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雑記【 地獄誕生秘話 】

天国と地獄をご存知だろうか。
運動会のアレではない。
誰しもが二択で行くという、あの天国と地獄である。

小学生の頃、「天国、地獄、大地獄」という遊びがあった。
単純だ。名前の文字数を数えながら、「天国、地獄、大地獄、天国、地獄、大地獄」と繰り返す。
私の名前は6文字なので、大地獄である。
何故大天国は無いのか。大天国があれば天国なのに。なんだ大天国て。

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自殺した人の魂はどこへいくのか。
とか、よくわからない霊能者さんが語ったりする。
えっ、自然死と違う場所に行くんですか。
それがまあ、大体地獄行きというか。地縛霊になるとか、ろくな事ない的な。
なんでだろ。

その霊能者さんには、
自殺は悪いとか、我慢が足りないとか、頑張りが足りないとか、逃げだとか
そういう思想が根底にあるという認識でよろしいか。
悪い、怠惰で、逃避に走ったヤツの魂なんて、地獄まっしぐらだと。

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地獄は、必要だから作られた。
あった方が都合がいいからだ。
地獄や天罰がないと、困る人がいる。
それは、ただ真っ当に、真面目にこつこつ生きている、健常の人達だ。

真っ当に生きるのは、とても大変だ。
学校、シゴト、交友、いざこざ、ゴマンとあるハラスメント、自己肯定感リスク分散確定申告将来への不安今日の夕飯何作ろう…
耐え難きを耐えながら、にこにこしていなくちゃならない。
疲れた。
誰か褒めて欲しいし、抱きしめて欲しい。
それが、真っ当に生きるということだと思う。 

翻って私だ。ドロップアウトして引きこもり、行政からの少々のお金で病院代などを捻出。死にたいとか言いながら中々死なない。褒められたもんじゃない。
真っ当に生きている人から見たら、大変にけしからん、唾棄すべき存在だ。
その唾棄すべき存在が、
真っ当に生きている私たちと同じく幸せに生き、幸せに死ぬなんてゆるせない。
真っ当に生きる自分たちが馬鹿馬鹿しいじゃないか。

その怒りの名のもとに誕生したのが、地獄だ。
Happy  birthday dear 地獄。

その誕生は、
真面目に生きている事に意味を付与するためにあった。
頑張らない奴は、地獄に行く“ ことにする ”
サボっている奴らは、地獄に行く“ ことにする ”
頑張れば、旅行とか天国とか極楽浄土に行ける。
そうだそうだ!頑張らなければ地獄行き!これで、私たちが頑張ることに意味が生まれる!

お坊さんも言っている。
地獄に行きたくなければ、お経を唱えまくること。死を恐れないこと。善を行うこと。あとお布施も忘れずに。
頑張りなさい、頑張りなさい。

しかし他にも、極楽浄土へ行くための大変厳しいノルマが沢山あるので、あまり現実的ではない。
結局、大体の人間が地獄に落ちるらしい。残念。
やっぱり、頑張っても意味ないのかな…
と思うかもしれないが、
そこはご安心を。地獄には8種類あって、罪が軽ければ一番苦しみの少ない等活地獄に落ちる。殺生をしたことがある者は堕ちるので、蚊を潰してればダメだし、肉食してるだけでもアウトだけれど。
そして重い罪を犯した者は、落ちるまでに2000年はかかると言われる阿鼻地獄、無限地獄におちる。

つまり、頑張ること、真面目に生きることで罪は軽くなる。というシステムになっているのだ。

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健常の人達は、地獄を作らないとやっていられない。
我慢してたらいい事がある、天国に行けると思わないと、壊れてしまうのだ。
助けて欲しい。でも助けは来ない。褒めて貰えない。抱きしめても貰えない。
その腹いせに、
死にたいだの自殺だのをサボりと認定し、地獄に落とすシステムを構築したのだ。
「サボってずるい」とか
「あんなやつらはろくな人生を送らない」とか
「社会のお荷物」「私の税金使って暮らしてるのムカつく(税金については私も払っているのですが)」とか。
健常の人たちは結託し鼻で笑う。
「私たちの努力は報われるし、ヤツらは地獄に落ちるから」
いや違う。
「奴らが地獄に落ちることにすれば、私たちの努力には意味があることになるから」だ。

そこまでして、自分の苦しみや頑張りに意味を付与しなくてはやっていられない世の中なのだ。
世の中が良くなって、健常の人達が金銭面でも生活面でも満足できれば、無理やり構築した地獄は消え去る。

健常の人達が、頑張った分だけ評価してもらえる、抱きしめてもらえる世の中になればいいなと思う。

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自殺は、サボりだろうか。
自殺に至るまで、その人はずっとサボっていたのだろうか。
地獄に落とされるほど、悪いことをしてきたんだろうか。
自殺したものの魂は、救われないのだろうか。

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健常の人達につたえたい。
生きることにも、自殺することにも、それぞれに事情がある。
あなたは大丈夫だ。わざわざこちら側に触れる必要は無い。
自殺を批判し、蔑まないと生きられないなら、
それはあなたが相当疲れている証拠だ。
あなたがこちら側に転ばないよう、誰かに助けを求めて欲しい。 

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冒頭に話した霊能者さんは
自殺の抑止力になるという善意で、自殺したものの魂はろくな事にならない、と訴えているが、
その実、
“ 逃げたやつは地獄に落ちるシステム ”を構築したエンジニアの一人なのだ。
相当疲れている、健常の人なんだと思う。

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天国、地獄、大地獄。
他愛ない遊びに、八大地獄を追加してみる。
天獄、地獄、大地獄
等活地獄、黒縄地獄、
衆合地獄、叫喚地獄、
大叫喚地獄、灼熱地獄、
大焦熱地獄、阿鼻地獄

私は六文字。衆合地獄だ。
殺生、盗み、浮気、不倫をしたものが落ちる。
殺生以外はしていないのですが。
巨大な臼にいれられて、餅のように潰されたり
鉄の山に打ち付けられるらしい。えーやだー。
はやくいい世の中になって、地獄消えねぇかなぁ。

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今回書いたのは私の思考の一部です。
非常に極端な屁理屈にフォーカスして書いています。
この記事は、社会が作り出す地獄の話であり、多面体のひとつの側面でしかありません。
実際の天国と地獄は、このような切実で殺伐とした理由のみで出来たものではありません。

民俗、人類共通の無意識や死生観、此岸と彼岸、
エジプトの死者の書や、日本の四十九日。
死者を敬う気持ち、死者に安全に旅立って欲しいという思い。
死者に生き返って欲しいという切実な願い。
こういったものへの敬意、愛、興味は尽きません。

お借りしたトップ画は、ロダンの「地獄の門」です。
実際見ましたが、繊細かつダイナミック、生々しさと悲鳴、そして神々しく、荘厳でした。

長くなりました。簡潔にできず、申し訳ありません。
ここまでリタイアせずに読んでいただいて、
本当にありがとうございました。

のがの







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