お飾りの「オーナー制」「フレンズ制」導入は欺瞞 -れいわの代表独裁制は変わらず-

れいわ新選組(以下れいわと略)は3月末に党組織に「オーナー制」と「フレンズ制」を導入すると発表した。やっと党の支持者や賛同者に党員制やパートナー制という形態で党運営に参加する道を開いたのか、つまりこれまでの「代表独裁制」から党内民主主義実現のために一歩踏み出したかと期待してオフィシャルサイトの案内を見たが、まったくの期待はずれだった。「オーナー」と「フレンズ」は、ともに党代表選挙の投票権を持つだけで、それ以外に党の運営に参加する権限は与えられていない。一般的な党組織に見られるような党員制やパートナー制とはほど遠い代物である。

だが、新制度が期待はずれだっただけではない。今回の新制度導入に合わせ規約の改正が行われているが、これを見ると、これまで問題とされてきた「代表独裁制」が改善されるどころか逆に強化されているのに驚いた。

これまでと同様、党の最高議決機関は「総会」とされ、構成員(国会議員、地方議会議員、首長、及び予定候補者)によって開催決議されるのだが、新たに設けられた「役員会」は「代表、副代表、幹事長、選挙対策委員長、政策審議会長、及び国会対策委員長」で構成される決議機関と規定されている。一般的な党組織では、役員は総会で選出され、総会の決議を執行する機関であるのが普通だが、改正された規約には総会で選出されるとの規定がない上に、執行機関ではなくなんと議決機関だとされている。

結果、れいわには二つの議決機関があることになるが、それぞれ何を議決するかといえば、総会は「綱領の改定、年間活動計画、予算及び決算、その他本規約に定める事項、並びに代表が特に必要であるとして決した事項を、審議し決定する」とされ、他方役員会は「規約の改正、本規約を執行するために必要な規則の制定及び改廃、並びに党運営に関し本規約に定める事項その他の重要事項を、審議し決定する」と規定されている。つまり総会は綱領や年間活動計画、予算・決算を決定する権限を持つが、役員会は規約の改正や規則の制定をはじめ、党運営のすべてを決める権限を持つとされているのである。役員は総会で選出されるとの規定がないので、「国会議員、地方議会議員、首長、及び予定候補者」になれば自動的に役員となると理解するしかない。役員会に最高の議決機関である総会の統制は効かない仕組みになっている。

奇妙なのは、規約では第4章で役員会を議決機関としながら、「党役員及び執行機関」とタイトルがつけられている5章では「執行機関」という言葉が使われているものの、役員会のメンバーである「代表、副代表、幹事長、選挙対策委員長、政策審議会長、及び国会対策委員長」はそのまま執行機関でもあるとされている。しかもそれぞれの仕事内容は説明されているが、いったい何を執行するかは規定されていない。これはある意味当然である。なぜなら役員会は議決機関であると同時に執行機関とされているので、党運営の方針は自分たちで決めて、自分たちで執行する形になるからだ。

これでは誰が見ても党内民主主義からはほど遠い「役員会独裁」と言わざるを得ないだろう。ではこれまでの「代表独裁」から「役員会独裁」に変わったことで何か改善されたのか。代表は総会で選出されるのではなく、別途規定される「代表選挙規則」によるものとされまだ公開されていないが、構成員に加え、今回導入された「オーナー」と「フレンズ」メンバーによる一票投票で選出される仕組みだろう。代表はいわば大統領選挙的に選ばれることになる。問題なのは、代表は3年の任期期間が規定されているだけで、議決機関である総会や役員会に代表に対する解任要求などの統制方法が何も規定されておらず、代表と議決機関はリンクされていないことである。しかし、他方で代表は議決機関である総会や役員会のメンバーであり議決権を持っているのだから、党組織の上に立つこれまでの「代表独裁制」と実質的には何も変わっていない。「代表独裁制」批判については、過去ポスト『改めてれいわ新選組規約を考える』(2019年12月)、『れいわ新選組の岐路 -山本私党からの脱却-』(2020年8月)、『れいわ新選組の規約改正 -山本私党脱却いまだ見えず-』(同)、『参院選に突入したれいわの現在』(2021年10月)で時系列に沿って述べてきたので参照いただきたいが、そのエッセンスだけを『改めてれいわ新撰組規約を考える』(2019年12月)から引いておきたい。ここで参照されているのは旧規約である。

