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Day⓪知らない町に放り出された夜

第一関門「入国審査」と「トイレットペーパー」

巨大なジェット機が重低音の唸りを上げる。
一定のスピードを保った機体は、深夜の駐機場所へ。
ベン・グリオン国際空港に到着!
商都・テルアビブ近郊の空港ターミナルビルは、広い。
所々に石工が作ったようにも見えるレリーフがあったりもする。
でも、何か特別に印象に残るようなものではない。いたって普通の空港だ。

ここで待ち受けるのは、第一の関門である入国審査。緊張の瞬間。
というのも、イスラエルのそれは、世界有数の厳しさと言われているから。
列に並ぶ。1組待ちですぐに順番が来た。
尋問を覚悟する。審査官は、いたって普通の20代っぽい女性。
旅の目的・期間・行き先・知り合いがいるか、くらいだったかな、
入国審査は、ものの3分くらいで終了。
あっけにとられながらも、
事前に調べていた“写真付きの入国許可証”について聞いてみる。
ここで受け取るんじゃなかったかなと。
「写真付きの…あれ、あるじゃない。許可証っていうのかな。
 あれはここでもらえるの?どこで写真撮ったらいいの?」
…「PARDON?」を連呼された。
「何言ってんの?さっさと行けよ」的な雰囲気。
諦めて、先に進む。
渡されたパスポートには、それが挟まってました。
名刺より小さいサイズで糊付けなし。
パスポートから読み取った写真も白黒で印字されてました。
何も言わずに挟まれてた小さな紙だけど、失くしたら大変らしいで、これ。

ベン・グリオン国際空港 建物や人の表情から異国を感じる

そのまま手荷物受け取り場を抜けて無事通過!
いや、その前にイスラエルでは自身初となる、大きいほうのトイレへ。
ここで、トイレットペーパーをめぐるある問題に直面。
日本の水洗トイレで使うような紙があるんだけど、
脇のゴミ箱を見ると、中に捨ててあるの。その紙が。
でも、う○ちとか付いてなくて白色のままなの。
使用済みのペーパーを便器に捨てるべきか、
はたまた、ゴミ箱の中に放り込むべきか―。
迷った末、便器へイン!
…流れた!
 
両替しようと銀行の窓口へ。イスラエルの通貨はシェケル(ILS=₪)。
半日弱のフライトの間にも円高が進んでるのね。
とりあえず1 シェケル≒40円は切ってて得した気分。
出発前の成田空港では、41 円台だったかな。
 
いざ、聖地・エルサレムへ!
日本にいるうちに、1泊目のホテルはちゃんと押さえてきたんです。
どうやって向かおうか。
さっきの両替に並んでる間にも、タクシーの運ちゃんが声かけてくる。
そのうちの1人、優男(やさおとこ)に聞いてみると、
エルサレムへのタクシー、だいたい30分ちょい。400シェケルだって!
…1万4000円超えてるやん!引くわ。
ん?380シェケルに値引きするって?交渉の余地なし。
アジア人珍しいから言うて見くびっちゃダメよ。
笑顔でお別れ。

ベン・グリオン国際空港の外に並ぶタクシーの列 ※ピンぼけ

ビルを出ると、乗り合いタクシーを発見。
聞いてみたら、エルサレムまで66シェケルだって。
先ほどのくだりで警戒心を高めた僕は、
口頭で「シックスティーシックス」って連呼させた。
それだけでなく、携帯に「66」って打ち込んで確かめた。
どうやら間違いないらしい。
1万4000円→2,600円
最初の優男たち、相場を把握させないまま連れ出す魂胆やったんやな。
この感じ、結局どの国でもだいたい一緒か。
乗り合いタクシーは10人乗り。乗客10人揃ってようやく出発。
窓から見ると、ターミナルにはやっぱり
機関銃を持った兵士がいるものなのね。なんだかイスラエルっぽい。

第二の関門 ホテルへの道のりと遠い晩酌

乗り合いタクシーは、高速を飛ばしてエルサレムへ。
気づいたら、道中の一部がヨルダン川西岸地区の中を通ってたっぽい。
それにしても、そのあたりだけが暗かったような。

