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香り豊かな植物を生み出す秘訣 ~フランス農場レポート vol.5〜

野枝アロマは、2017年から定期的にフランスの農場、精油メーカー、BIO製品の展示会などを訪れ、その地の植物に触れながら、今現在の生きた情報を取材させていただいています。

今回は、昔ながらの農法にこだわるメオさんご夫妻の心安らぐ農場レポートの第3弾です。

メオさんご夫妻とは2018年にお会いして以来ずっとお付き合いをさせていただいていて、野枝アロマのYouTube でもインタビューを掲載させていただいております。
よろしければ、ぜひこちらの動画もご覧くださいませ!

水蒸気蒸留器、ラベンダー・アングスティフォリア、エキナセア、カモマイル・ローマンを見学した後は、カレンデュラを育てているエリアに。

カレンデュラは皮膚の荒れを鎮める働きがあり、ひび割れた皮膚やかゆみのある皮膚、ザラザラした皮膚のケアなどに使用されています。
とても古くから薬理作用が見られる植物ということで、フランスでも昔から民間薬として皮膚の疾患に使われてきました。

お花はこんな形。とってもかわいらしいですよね♪
この季節、他の農場でもこの花を見かけましたが、メオさんのカレンデュラは触感がとても柔らかで、温かみのある優しい香りを放っていたのが印象的でした。

これはメリッサ、つまりレモンバームです。
名前の通りレモンに似た香りで、ハーブティーはリラックスや消化促進のためによく使われています。
この植物も古くから薬理作用が見られるとされていて、ヨーロッパでは広く愛用されてきました。
精油も不安や緊張を和らげてくれるような、とても甘くて優雅な香りがします。

こうして歩いてみると、1つ気づいたことが。

それは、「カモマイルの畑」「ラベンダーの畑」というように別々にするのではなく、1つの畑の中に様々な植物を一緒に植えていることです。
カモマイルの横にメリッサが生えていたり、ラベンダーの隣にカレンデュラが植わっていたり。
なぜそんな風に育てていらっしゃるのかを、奥さまのヴァレリーさんにお聞きしてみました。するとこんな答えが。

「たくさんの種類の植物を混在させることで、自分たちを守るために強い植物だけが残っていき、その残った植物には、身を守るためのたくさんの芳香成分が宿るからなのよ。
1つの畑に1つの植物しか植えないと、どうしても弱いものもできてしまい、芳香成分も少ないものになってしまう。だからあえて混在させて、1つ1つの植物の力を増幅させているの。」

「人間と同じかもしれないわね。色々な人々と交わる中で、それぞれの個性が引き立ったり、心が鍛えられたりするでしょ。」

心に響く、温かい言葉でした。

こちらは、この農場で活躍しているお馬さんの一頭です。

第1話でもご紹介させていただいたように、ここは伝統的な農法にこだわる、「Syndicat des Simples(サンディカ サンプル)」という組合に所属している農場。
なので、昔ながらの馬で畑を耕す農法を続けていらっしゃいます。

Syndicat des Simplesの決まりとして、木を切ったり、運送をしたり、畑の掃除をしたりする以外は、機械での大掛かりな農作が勧められていないので、多くの農場は手作業をしているそうなのですが、馬を使うことでどんなメリットがあるのかを、ご主人のデニスさんにお聞きしてみました。

「機械は便利だけれど、通った後の土を固く踏み固めてしまうんだ。
だから、その後またフカフカの土に戻すのがとても大変なのだけど、馬は土を固めすぎず、植物を傷めることもなく土を耕してくれる。」

「それから、狭い場所も繊細に通ることができる。ワイン畑は山の傾斜が急で狭い通路が多いので、馬を使って土を耕すところが多いんだ。
この子たちは雑草も食べてくれるし、切った木や植物を運ぶのにも役立ってくれるからとても助かっているよ。
もちろん機械よりも時間はかかるけれど、私たちの農場にはのんびりと丁寧に行う農作が向いているんだ。」

穏やかな口調と優しい笑顔でお話してくださいましたが、その言葉は確固とした信念のもとに紡がれていることがひしひしと伝わってきました。

今この農場で活躍している5頭の馬たちは、普段この大きな厩舎の中にいます。
そのずっと奥にある冷暗所に、この農場で取れた精油やハーブウォーター、ハーブティーやバームなどが保管されていました。

このお部屋を紹介する時、ヴァレリーさんは「私たちの子供たちよ!」と、とっても嬉しそうにおっしゃっていました。

でも、私は思いました。
「こんなに広大な農場なのに、こんなに少しの商品しか作らないの・・・?」
そのことをお尋ねしてみると、こうお話をしてくださいました。

「育てた植物はあえて全部は収穫しないで、1/3くらい残すようにしているのよ。もちろん、収穫しなかったものは枯れて朽ちてしまうけれど、それが肥料になり、また次の命につながるの。」

自然界のバランスを乱さず、植物への感謝と尊敬の念を忘れない。
そんなおふたりの強い思いと共に、優しく、そして時には厳しく、大切に育てられた子供たち。
私も、ひとつひとつを本当に愛おしく感じました。

植物を愛し、地域の発展に尽力しつつも、環境を守り、厳しい自然の中で愛情いっぱいの素晴らしいクオリティーの製品を作り続けてくださるメオさんご夫妻。
1年の中で1番お忙しい時期に、日本からやってきた初対面の私のためにたくさんの貴重なお話をしていただき、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
どうもありがとうございました。

「おふたりと、おふたりが育てた植物たちに絶対にまた会いに来よう。」
そう心に決めて、農場を後にしました。


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