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量子黙示録

2019年10月10日のCOBRAの記事「The Silver Trigger」で紹介された記事「‘QUANTUM APOCALYPSE’: HOW ULTRA-POWERFUL COMPUTERS COULD CRIPPLE GOVERNMENTS AND EFFECTIVELY BREAK THE INTERNET」を翻訳しました。


”それをはるかに上回る現在の金融システムへの脅威は、量子スーパーコンピューターです。

中央銀行や他の金融機関に保存されている金融データを保護する暗号をすべて簡単に破ることができます。

量子コンピューターは、すべての軍事級の暗号を破ることができて、理屈上は現在の金融システムを乗っ取ることができる量子コンピューターがすでにここに存在しているのです。”


元記事:


「この世界の金融、商業、流通、通信、交通、工業、電気、政府、保険、なんでも、全てがこれまで通りに機能しなくなるでしょう。」


あと数年ほどで、超々高速コンピューターを使用できる時代になります。その新型コンピューターとは、量子コンピューターです!

現代のコンピューターが抱えている問題を全て解決し、私達のコミュニケーション方法を一新することになるでしょう。

しかし、これまで不可能と考えられていた問題全てを解決できるということは、現行のインターネットを事実上破壊できる潜在性も秘めているということになります。

Googleは最近、この分野の研究において大きな進展を遂げました。それによって量子コンピューター一般導入への道は劇的に短くなり、現実味を帯びてきたのです。

最近漏洩した研究論文によれば、Google社の量子コンピューターは最先端のスーパーコンピューターでも1万年かかる計算を数分で終えたとして、量子コンピューターが既存のコンピューターより優れていることを示す「量子超越性」を実証したとされています。

量子コンピューターの理論は1982年、物理学者リチャード・P・ファインマンによって提唱・体系化されました。量子物理学の特異性質とコンピューター科学を組み合わせることによって、従来のコンピューターよりも指数関数的に超高速な処理能力を実現するというものです。

従来ではビット(データの保存と転送に使用される「1」と「0」の羅列)を使用してきましたが、その代わりに量子コンピューターは「量子ビット=キュービット」を使用します。

量子ビットは「量子重ね合わせ」の状態で存在しています。簡潔に言えば、「1」と「0」が同時に存在しているかたちということです。

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これまでは「1」と「0」のどちらかの状態(バイナリ状態)に制限されていたところが、量子コンピューターのキュービットによって制限から解放されることになります。それにより、従来のコンピューターよりも処理能力は指数関数的に速くなるのです。

量子コンピューターを機能させるためには、キュービットを極低温(絶対零度である-273℃)の環境下で保存する必要があります。そのため開発には非常に高いコストがかかり、非実用的と考えられてきました。そこへGoogle、NASA、CIAなどが開発を進めようと試みてきたのです。

今回リークしたこの論文の言っていることが正しいとすれば、Google社は現在この世界革新的コンピューターの構築をリードしている先駆者ということになります。何しろスーパーコンピューターでも1万年かかる計算を200秒で解いたのですから。

しかしこのような大きな力を扱うには、それ相応の大きな代償が伴うのかもしれません。サイバーセキュリティ対策の専門家ティム・カランはこれに対し、「量子黙示録<クアンタム・アポカリプス>」が到来する可能性があると警告を呼びかけました。

例えばWhatsAppなどの一般普及しているメッセージアプリから、アマゾンでのオンラインショッピングまで、全ての暗号化技術を量子コンピューターでいとも簡単に突破できてしまうのです。これらで使用されている暗号化方式にはRSAやECCなどがあります。これらの技術により、サイバー犯罪者、ハッカー、スパイ機関が我々のメッセージのやり取りや取引の詳細が見られるのが防がれてきました。ですが、量子コンピューターが実用化すれば、そのような暗号も意味が無くなってしまいます。

政府機関、教育機関、ビジネス、医療機関などのデータは全て量子コンピューターで侵害されてしまうでしょう。この暗号の解読も一瞬で終わらせてしまうからです。

カラン氏は我々インデペンデント社のインタビューに対し、次のように回答しました。「恐らく10年から15年以内に量子コンピューターがRSAとECCを突破する時代が来るでしょう。この世界の金融、商業、流通、通信、交通、工業、電気、政府、保険、なんでも、全てがこれまで通りに機能しなくなるでしょう。」

さらに、ビットコインのような暗号通貨も量子コンピューターによって機能しなくなるでしょう。

ビットコインの技術的基盤であるブロックチェーン・ネットワークはハッキング対策として高度な暗号化を用いていますが、量子コンピューターはその保護力も無効化してしまうのです。

英国のサイバーセキュリティ企業であるPost Quantumも、「世界初の量子コンピューターが登場した日がビットコインの終焉日となる」と語っています。

しかし、この量子黙示録に対する解決策も、模索中ではありますが存在しています。それが「量子耐性アルゴリズム」です。

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このセキュリティの新手法開発を主導しているのがアメリカ国立標準技術研究所(Nist)です。20種類以上の量子耐性アルゴリズムがこの研究所によって精査されているところですが、そのうちの一つでも実際に耐性があるかどうかはまだ発表されてはいません。

最大の課題となっているのは、量子コンピューターによるサイバー攻撃だけでなく、この新暗号化技術を従来のパソコンやスマートフォンと連動させることなのです。

「量子コンピューターは従来のバイナリー方式とは全く異なる方式をとっているので、量子コンピューターからの攻撃だけでなく従来のサイバー攻撃にも、二重で防御方法を用意しておく必要があるのです。」

カラン氏は最短でも10年以内に量子コンピューターが実用化される日が来ると言っていましたが、もっと早いと予想する声もあります。

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カナダのウォータールー大学の量子コンピューティング研究所では、この「黙示録の日」がいつになるかを計算で割り出そうとしています。

研究所の設立者の一人ミケーレ・モスカはこの日を「Z日付」と呼んでいます。2016年時点では、それは2026年までの間に15%の可能性で来るとされていました。最近のGoogle社の研究によって、そのオッズは高まっていると言えるでしょう。

モスカ氏の研究論文は人類に対する恐ろしい警告によって締めくくられています。量子コンピューターが世界を変えるなら、まず世界を救う方法も見つけなければなりません。

「人類は量子力学によって多くの問題を解決できるようになる。ただし、その前に量子耐性暗号ツールを開発して、サイバーセキュリティ壊滅の黙示録に備えておく必要があるのです。」


Anthony Cuthbertson
@ADCuthbertson
Sunday 6 October 2019 23:49


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