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みどりとあか

4月の晴れた午後の柔らかな日が、心地よく大きな窓から差し込んでいる。カーテンは無い。12畳ほどの天井の高い部屋。家具は趣味の良いアンティークで、テーブルと椅子とキャビネット、それと大きな棚が置いてあった。わたしはそこで、5歳の女の子と二人で遊んでいた。

彼女は昆虫と植物の研究をしていて、虫を飼っている。5歳児ならすっぽりと入ってしまう大きさの、プラスティックのボックスには、彼女の言うことを聞くという蟻が飼われていて、その蟻を見ていたわたしに、「地球まるごとがアートなのよ」と、彼女は言った。

その家の庭は彼女が手入れをしている。手入れされた庭はつやつやとした芝生の黄緑色で、二人で裸足になって、そこをふかふかと歩いた。足の裏がひんやりと気持ちよかった。裏門を出て、少し先を行くと小さな蓮の池につながっていた。そこだけ靄がかって静かで、蓮の葉の緑も美しく、天国の入り口かと思った。

次の日、ともだちがわたしの家に同居する初日で、ワタワタとした時間が過ぎる。なんとか夜までには一段落してほっとしていたら、ともだちのために用意した部屋で寝れば良いものを、わざわざわたしの部屋に布団を運び込んで寝ようとするので、まだ片付いなかったのかと、ともだちの部屋を覗きに行くと、壁紙も机も何もかもが赤でコーディネートされていて、ハンガーラックに掛けられた大量の服も、ちらほらと黒が見える程度に赤で埋め尽くされていた。「すごい」と思った。

緑の夢を見た次の日に、赤の夢を見た。

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