数学の試験と空飛ぶ空母の夢

船の上で数学の試験が始まるところだった。床はよく磨かれた暗めの無垢材で、お寺の廊下のようだった。そこに薄い座布団を敷いて、板一枚分高くなった床を机がわりにして、友人たちと試験をしていた。もう国語と英語の試験は終わっていた。

あと数秒で数学の試験が始まるという時になって、私は薄い木でできた何かの説明書を筆記用具と間違えて机の上に置いていたことに気が付いた。慌ててカバンの中から鉛筆を取り出して、木の説明書をしまおうとしたら、案の定先生に見つかってしまった。

もう試験は始まっているというのに、先生は「その木でできた紙は何だ」と問い詰めてきた。私は「これは先日軽井沢で買ったお土産に入っていた説明書です。見てください」と言って先生にその木でできた紙を渡した。先生は、「ふん」と言ってその紙を置いて立ち去った。私は漸く数学の試験問題に取り掛かったけれど、難しくて一問も解けなかった。

数学の試験が終わって、みんなで船のデッキに出た。そこへ、前方から飛行機がかなりの低空飛行で船の横をかすめて飛んでいった。飛行機の後ろには飛行機雲ができ、飛行機の前にも飛行機雲ができていた。多分、この飛行機の前にも飛行機が同じ針路で飛んでいたのだと思った。

その飛行機が船の横を通り過ぎたと思ったら、一機、また一機と飛行機が同じように飛んできた。どれも前に飛ぶ飛行機が作った飛行機雲をなぞるように飛んでいく。

飛行機が飛んでくる方向を見ると、そこには飛行船のような形をした航空母艦が飛んでいた。飛行船の風船の尻尾の部分が口を開けていて、そこから飛行機がポコポコと吐き出されていたのだ。

最後の飛行機が吐き出された後、航空母艦の船員たちが私たちの存在に気がついて、こちらに向かって飛んできた。私たちは「おーい」と手を振った。空母の船員も私たちに向かって手を振りながら、デッキに空母を寄せてきた。空母と船の距離が近くなって、お互い手の届く距離になった。空母の船員たちは皆こちら向きのシートに体をベルトで固定して座り、こちらを見下ろして微笑んでいた。一番右に座っていた船員は黒髪ぱっつん前髪のツインテールのすました顔をした女の子だった。綺麗に切りそろえられた前髪には立体的なデコレーションシールがバランスよく貼ってあって、私は今は前髪にシールを貼るのが流行っているのか、と思った。

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