見出し画像

カフェ店員の私がお客様に恋してもいいよね?

いつも、この時間に来るお客さんがいる。
名前は確か・・・伊藤さんだ。
聞いた訳ではないけど、電話でちょこっと聞こえた。
私は店員なので盗み聞きなんてしない。けどあの時は…聞いちゃった。


あっ、もうすぐ来る時間だ。

準備しなきゃ。


田村「いらっしゃいませ」
伊藤「コーヒーひとつ、店内で」
田村「他に食べ物はいかがでしょうか?」
伊藤「いや」
田村「ありがとうございます。合計金額が380円です」

いつの間にかカルトンの中にはちょうど入っていた。

田村「出来上がりましたら、席にお持ちしますね。」
伊藤「レシートはいらんよ」
田村「ありがとうございます」

私は、コーヒーを作り、伊藤さんが座っている席に持って来た。

田村「お待たせしました。」
伊藤「ありがとう」

いつも通り新聞を読みながらぶっきらぼうに返される。
慣れたんだけどね。昔は怖かった。謎の雰囲気が出てるんだもん。
でもその人ね、イケメンで優しいことに気付かされたんだ。
今となっては好きでたまらない。
もちろん、私のことどう思っているのか知らないけどね。でも1つだけ分かることがある。指輪は付いていなかった。

でも、私が好きなんていえるはずもなく。時間は過ぎていく。



私、田村真佑が大学生だった頃の話。

私は、山下くんと付き合っていた。美女美少年カップルとして有名だった。もちろん同棲していた。山下くんがしようって言われたからね。

ある時だった。真佑は山下くんの誕生日プレゼントを買いに買い物をしていた。
田村「あっ、あそこにヤマいる。驚かしてやろっ」

そっと近づいて〜

田村「や〜マ〜、わっ‼︎」

沈黙が続いた。

田村「えっとぉ」
山下「えっ」
田村「何しているの?」
山下「真佑何でここに?」
田村「ダメだった?」
山下「え、うっううん」
田村「てかさ、何で女の子といるの?」
山下「えっと、これは何というか。」
田村「まさか浮気したの!?あんだけ好きって言ってくれてたのに。どういう事?何が私のダメだった?ダメな所があれば直すのに。何で?」
山下「これは、違くて」
田村「何が違うの?あの女の方がいいの?もう、別れる。今日家から出ていくから」
山下「いや、待って」
田村「何?もうあっちに行きなよ。今日だって、家から出ていく時すごい服気にしてたじゃん。どうせあの女とデートだったんでしょ」
山下「違うって」
田村「何が違うの?」
山下「えっと、これは何というか。言い表せないというか」
田村「そもそもあの女誰?」
山下「えっと、友達」
田村「嘘つかないで。アンタは、嘘つく時絶対に頭を掻く」
山下「たまたまだよ」
田村「もう、知らない」

そう言って私は2人から走って行った。この時、山下くんは追いかけて来なかった。多分あっちの女の方に行くことを選んだんだ。そう思った。


私は、このまま一緒に同棲してた家に帰らず、友達の家に居候することにした。
しかし、それもまた友達は仲直りするように言って来ることと旅行に行くからと言う理由をつけられたのでその友達の家も去ることにした。この間も山下君からの連絡はなかった。

