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死ぬほど嫌いだった

死ぬほどうまいキュウリのどぼ漬けを密売している
三条西洞院の看板のない八百屋に寄った帰り、
久しぶりに「麺や 高倉二条」さんの暖簾をくぐった。
今では京都でも当たり前になっている豚骨魚介スープや
全粒粉麺のパイオニアとして、健康志向ブームもあって
一躍脚光を浴びられてから久しく経つ。
当時、嫁と一緒に通い続けた産科が近くにあったこともあり、
週に1、2回はお邪魔していたように思う。
運良く行列前に座ることができ、つけ麺ではなくいつもの
”らーめん”に煮玉子をトッピングしてオーダーした。
以前はチャーシューや白ネギは盛り付け前にバーナーで
加熱されてたが、今ではカウンター近くの七輪の炭で
ジジジと炙られているのが目にも愉しい。
厨房の若い男女スタッフの服装はカジュアルで、
臭い、汚い、きつい筈だったイメージからは程遠く、
お洒落でさえある。
キャップ帽のお兄さんから供された一杯の
見覚えのある濃い色合いが懐かしい。
一口スープを飲んでみると、そうそう、まずは
酸味のある醤油がツンとくる。
煮干の味がする酸っぱいスープ。
はじめはこれが死ぬほど大嫌いだった。
ところが無化調にこだわった素材の説得力に
舌や身体は嘘をつけず、必然的に成り得たこの味に
慣れてしまうと、癖になってやめられなくなってしまっていた。
香ばしい全粒粉の麺を啜り終わった時、
来る前よりも健康になった気にさせる稀有な一杯。
支店の「和醸良麺 すがり」さん共々、コアなファンを
虜にしているお店の一つである。

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