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季節が巡らない
夏が来た。
変な感じ。
記録的な大雪だった今年の冬、私は育休から仕事復帰した。
ペーパードライバーだった私は懸命に生きた。朝5時に車の雪をおろして、雪かきをして、娘を乗せて毎日泣きながら通勤した。
雪は溶けた。
んでもう、暑いじゃん。
なんだ?なんでこんなに突然夏が来た?
そうだ。
私にはまだ春が来ていない。
娘は年齢だけで考えれば、春を2回経験している。
でも娘はまだ、本物の桜を見たことがない。
思えば、去年の春は、今よりもっともっとピリピリしていて、この片田舎でも車一台見かけないほど、みんなが家にいた。「来年は、お花見しようね🍡」「落ち着いたら飲もう🍻」をおまじないみたいに言い合って。
けれど、今年の春も会えなかった。
もうみんな苦しくて。桜を求めて歩いている人々を見たけど、お花見禁止で桜に近づけなくなっていた。
「落ち着いたら会おうね」
ぜんぜん果たせなくて、このおまじないを言うのは虚しくなってきたので、最近は言うのをやめた。
地元のお祭りも、最近までやろうとしていたみたいだけど、やっぱり中止になった。
娘とおうち時間を楽しく過ごすために、しまじろう師匠のDVDを見ている。
浴衣を着て花火を見るしまじろうと、パパとママ。
「きれいね〜」と娘が言った。
娘はまだ、本物の花火を見たことがない。
いつ観れるかな。
妊娠中、友人たちが、私の大きなお腹を触りながら
産まれたらみんなでお花見しようね!
BBQもしなきゃ!海にも行きたいね〜
と声をかけてくれた。
娘は、その友人たちの誰にも会えていないし、みんなも地元に帰ってきていない。
ああ、みんなの名前を覚えて、たくさん遊ばせたかったな。抱っこもしてもらいたかったけど、もう走り回れるようになったよ。
中学生の従弟。修学旅行は直前でキャンセルになった。
「まぁ、無理だと思ってたからね〜」
無理だと思いながら準備した旅行。人生に無駄な経験はないっていうけど、どう感じただろう。
この子達は、これからどれだけのことを諦めていくんだろう。
若い頃、華金にはディスコに行き長期休みにはニューカレドニアに行って、今も銀座のクラブに行きたいおじさんたちを無表情で眺める。
このまま、また泣きながら運転する冬がやってくる。
…それはめっちゃ嫌なので、子供用プールを買った。
百均で500円のかき氷器も買っちゃった。
百均で100円じゃないもの買うの、特別感があってちょっと楽しい。
2020年の私は、とにかく家に篭るが正義だと思っていた。
2021年の夏は、私にできる100%で夏を謳歌しようと思う。
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