田村「アイツの家に行って私の荷物を取って来なくっちゃ。新しい家も見つけなくっちゃ」

私は、1週間かけて、山下くんがいない間に荷物の整理をした。そして、次に住む家も借りた。


引越し当日、アイツと住んでいたマンションの前に来ていた。

家の中に入ると、私が詰めた段ボールがなかった。

田村「昨日まであったのに。何で」


真佑はその場で泣いた。

段ボールがあったそばに置き手紙があることに気づく。

そこには、山下くんからではなかった。

捨てられた元彼女へ
えっと、田中さん?村田さん?でしたっけ? 
名前なんてどうでもいいんですけど、荷物が邪魔だったので捨てさせてもらいました笑。今日からこの家に住むことになったので💗
たまたま昨日来たら、段ボールに全部入っていたので山下くんが捨てる用にやったのかなと思って笑。段ボール4個とかだったんで昨日捨てに行きましたよ笑その処分代は払ってくださいね。そこに領収書置いとくんで。ちなみにこのことは山下くんは知りません。言っても無駄だと思うけど。あっ、服は良さそうなものがたくさんあったんで売りましたよ。ちなみに結構いい値段でした笑。そのお金は一応、元彼女のということで私にとって触れたくない汚いお金なのでそこに置いときますね。多分今日、引越しされるそうなので、置き手紙をと言うことで バイバイ
                                史緒里より


田村「この魔女め」


近くに、領収書とお金が入った封筒があった。領収書には10,000円と書かれており、封筒には40,000円ちょっとが入っていた。

しかし、引っ越しの荷物も無くなってしまったので当日の引越しのキャンセル料として2万円程取られてしまった。

この何もない悲しさで新しい家に行く気がしなかった。

7月だったともあって、土砂降りの雨が降ってきた。

真佑「最悪。もう死んじゃいたい」

私は、近くにたまたまあったバーに入った。
とてもいい雰囲気だった。

バーテンダー「いらっしゃいませ」
バーテンダー「雨で濡れているようなので、大きなタオルを用意させていただきますね。」
田村「すいません。ありがとうございます」


バーテンダー「何に致しましょうか?」
真佑「ジントニックで」
バーテンダー「少々お待ちください」

バーテンダー「こんな雨の中傘を刺さずにどうかされたんですか?」
真佑「まぁ、はい」
バーテンダー「話されるとスッキリしますよ。聞きましょうか?」
真佑「もう、どうだっていいことなんです。」

いつの間にか真佑の目からは涙が出てきた。

ようやく泣き止んだ頃

バーテンダー「大丈夫ですか。」
真佑「は、はい。話聞いてもらいませんか?」
バーテンダー「何なりと」

真佑はそう言って、入っていた飲み物を飲み干して今まであったことを話し始めた。
バーテンダーは、静かに話を聞いてくれた。

話が終わった頃、バーテンダーは何も言わずあるカクテルを出してくれた。

真佑「これは?」
バーテンダー「メリーウィドウです。」
真佑「なぜこれを?」
バーテンダー「カクテルには、それぞれ意味がつけられているんです。その中で、メリーウィドウはもう一度素敵な恋をと言う意味が込められています。あなたの人生はまだ始まったばかりです。本当の愛には結末という言葉は存在しません。あなただけの人生という物語にオチをつけようとする人はこの先の物語は上手く進まないと思います。失恋もストーリーのほんの一部にすぎません。より良い終着駅に向かってまた新たなレールを引いていきましょう。」
真佑「ありがとうございます。」
バーテンダー「すいません。こんな長々と言ってしまい。」
真佑「いや、いいんです。元気出ました。」
バーテンダー「それは、良かった。人生、楽しんだもん勝ちですよ。」
真佑「そうですよね。がんばります。」

真佑「ごちそう様でした。」
バーテンダー「今日は、タダでいいですよ。」
真佑「それは、こんなに話も聞いてもらったのに」
バーテンダー「僕の奢りです。また何かあったら、来てくださいね」
真佑「お言葉に甘えて」
バーテンダー「傘お貸ししますよ。風邪引かないようにゆっくり休んで下さい。」
真佑「何から何までありがとうございます。」

次の日、真佑は傘を返しにバーに向った。
真佑「昨日は、ありがとうございます。」
バーテンダー「いえいえ」
真佑「また、相談乗ってくれますか?」
バーテンダー「いいですよ。それが僕の仕事なんでね。」

そう言って、真佑は、何度か行くようになった。
今日あったこと、友達との思い出、そんなどうでもいい話もするようになった。
いつの間にか、真佑はバーテンダーのことが好きになっていた。

