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『哀れなるものたち』グロサイコと人間讃歌のバランスが良い

映画『哀れなるものたち』やっと観てきました。


◇人間の成長過程

1つの大きなテーマは人間が自我を形成し自己を理解する過程を描くこと。

言葉を覚える段階から意思を持って行動するようになり、外に出てからは社会性も身につけていった。
成人女性がそれを演じることで人間の成長をより客観的に見た気がした。

特にアレクサンドリアでスラムを目にした時の衝撃と泣き叫ぶ姿には共感するところがあった。
中学生くらいの時、アフリカで自分と同じ歳の子が学校に通いたくても通えないこと、戦争でたくさんの若者が亡くなったことなど、世界を知る機会が増えて、絶望というか苦しくなったことがある。
ベラもあの時10代前半くらいの精神年齢だったのではないかと思う。


◇「グロサイコ」と「人間讃歌」

2つ目のテーマは人間には愛が必要だという人間讃歌だと感じた。
父親から愛を感じられなかったゴットは冷静な科学者のふりをしながらも愛を求めていた。ベラと出会って愛すること愛されることを知った。
その結果別れが辛くなってしまい、今度は情を持たずにベラ2号を作ろうとした。しかしベラのような成長速度は見られなかった。
ゴットから愛されさらに外の世界で多くの人と関わったベラは急成長を遂げた。
人間が自我を発達させるためには他者との関わりや愛が必要であることが感じられた。

ラスト、まあヤギにするかなとは思ったけど、ゴットの脳を移植するのもありか?とか思った。
でもベラはそうしなかった。
ゴットに関しては愛し愛され、納得のいく最期だったからだと解釈した。
将軍に関しては、貧富の差を嘆き、「残虐になりたくないの」と言い他者を尊重する心を手にしていたベラがめちゃくちゃ残虐なことをしていて、世の中やられたらやり返したほうがいい時もあるし、傷つけてもいい人もいるんだとちょっと現実主義なところが見えた気がして最高だった。将軍役の俳優さんのアホ面も最高だった。

個人的には「グロとサイコ」と結局「人間讃歌」のバランスがすごく良かった気がする。
サイコ好きで、ベタベタな綺麗事は好きじゃないけど人間讃歌はなんだかんだ好きな私の感想。


◇美

エマストーン美しすぎて、見惚れて何回か字幕見るの忘れた。
お顔が美しいのはもちろんだし、ドレスも天才、画面もずっとファンタジー小説みたいだった。
空が素敵だった。


◇タイトル考察

原題は『POOR THINGS』
邦題は『哀れなるものたち』

邦題はこれで合っているのか?個人的にはしっくりこなかった。
邦題を聞くとどうしても「哀れなる者たち」という「もの」=「者、人間」というイメージがついてしまう。
作中でベラが「私はゴッドの創作物」と言っていたようにベラは自分のことを「物」だと自虐しているように見えたし、そっちの解釈の方が個人的に好み。
だからこそ邦題では平仮名で「もの」としたのだろうし、日本語ならではの素晴らしい訳だと評価する人もいそうだが、私は「たち」がついていることで人間を意味する「者」を想像してしまった。そういう先入観というか印象を持たずにこの作品を観てみたかったとは思う。


・ファンタジー
・グロ
・サイコ
・人間讃歌
私の好きな要素がいっぱい詰まっていて面白かったし、すごく完成度の高い映画だったと思う。

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