所だからという理由だけで遊んでいた女の子達がいたけれど、おままごとと言えば大抵、わたしは「お父さん役」で、「いってらっしゃい」と襖の外に追いやられた後は、彼女達の楽しげな声を聞いていただけの記憶がある。親の買ってくれた人形は、ポケットに入れて公園へ行き、頭と手と足を捥いでバラバラにして、砂場の砂をギュウギュウに詰めて持ち帰り、砂だらけで帰って父親に殴られるのだった。当然その後、人形を与えられた記憶も無い。

自分の事も解らないのに、他の人の事など解るはずもないけれど、「女の子」の事は特に解らない。華奢で可愛くて、自信家で傲慢で我儘で大人びている。彼女達のような少女時代は、記憶の中の自分には存在しない。羨ましく思った事もないけれど憧れもなく、同世代の彼女達を別次元の者のとして、ただふわふわと見ていただけだった。それは、今もさほど変わらないように思う。

15年程前に、友人のバーベキュウに誘われた時に、小学4年生の女子とおしゃべりをしていたら、「こどもあつかいしないでいただけます?」と言われ、驚いて何も言い返せなかった。いったい何をしゃべっていたのか覚えていないけれど、その時「君がこどもなんじゃなくて、わたしがこどもなんだよ」、と心で思った事を口に出せなかった自分を、時折こうして思い出す。

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