ある時、いつも行っていたバーが潰れてしまっていた。

田村「は〜店が潰れてしまったんだ。これからどうしよう?またどこかで逢えないかな?」

そんな独り言を言っていた。



今日は、働いていたカフェは、雨も降っていたためにお客もあまりいなかった。

チリンチリン

1人の男性が入ってきた。
高そうなコートを着た高身長の男性。とても手が震えていたことがわかった。

男性「コーヒーひとつ、あとホットドック」
田村「ありがとうございます。合計金額640円です」
男性「分かりました。すいません今手持ちが500円しかないので、コーヒーだけにしてください。」
田村「いえいえ、私が持ちますよ。」
男性「いいんです。コーヒーだけで」
田村「分かりました」

田村「お待たせしました。コーヒーとサンドウィッチです」
男性「いやいや、頼んだのコーヒーだけですよ」
田村「いや、いいんですよ。私がしたいだけなので」
男性「わざわざ、すいません。」
田村「こういうことを聞くのはおこがましいかも知れないですけど、話なら聞きますよ。」

そう言って、店の看板を closedにした。

男性「私の名前は、中田です。」
田村「中田さんですね。何かあったんですか?」
中田「実は、最近まで店を経営していたんです。」
田村「潰れてしまったんですか?」
中田「実は…はい」
田村「理由を聞いてもいいですか?」
中田「はい。店の繁盛で言うとお客はは絶えることはなかったんです。」
田村「そんだけ繁盛していたら、そうなることはないはずですね。よっぽど、この店の方が潰れそうですよ。アルバイトしている身が言えないですけど。」
中田「それだけ、あなたのような人がいるおかげじゃないですかね。」
田村「そんな私がね」
中田「アルバイトしている人が店を勝手に閉めちゃいけないと思うんだけど」
田村「多分、今日は誰も来ないと思うんでいいんです。」
中田「そうですか。」
田村「この話は、置いといて話の続きしてください。」
中田「最近になって、地主が変わったんです。そしたら、ここの地価は上がっいるから今までの倍は取ると言い出したんです。」
田村「それは、最悪ですね。」
中田「最初は、地主さんと交渉しても変わらなかったんです。しかし、昨日になって、地主さんがもう耐えられないと言って倍以上の値段を求めて来たんです。最初は払えないと言って断っていたんです。そしたらどんどん喧嘩になってしまったんです。」
田村「。。。」
中田「そしたら、今日ですよ。開店準備をしようと店に向かったんです。恐らく地主さんだと思うんですけど。店が何かしらの重機で壊されていたんです。」
田村「。。。」
少しの間沈黙が続いた。
中田「こんな話しない方が良かったですよね」
田村「私から聞いたのに、すいません。」
中田「これからどうすればいいですかね」
田村「なんの店やっていらしたんですか?」
中田「ここと同じようなコーヒー屋さんです。」
田村「ちなみに、お金って回収できたんですか?」
中田「一応」
田村「良かったですね。」
中田「は、はい」

真佑は、目を見開き机を叩いて立ち上がった。

田村「私も手伝うんで、新しい店違う場所に作りませんか?」
中田「えっ!」
田村「本気です。今大学4年生なんですけど、ひとつも内定もらってなくて」
中田「はぁ」
田村「私、就職留年することになるんです。どうか雇ってください。」
中田「いや、それは。」
田村「本気です。」
中田「分かりました。やりましょう。」

