Day①-1 エルサレム 武力と秩序と混沌と
ピーマンと自動小銃
いよいよ始まるイスラエルとパレスチナの旅。
ホテルの朝食で1日目を始動。
このあたりのホテルは、だいたい朝食込みの値段のよう。
それにしても、品数が豊富!
玉子系の料理に、シーチキンとかの魚系。
サーモンみたいに身が赤いけど、
やせ細ったアジみたいに幅のない魚のマリネも。これはマス?
パンも焼き立てのようで種類も豊富。
そして、やっぱり野菜が充実してるのよね、欧米の人が多いホテルは。
細かく刻んだ野菜のサラダもあれば、
ピーマンとかパプリカの細切りが取り放題だったり。
細切り言うても、
日本の居酒屋で出てくるつまみのあれみたいに細切りじゃなくて、
もはや「太切り」。
食べ応え重視なのか、単に仕事が粗いのか。
それを好きなだけお皿に取り分ける仕組み。
さらには、目の前で焼いてくれるオムレツも。
希望すれば目玉焼きも可能。
オムレツは、チーズ・玉ねぎ・バジルの千切りのオプション。
全部入れるかと言われたので、言われるがままに。
気づけば、朝食は皿3枚分の大盛りに。
お米がないのを残念がるのは、日本人とタイ人くらいかな。
まあでもそんなもんか。代わりにピザを取りましたよ。
椅子から転げ落ちるくらい美味いものはなかったけど、
どれも日本人の口に合わないものはないんじゃないのかな。
いろいろ食べ比べながら、
牛乳だと思って間違って取ったパックのヨーグルトとともにいただく。
そういえば、生野菜のドレッシングも、
3・4種類のヨーグルト系のものから選択する仕組みだった。
重宝されるヨーグルト。
ドレッシングっていう概念、ないわけはないとは思うんだけど。
最後にいただいたカフェラテもいい感じ。
その辺によくあるような、
ボタン一つで豆を引いて作ってくれる全自動のあれ。
味は日本のコンビニより圧倒的にうまい。
豆が新鮮だから?アフリカから近いし?
これは、このあと飲む町中のコーヒーを飲んでも同じ感覚。
旅だからという気持ちの面を差し引いてもそうだと思う。なんでやろ。
腹を満たして、荷物を詰め直して、エルサレム観光へ。
ホテルから徒歩2分くらいのお店で、
大麻の葉っぱのマークが入ったリュック発見。
よく見たらヘンプ。麻の素材で出来てるのね。
このマーク、僕みたいに平凡な日本人が異国で見るとドキッとしちゃう。
値段は80シェケル(約3000円)。良心的だ。
昨夜ビールを買えなかった売店を通り過ぎて、新市街へ歩みを進める。
エルサレムのセントラル駅的なところを見ながら
旧市街に向けて歩いていると、目につくのは兵士の姿。
男女両方いますよ。肩に自動小銃を携えて。
危ないって、そんなブラブラさせて。
それ、凶器やで。何人も殺せちゃう。
自動小銃を提げたままハンバーガーを頬張るグループがいたり、
何なら、自動小銃とともに彼女と愛の囁きをしてる男の子もいたな。
それくらい日常なんかな、この国では。
徴兵制があるってそういうこと?でも非番なら銃は携帯しないよね。
その感覚って日本の警察官だけ?
しばらく歩くだけで、同じような兵士の姿がたくさん。
すでに麻痺してきた。軍服に自動小銃。
もはや新手のファッションにも見えてきた。
冷静に考えれば、対立するパレスチナ側の武装勢力の存在もよぎるけど、
この片側だけずっと見てると「そんなもんか」と思えてくるの。
あとあと考えると、
安息日「シャバット」の金曜の朝だからやたら多く感じたんかな。
わからんけど。
そんなことを考えながら辿り着いた
マハネ・イェフダ市場(Machaneh Yehudah Market)。
異国の雰囲気を放つ市場は、旅の中でいつもそそられる存在。
ここが市場かあ、と思ったところで、
入口付近で拡声器持ったおっさんが
至近距離で若者相手にまくし立てている。
なんやこれ。近くにいる警察官たちは、静観。
近くにいた体の大きな超正統派の兄ちゃんに聞いてみたら、
彼はユダヤの法律のあり方を議論したいんだって。
兄ちゃんいわく、彼の言うことはごもっともだと。
ヘブライ語でしゃべってるから、細かくはようわからんけど。
ちなみに、おじさんがまくし立ててたユダヤの法律論とは、
イスラエルの「司法制度改革」。
ざっくり言うと…
時の政権の決定に「合理性がない」場合、
最高裁が「無効」とする権限が与えられているのが今のルール。
その権限を奪おうとするのが、ネタニヤフ政権が進める「改革」で、
政権にとっては邪魔を排除できる都合のよいもの。
「司法の独立」の弱体化につながり、
民主主義の基本である三権分立を骨抜きにするものだとの批判が高まり、
世論を二分する議論に発展しているそうな。
この超正統派兄ちゃんとその後も少ししゃべって、
「この市場おもろいよー」ってお墨付きももらったので、
意気揚々と入ってみました。
まず目に飛び込んできたのはフルーツの豊富さ。バナナやら何やら。
物価が日本よりちょっと高めの印象のイスラエル。
でも、バナナは一房10本弱で6シェケル(200円ちょっと)。
特にイチゴが安いんやなこの国は。
山盛り、日本だと2パック分くらいで400〜500円くらいかな。
いい感じの赤色で美味そう。一人じゃ食べ切れないから、見るだけ。
他にも、生肉もあるし魚もある。
電子機器から路上の音楽家(高齢者)まで何でもござれ。
街の人が日常使いしてるんだろうね。
物乞いのたくましさと異国情緒
歩いてるうちに、コーヒーが飲みたくなるのよ。
日本の僕の日常では欠かせないカフェラテを求め、雰囲気のいい店を探す。
あった!狭い店内に据え付けられたカウンターいっぱいに、
観光客っぽい人の姿が。
これは当たりの予感。店員の兄ちゃんもいい表情してるし。
カフェラテ17シェケル。650円くらい。
スタバより高く、日本のイケイケのコーヒーショップと
同じくらいの価格帯。
注文を済ませて受け取りカウンターに行くと先客が。
スカーフ巻いたおばあちゃん。歳は70前後くらいなあ。
小さいプラコップにビールを注いでもらって受け取った直後、
まずは指で表面の粗い泡を弾いてゴミ箱へ。
ビールの本体にしか興味ないのね。
それか、泡入れるならあの神泡にしろってことか?