れいわ新選組は、国会議員と議員予定候補者のみで構成され、一般党員は存在しない党である(第4条)。また議決機関は総会とされ(第5条)、党には代表が置かれ(第6条)、代表が議員予定候補者を選定し、総会の承認を受けるとされるが(第8条)、代表は総会で選出されるのか、任期はいつまでなのかは書かれていないし、総会の権限も予定候補者の承認以外は明記されていない。代表と総会の意見が対立した場合、最終決定はどうなされるのかも不明。また予定候補者は総支部を結成できるとされているが(第9条)、それがどんな権限でどんな組織かも書かれていない。さらに、支持者や後援者との関係についての規定もない。
さすがにこの規約を「党ならざる党だから」という理由でそのまま肯定することはできないだろう。とりわけ代表の選出手続きや権限、任期が書かれていないのは致命的な欠陥である。なぜならこの規約では、代表である山本太郎を制約するものが何もなく、事実上彼が党を独裁するからである。たとえ山本太郎の指導性を誰も(議員や支持者の大多数)が認めるとしても、およそ党の代表が党内の手続きによらず党の上に君臨し、独裁を肯定するのは近代政党とは言えない。愕然とするのはここである。

こう考えてくると今回導入された「オーナー制」と「フレンズ制」は、代表選で投票権を持つからという理由で(つまり支持者、賛同者を党運営に参加させ党内民主主義を進めたという理屈で)「代表独裁制」への批判をかわしながら、(彼/彼女たちは投票権以外に党運営には参加する権限を持てないのだから)実質的に「代表独裁制」を維持するための「お飾り」に過ぎないように思われる。もちろん今後現代表である山本太郎に匹敵する、あるいはそれ以上の代表候補が現れれば「代表独裁制」の弊害が減少することもありえるだろう。しかし、「代表独裁制」がなぜダメで、党内民主主義がなぜ大事かといえば、誰が代表になっても党の意思が党員の総意で決められる仕組みにすることで代表が党員を無視して独走するのを防ぐことが必要であり、党の運営上不可欠だからだ。そして党内民主主義の大前提は「党の主体とは党員であり、党の方針と運営は党員が決める」(いわば党員主権制)ことであるが、残念ながらこれまで述べてきたように「オーナー」も「フレンズ」も党員として位置付けられていない。したがって、この両制度は「党員もどき」の欺瞞だと言わざるを得ない。およそれいわがまともな党であろうとするのであれば、組織問題で欺瞞は許されない。

代表独走のリスクは、直近でロシアのウクライナ侵略をめぐって代表山本太郎(さらには政策審議会長である大石参議院議員)が、「ロシア・ウクライナどっちもどっち論」を展開したことで露呈した。この「どっちもどっち論」の誤りと弊害については4月3日付のポスト『ウクライナの現実と「絶対平和主義の罠』で指摘したが、4月4日現在軌道修正されていない。だがウクライナ側が奪還したキーウ周辺の村ブチャで、ロシア軍が撤退の際実行したと見られる無差別的な大量虐殺が明らかになりつつあり、国連や国際司法裁判所もロシアによるジェノサイドとして追求する動きが始まっている。したがって、れいわの「どっちもどっち論」の誤りは今後党の内外でシリアスな影響を与えることになるだろう。今後、党の構成員である人たちの中から誤りを是正する動きが出てくることを期待したいが、現状では困難だろう。

私たちは、これまで留保を付けながらもれいわ新選組を支持してきたし、多少とも支援活動をしてきたが(れいわ結成以来、この党をどう見てきたかはサイト「ノード連合」の『れいわ新選組を追う』コーナー所収の24本の記事を読んでいただければお分かりいただけると思う)、このポストで述べてきたように、①「オーナー制」と「フレンズ制」が党員制と位置付けられておらず、両制度が「代表独裁制」をあいまいにする「お飾り」として導入された可能性があること、さらに➁ロシアのウクライナ侵略を「どっちもどっち論」の立場を取ることでロシアの国際法違反行為を相対化し、ウクライナ民衆の抵抗を不可視化していること、そして③陰謀論への傾斜など、もはや留保付きであっても支持するのは難しくなった。①はれいわ内部の問題であり、今後「代表独裁制」が改善される可能性はゼロとは言えないだろうが、➁と③のロシアのウクライナ侵略をどうとらえるかは倫理にもかかわる問題であり、私たちとしてはとうてい看過できない。以上の理由で、今後は野党の一員としてはれいわを支持するとしても、それ以上に個別の党として支持は取りやめることにしたい。



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