そう言って2人は手を取り合った。

真佑と中田は、カフェを経営することになった。




やっとの思いでカフェをオープンさせることができた。

中田さんの昔からの常連さんも来てくれた。

常連1「中田さん。また、オープンできてよかったね。みんないつものね」
中田「はいよ。アメリカンコーヒーとホットドックね。」
常連2「ここのコーヒーとホットドックは日本1やからね。」
常連3「ほんま。ほんま。他ののも絶品やけどな。」
中田「いえいえ、また来てくださりありがとうございます。」
常連3「ええんやって、中田さんがオープンしたら、初日にどこでも飛んで行ってやるわ」
常連1「突然やんやけど、あの子って娘さんかなんか?」
常連2「ほんまや。かわええなぁ」
常連3「うちの息子と結婚してほしいわ。」
中田「ここのオープンを手伝ってくれた子でして。」
常連2「そんなんや。つまり彼女かなんかか。」
常連1「店長に好く女の子っているもんなのかなぁ。」
常連3「あの子に申し訳ないけど、変わり者なんやなぁ」
中田「彼女ではないですよ。前の店が失った時に救ってもらっただけやって。」
常連1「ほんまかいな。」
常連2「店長が言うならほんまかと思うけど。」
常連3「これからもお世話になるんやし、紹介してや。」
中田「ええよ。ちょっかいだけはだすなよ。」
常連2「分かっとるよ。」
中田「田村さ~ん、ちょっと来てくれる?」
田村「は〜い。お客さんのサンドウィッチだけ出してからいきま~す。」
中田「了解。」
常連3「店長、前の店でメニューにサンドウィッチなんてなかったよな。」
常連1「ほんまや。」
常連2「おい、それだけやないぞ。メニューにいろいろなもの追加されてるぞ。」
常連3「どれどれ。」
常連1「パンケーキにいろいろな種類あるし、女性向けのような飲み物も増えとる。」
中田「はい、あの子が、店長の絶品だからインスタ映えするような料理を出した方がいいと念を押されまして。」
常連1「ええやん。2号店も夢やないかもな。」
田村「ただいま来ました。中田さん。」
中田「おう、紹介するわ。ここのアイドル的存在の田村真佑さん。かわいいでしょ。」
田村「田村真佑です。最近大学を卒業しました。よろしくお願いします。」
常連2「おう。田村さんよろしくね。」
常連1「俺らも紹介してくね。」
常連3「右から常連1、2、3ね。これからよろしく。」
田村「はい。」
お客「すいませ〜ん。注文お願いします。」
田村「は〜い。忙しいので、中田さんも常連さんとだべってないで仕事してくださいね。」
中田「ほい。」
常連2「ほな。そろそろ俺らは行くわ。会計は3人で、何円?」
中田「合計金額が2610円ですね。」
常連1「おれが払うよ。やべっ、財布に5000札しかねぇ。5000円で。」
中田「ありがとうございます。お釣りが2390円です。」
常連1「いいよ、お釣りは。これからもよろしく頼むよ。忙しい時にすまない。」
常連2「中田さん、ありがとう。」
常連3「中田さん、これからもよろしく。そんじゃ」

オープンして落ち着いてきた7月の下旬の頃だった。


オープンして落ち着いてきた7月の下旬の頃だった。


とても怖い雰囲気の男性が入ってきた。サングラスをかけ、白いシャツを着ており、黒いカーディガンを肩掛けしていて、ごっつい時計をしている男性だった。

田村「いらっしゃいませ。店内とテイクアウトどちらにしますか。」
??「店内で」

??は、メニューを見て聞いてきた。

??「おすすめのコーヒーってありますか?」
田村「えっと、はい。アメリカンコーヒーです。」
??「じゃ、それで」
田村「他に食べ物はいかがでしょうか?」
??「何かおすすめあるの?」
田村「サンドウィッチです。」
??「それも1つ」
田村「かしこまりました。合計金額が、870円です。」
??「1000円で」
田村「かしこまりました。お釣りが130円です。」
??「いいよ。学生なんだろうから、休憩時間に飲み物でも買っておくれ。」
田村「結構です。私は、学生でもありませんので、受け取れません。」
??「いいんだ。まだ、若いんだから年上の言うことは聞いとくんだぞ。」
田村「ありがとうございます。注文の商品は、出来次第席に持ってさせて頂きます。」
??「そうか。よろしく頼むよ。」