その後、僕がカフェラテを待ってるとおばあちゃん、
店員の男性とヒソヒソ声でやりとり。
彼(僕)はどこから来たのか?
彼(僕)は私の写真を取ってなかったか?
…そういうことでした。
気にしてなかったけど、思い返せばすれ違いざまに
親指と人差し指を擦り合わせるジェスチャーしてたもんな。
街中には数は多くないけど、小銭の恵みを待つ人たちがいた。
ユダヤ人主体のこの土地では意外に感じたけど。
彼らの多くは慎ましやかにプラコップを掲げて小銭を求める。
このおばあちゃんは堂々とビールをゲット。この違いは何?
モヤモヤしたまま、コーヒー片手に店を出る。
でも物乞いの人の中には
プラコップを揺らしてジャランジャラン音を鳴らして、
小銭を求めてる人もいたな。
この手の積極性、日本でも海外でもあまり見なかった気がする。
…それにしても、あのおばちゃんは別格か?
旧市街に近づきながらも、
道中にある次の宿泊先のホテルに荷物を預けに立ち寄る。
社長然としたおっちゃんに声をかけると、チェックインしたいのか、と。
そうだ、と答えるとパソコンを叩く社長。
これはラッキー。
早いうちからチェックインして安心して身軽に行動できる。
…社長、チェックインは15時からだと。そうだろうね。
だって予約メールにそう書いてたもん。
とりあえず、デカいカバンは置いておいていい
とのことだったのでお願いすると、
案内されたのはスタッフの備品やら着替えやらが置かれた部屋。
鍵かけてないっぽい。大丈夫?
でもフロントのすぐそこ。名札とか引き換え証的なものはなし。
セキュリティ大丈夫?僕のカバンって誰が判断できるの?
いや、これは性善説やな、たぶん。めんどくさいもんね。
街に繰り出して周囲を見渡すと、建物はほとんど石造りなのね。
特に旧市街に近づくと、真新しいものとか作りかけの石造りの建物が多い。
地震が多い日本では無理だろうな。
マンションも石造り。それでいて、見た目はすごい近代的なの。
街の通りを1本入ると、静かな住宅街。
日本のそれとは違って全部石造りだけど。
目につくのはエチオピアの国旗。
そういえば、飛行機の中で読んだイスラエル人の著書にも書かれてたな。
1948年のイスラエル独立宣言以降、
1700年近くエチオピアで古代の信仰を守ってきた人たちが移ってきたって。
見た目も黒人そのものだったりする。
でも街中に見るその人たちは、頭に例の帽子を載せている。
単一民族国家に近いと思ってたけど、
ある意味で境界をぼかす寛容性もあるのかなと。
さあ、いよいよ旧市街、城壁の中へ。
Jaffa gateから入場!
エルサレムマラソンなるものが開催されてて、
デカい看板や歩いてる人のシャツがその記念グッズだったり。
門をくぐってすぐに見つけたフレッシュジュースの店。
pomegranate、グレープフルーツ、オレンジ…。pomegranateってなんや。
見た目はリンゴみたい。
んー、これが25シェケルと一番高い。他は15シェケル。
悩んだ末、pomegranateを選択。
調べたらこれ、ザクロなのね。
店のおっちゃんが次々と切っては潰すを繰り返し、
コップに注がれたのは赤い汁。ピンクグレープフルーツより赤い。
…美味い!染みるわ、これ。
25 シェケル、1000円弱。
冷静に考えたら高いけど、その価値はあったと思うよ。
エネルギー補給完了。街を歩こう。
狭い路地の両側に店がみちみちに並ぶ。
ユダヤの帽子、Tシャツ、置物、カバン、布…観光地によくある光景。
でも、エルサレムはユダヤ・キリスト・イスラムの聖地。
過去にモロッコで見たことのあるお菓子とか、目の書かれたオブジェ、
キリスト系の置き物、十字架、ろうそくも。
これ、他の国ではお目にかかれない、ある意味でカオスな状況。
それらが所狭しと並び、整然と営業してる。
エリアもくっきりと分かれているかといえば、そうとも言えず。
歩いているうちにいろんな宗派のエリアをまたいでいる感じ。
あれ、気づけば手荷物検査をしてる場所へ。
The Western Wall Heritageの文字。
嘆きの壁!
イスラエル兵も1人、銃を構えて睨みを効かせてる。
知り合いのユダヤ人がいたのか、ハグをして雑談したりもしてたけど。
手荷物を機械に通して中へ。
…ほんまにちゃんとチェックしてた?
つづく
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