高速を降りたタクシーは、最初に降りる女性客の目的地へ。
いや、住宅街やん。
そうか、乗り合いタクシーやから、自宅に帰る人もいるよね、そら。
観光客だけじゃないってことね。
女性を下ろした道は、ハンパない数の路駐の車。
そんな狭い道を猛スピードで駆け抜けるタクシー。
京都の細い路地を60キロくらいで爆走するタクシーの運ちゃんに
安全運転を懇願したのを思い出したわ。
 
そしていよいよ、僕のホテルが近づいて参りました。
運転手には、出発前に「エルサレムゲートホテル」と伝えてました。
運転手のお兄、「ここだよ」とジェスチャー。
お金払って、荷物降ろしてバイバイ。
現地24時を回って、ようやくチェックイン!
…と思ったら、
このホテル「エルサレム“ゴールド”ホテル」でした。
「ゲート」と「ゴールド」。
Gで始まるよね。響きも似てるよね。
でもダメだよ、間違っちゃ。
僕、イスラエルもエルサレムも初めてだよ。
24時回ってるのよ。
知らない町の夜道は、男の子でも怖いのよ。
すでに、乗り合いタクシーは視界の彼方へ。

エルサレムまで運んでくれた乗り合いタクシー

でも大丈夫!
ネットでホテルを探すときに、
名前が似てるホテルがあるなあと思って位置関係をなんとなく見てたので、
グーグルさんを見ながらすぐに着きましたよ。
ほんまもんのゲートホテルの方に。徒歩1分。助かった。

見た目は普通。ロビーは、何か中東っぽいなって感じ。
チェックインを済ませ、部屋に入ると、けっこうきれい。
お目当てのバスタブ着き。
1万6000円とちょっと高かったけど、バスタブに浸かれるならOK!
 
腹減ったなー。ビール飲みたいなー。
フロントのおじさん、ホテルの売店はクローズって言ってたから、
ちょっと外を散歩してみよ。
25時半、ちょっと怖いけど、ターミナル駅も近いから大丈夫だろう。
その通り、この時間でもたくさんの人がいた。
バス待ちしてる人もいれば、胸を揺らしながら闊歩するカップルの姿も。
爆音の音楽を流す謎の建物もあったかな。

エルサレムにあるホテル周辺 25時を回っても人は絶えない

ようやく見つけた売店。
駄菓子屋みたいにピックアップする形式の飴ちゃん、
スナック類、ソフトドリンクに…
あった!ビール!種類も豊富。
機内で飲んだ「アレクサンドリア」みたいな名前の地元産のものも。
どれにしようかなー 大瓶でもええなー
とか考えてたら、レジの兄ちゃんが一言
「今は売ってないから。」
「???」
何言ってんの?あるじゃん、ここに。
美味そうに泡を立てる黄色い飲み物が!
戸惑ってたら、頭に小さい帽子を載せた若者が教えてくれた。
「23時までしか売ってない」って。
そうやって、イスラエルの治安は保たれるのか?
そうかあ。そうなのか。
泥酔してたら銃で打たれそうやもんなあ。

深夜でも開いていた売店 中央の冷蔵庫奥に種類豊富なビールが並ぶ

泣く泣く、ドリトスっぽいスナックとファンタオレンジと水を買って退店。
てか、これで20シェケル≒750円って高くない?
どれがそんな高いの?レシート見ても内訳が載ってない。
謎や。ボラれた?
まあいいや、レジの兄ちゃん、英語わからなさそうやったし。
 
部屋で飲むファンタとドリトスっぽいの。
この「っぽいやつ」、味が濃い。濃すぎる。
ビール要るわ、やっぱり。

スナック菓子・ファンタオレンジ・水の3点で800円弱 妥当な価格だったのか…?

つづく

この記事は、30代のテレビ制作者である筆者が、ガザでの戦闘開始から遡ること半年前の2023年春、イスラエルとパレスチナを一人旅したときに書き留めたノンフィクション日記です。
本業では日々のニュースを扱う仕事に関わり、公正中立を是としていますが、この日記では私見や、ともすれば偏見も含まれているかもしれません。
それでも、戦争・紛争のニュースばかりが伝えられるこの地域のリアルを少しでも感じてほしいと、自身の体験や感情をありのままに綴ります。
いつかこの地に平穏が訪れ、旅行先として当たり前の選択肢となる―。
そして、この日記が旅の一助となる日が来ることを信じて。

TVディレクターのおちつかない旅 筆者


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