真佑は何か聞き覚えのある声だと感じた。
でも思い出すことは出来なかった。

この不思議な男性は、この日以来毎日くるようになった。

田村「いらっしゃいませ。」
??「アメリカンコーヒーひとつ。」
田村「他に食べものはいかがでしょうか。」
??「いや、いいよ。後でまた注文してもいいかね。」
田村「大丈夫ですよ。」
??「そうか。ありがとう。」
田村「いえいえ。合計金額が380円です。」
??「500円で。お釣りは要らんよ。」
田村「分かりました。後で、席に持っていきますね。」
??「ありがとう。」

新聞を見ながら、ぶっきらぼうに返される。
そして、電話して、パソコンで仕事していた。そして、夕方になると出ていく。

こんなやりとりが毎日続いた。

ある日のことだった。

田村「いらっしゃいませ。」
??「アメリカンコーヒーひとつ。」
田村「他に食べものはいかがでしょうか。」
??「いつも通り13時ごろにサンドウィッチ持ってきてくれんかね。」
田村「大丈夫ですよ。」
??「そうか。ありがとう。」
田村「いえいえ。合計金額が1000円です。」
??「ぴったしね」
田村「ありがとうございます。後で、席に持っていきますね。」
??「ありがとう。」

田村「お待ちしました。」
そう言って、真佑は、コーヒーを置いた時にこぼれてしまった。

カッターシャツからスーツ、バックまでコーヒーがついてしまった。
??は、自身のサングラスを外して自分の状況を見る。

??「おうおう。これはこれは。」
田村「すいません。タオル持ってきますね。」

田村「すいませんでした。大丈夫ですか。クリーニング代は出させて頂きます。」

??「いいよ。この服はもうボロボロだったから、捨てるつもりだったんだ。きっかけを作ってくれてむしろ感謝しているよ。」

そう言って、まだカップに残っていたコーヒーを飲み干す。
??「もう一度払うからもう一杯コーヒーちょうだい。」
田村「すいません。お金の方は入りませんので、少々お待ちください。」

そう言って、厨房に真佑は駆け込む。

えっ、ウソでしょ。あの人、私が好きなバーテンダーの人じゃん。なんでここに?バーの店から結構離れているのに。なんで今まで気づかなかったんだろう。信じられない。もう、あんなこと好きな人にしちゃったし、目も合わせられないよぉ。

厨房で、真佑の顔は真っ赤になっていた。
中田「田村、コーヒー溢しただってな。なんで、そんな顔が赤くなってんだ。熱でもあるなら帰っていいぞ。あの人の対応はしとくから。」
田村「いいえ、なんでもないです。私に責任があるので自分で対処します。」
中田「最近、お前は働きすぎだ。今日くらい早く帰って休めよ。忙しいのに休みあげられなくてすまない。」
田村「大丈夫です。」
中田「そうか。分かった。体調管理だけは怠るなよ。」
田村「はい。」

田村「先ほどは申し訳ございません。」
??「いいよ。顔赤いけど熱でもあるのか?」
田村「だ、大丈夫です。ご迷惑かけてしまいすいませんでした。」
??「いいよ。はい380円渡しとくよ。」
田村「いえいえ。大丈夫です。私に責任があるので。」
??「そうか。分かった。どうもありがとう。」
田村「ごゆっくりお過ごしください。」

これだけ言うと、駆け足で厨房に戻る。

大丈夫かなぁ。でも迷惑かけちゃったし嫌われてもしょうがないよね。なんであんなに優しく接してくれるのぉ?お客と店員という立場であることは変わってないのに。もっと好きになっちゃうじゃん。助けてもらうばかりだよぉ。

田村「うわぁぁぁぁぁ〜」
いつのまにか厨房で叫んでいた。

中田「大丈夫か。もしかして、あの男性のことが好きだったのか。ハハッは〜ん。」
田村「バカにしてください。あの方には言わないでくださいよ。分かりましたか?」
中田「それは、君次第だな。中々踏み込めないならキューピットになってあげるけど?」
田村「もう。バカバカバカァ」
真佑はそう言いながら、中田さんのことを叩く。
中田「ははっ、青春やなぁ。応援しているよ。」
田村「ふん。もう知らない。今日は、あの方にサンドウィッチだけ届けたら、帰ります。」
中田「もう大丈夫だよ。帰っても」
田村「中田さんが何かするかもしれないので。あの方は、これからずっと私が担当しますっ」
中田「分かったよ。」

