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それはもう人生の一部だから

人に語れるほどの恋愛はしたことがない。映画やドラマの恋愛模様を見る度に、それが現実離れした妄想でしかないのでは?なんて穿った見方をしてしまう。

だからといって私自身が恋愛に興味がなかったのかといえば、そんなことはない。周りに男子しかいない高校生活では、友人たちと女の子とどうやって仲良くなるかということばかり話していた気がする。実際、友人のツテで他校の女の子たちとカラオケに行ったり、お花見や花火を見に行ったりする機会もあった。そんなことをしているうちに周りの友人たちは彼女を作って楽しい高校生活を送っていたようだ。私も気になる子には何人か出会ったが、良く言えば控えめ、悪く言えば消極的な性格が災いして、結局彼女がいない高校3年間になってしまった。

大学生になってから一人暮らしを始めた。私が学生生活に求めたもの。それはもちろん好きな女の子を見つけて、付き合って、毎日がエブリデイな楽しい日々を送ることだった。同じ学部で知り合った女の子をデートに誘ってみたり、友人たちと積極的に合コンに参加したりしてみたものの、一向に彼女はできなかった。そうこうしているうちに私はバスケットボール部の活動に力を入れるようになり、恋愛への情熱は少しずつ薄れて行った。

授業と部活、そしてバイトで忙しくしてたある秋の日。私は突然、バスケ部の後輩の女の子に呼び出され、付き合ってほしいと告白された。その子は部活の中でも目立たない存在で私はその子のことを名前くらいしか知らなかったため、とても困惑した。そして丸一日考えた後にその子の申し出を受けることにした。

お互いの情報をほとんど持たないまま付き合い始めた私たちは、少しずつ距離を縮めていき、数か月かけて関係性を深めていった。それまで私は、彼女を作るために自ら好きな子を見つけてその子に告白するという、自分目線での行動しかイメージしていなかったのだけど、このときはその子に見つけてもらったことで新たな関係が構築できた。こんな出会いもあるんだということ自体が新たな発見だったし、その子と付き合いを進めていく中で、他人と深く関わるには長い時間が必要なこと、そして心を開いて話し合うことが大切だということを学んだ。

その子とは私が大学を卒業してからも数年間付き合っていたが、遠距離になっていたことと生活環境が変わったことによるすれ違いにより別れてしまった。それ以降、連絡を取り合ったこともないので、今どこで何をしているのか全く知らない。でもたまにその子と一緒に居るときによく聴いていた音楽を耳にすると当時のことを思い出す。特に、付き合い始めて間もない頃に聴いていたコールドプレイの『Yellow』は、私の心を少しだけきつめに締め付ける。


Look at the stars
Look how they shine for you
And everything you do


この曲の歌詞は、このフレーズで始まり、このフレーズで終わる。


当時、歌詞の意味なんて考えたことは無かった。ただ、その音の美しさに聴き惚れていただけだった。今、改めてその歌詞の意味を考えてみると、若かった当時の二人の様子に合っているような気もする。

それはもう過去の話だ。

でもそれは事実として記憶に残っているし、その経験は間違いなく私の人生の一部になっている。

過去を美化しているだけなのかもしれないけど、その子と過ごした時間は若かりし頃の一つの輝きとして、私の心の引き出しの奥にずっと残されるものの一つなんだと思う。



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この記事は、フォローさせていただいているMapleさんの記事を読んで書こうと思い立ちました。


Mapleさんも書いていらっしゃるとおり、過去の恋愛の話はあまり語りたくないことの一つだと思います。でも、こういう機会でもないと、誰かに語ることもないまま終わってしまうことでもあると思う。

久しぶりに当時のことを思い返して、20年近く経った今、自分なりにその経験を消化できていることを確認できたことが一番の収穫だったかもしれません。

締め切を過ぎてしまいましたが、良い機会を与えてくださったたぬきの親子さん、Mapleさんに感謝申し上げます。

ありがとうございました。

#愛した人・愛する人が重なる曲






おわり

サポートいただけたら、デスクワーク、子守、加齢で傷んできた腰の鍼灸治療費にあてたいと思います。