時間通りに??にサンドウィッチを届けにいく。
田村「お待たせしました。サンドウィッチです。先程はすいませんでした。」
??「いいよ、いいよ。さっきは大丈夫かい?」
田村「大丈夫です。心配かけてしまいすいません。」
??「どうってことないよ。あなたの身に何かあったら、大変だからね。」
田村「ご、ごゆっくりお過ごし下さい。」

駆け足で厨房に戻る。

えっ、さっきあの人『あなたの身に何かあったら、大変だからね』って言った?もしかしてだけど。あっちもす、好き?そんなことある?普通あんなこと店員に言わないよね?えっ、やばいもっと好きになりそう。

田村「店長、今日はもう帰ります。」
中田「そうか、そうか。ゆっくり休みな。」

私真佑は、恋患いに陥り、休暇を含めて、2週間休むことにした。

2週間後

マスターの中田さんから2週間起きたことを聞いた。
ほとんどが??についてだったが。

??さんは、2週間も来なかったのを心配して体調が大丈夫なのか聞いてきたこと。
中田さん曰く、この2週間のサンドウィッチは美味しくなかったらしいということ。
他のお客さんから、真佑がいなくて残念がっていたこと。
まとめると、この店で真佑は、マスターのコーヒーより真佑の存在らしい。だから、これからもよろしくお願いします。そんなことを言いたかったみたい。

田村「いらっしゃいませ。」
??「おっ、もう体調平気?」
田村「はい。」
??「コーヒーこぼした後、来なくなったから責任でも感じてやめちゃったのかなと思ったよ。」
田村「あの時は、すいませんでした。」
??「いいってことよ。あとね君が作っているサンドウィッチは格別だと気づいたよ。」
田村「恐れ入ります。」
??「多分、マスターには怒られるけど、まずかった。言っちゃダメだよ。」
田村「はい。今日もいつも通りで大丈夫ですか。」
??「うん。いつもの時間によろしくね。」
田村「かしこまりました。」
??「これ、お金。」
田村「ありがとうございます」

ふぅ。まだ、始まったばかりなのに、疲れちゃった。なんて優しいの?あ〜もう嫌い。

こうして、また真佑の??への愛は深まるのでした。

田村「お待たせしました。コーヒーです。」
??「おう、ありがとう。」
プルルル
??「あっ、電話だ。もしもし、はい。伊藤です。………」

あっ、伊藤さんっていうんだ。そこで、真佑は、相手の名前を知った。
伊藤さん、仕事?の姿かっこいいな。

そして、またいつも通りに日常が続いた。この間も真佑の恋は大きくなっていた。


ある日夕方

田村「ありがとうございました。」
伊藤「お疲れ様〜」

お皿を片付けるために、伊藤さんが使っていた机に行くとスマートフォンとスケジュール帳が置きっぱなしだった。

すぐに真佑は追いかけた。


田村「伊藤さ〜ん。お忘れ物がありますよ〜」
伊藤「おう。ありがとう、ありがとう。お礼したいから、時間あったりする?」
田村「えっ、はい。ありますよ」
伊藤「んじゃ、仕事終わってからこの場所に来てくれる?」

そう言われて、ひとつ名刺をひとつ渡された。
そこには、恐らく伊藤さんが経営しているバーだった。

田村「わ、わかりました。」
伊藤「ありがとう。待っているね。」



真佑は、仕事の終わりに言われた場所に向かった。
とても雰囲気が良いバーだった。何か見覚えさえ感じた。
真佑は、そっ〜とドアを開けて入る。

伊藤「おっ、来た来た。」
田村「伊藤さ〜ん、お待たせしました。」
伊藤「とりあえず、何か飲みます?」

そういいながら、バーのスタンド看板を消し、ドアの鍵を閉める。
伊藤「2人きりで話したかったんだ。」
田村「私もです。」
伊藤「とりあえず、飲みやすいものを用意しますね。」
田村「ありがとうございます。」
伊藤「とりあえず、これを」
田村「これはなんですか?」
伊藤「スクリュードライバーです。とても口当たりのいいものですよ。」
田村「本当だ。すいません先に飲んじゃって」
伊藤「いいですよ。そうやって美味しそうに飲んでくれた方がこっちも気分がいいのでね。」
田村「一緒に飲みません?こっちで」


伊藤「いいですよ。何か不思議な感覚です。いつもはあっち側にいるので」
田村「そうかもしれないですね。」
伊藤「こうやって、2人で話すのは前のバー以来ですね。」
田村「覚えたんですか?」
伊藤「そりゃ、もちろん。雨の日に失恋したって来た日は忘れませんよ」
田村「嬉しい、そういや、なんで前のバー潰れちゃったんですか?」
伊藤「いろいろありますけど。理由をひとつだけ挙げるとしたら、このままじゃダメだと感じたからです。」
田村「具体的に教えてほしいです。毎日というほど行ってたのに、勝手になくなるから」
伊藤「それは、すいません。他の方にはここにできることは言ったんですけどね。」
田村「ではなぜ?」
伊藤「明日、来たら教えますよ。こんな遅くに女の子を帰らせる訳には行きませんから。これ、タクシー代です。」
田村「分かりました。そうします。」
真佑は、タクシー代1万円を受け取り、バーに出て行った。

次の日

真佑は、仕事終わりにバーに向かった。
この日は、バーが休みだったみたいだった。

真佑は、ドアを開ける。

真佑「お邪魔しま〜す」
伊藤さんが奥から出てくる。
伊藤「今日もお疲れ様。何かのみもの入れますね。」
田村「それじゃ、シェリー酒にします。」
伊藤「かしこまりました。今夜の予定は?」
田村「何もありませんよ。」
伊藤「分かりました。」

2人は、同じものを飲む。

田村「昨日の話とはなんですか?」
伊藤「昨日、薦めたのは、何か覚えてます?」
田村「スクリュードライバーでしたっけ?」
伊藤「はい。そうです。カクテルのそれぞれ意味が違うのはご存知ですか?」
田村「はい。伊藤さんに教わりましたから。」
伊藤「飲まれた意味は知っていますか?」
田村「さぁ〜?知りません。」
わざとらしそうに答える。
伊藤「今日、頼まれたものの意味は?」
田村「なんのことでしょうかね。」
伊藤「こんなにも我慢してたのに。」

そう言って、真佑にキスをした。

田村「もっと来てください。」

伊藤「もう、誘ってきたのはそっちなんですかね」

2人は、大人のキスをした。


伊藤「僕と付き合いませんか?」
田村「いいですよ。私も好きだったんで。」
伊藤「両思いだったんですね。」

もう一度2人は、キスを重ねた。

この後の2人は、どうしたのかはご想像にお任せします。


カクテルの意味

このストーリーには3つのカクテルが出てきます。
カクテルには恋愛要素を含んだ意味を持つものが多くあります。その中でも今回使ったものは有名なものです。今回挙げた3つのカクテルの意味をそれぞれ説明載せときます。ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。


メリーウィドウ もう一度素敵な恋を

アルコール度数24
辛口カクテルであり、薬草系の芳香が漂う


スクリュードライバー あなたに心を奪われました

別名女殺しとも言われている。
アルコール度数13
ひとことで言えばオレンジジュースのような感じです。とても飲みやすいため女はいつのまにか酔ってしまうことから女殺しという異名も。


シェリー酒 今夜はあなたに全てを捧げます

実はシェリー酒というカクテルはありません。
シェリー酒は製造方法など品種によって名前が変わります。それによって、アルコール度数や甘さ辛さも変わって来ます。全ての総称の名前がシェリー酒と言います。

飲んでみたい人はぜひバーに!
ある程度のお作法もありますからそこは自分でチェックしてみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?