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2年半ぶりに帰国した海外居住者が日本で最初に買ったもの

4月に一時帰国しました。
2年半ぶりの日本です。

日本に入国する際、オーストラリアからの帰国者は、3回のワクチン接種済み & 渡航前後のPCRテストが陰性であれば自宅待機不要になったのです。

ヤッター!
 
羽田空港に到着。

国の玄関である空港は、その国の匂いがすると言われます。
オーストラリアはちょっと日向臭いというか乾いた香りがするような。
羽田と成田はよくわかりません。
自分の家の匂いがわからないのと同じですかね。
 
到着後、羽田空港でPCR検査が終わると、合格発表のように「自分の番号」が電子掲示板に出るのを待ちます。陰性を祈りながら待ちます。

...ていうか、これ、陰性の番号が出るんだよね。

『コーラスライン』じゃないよね。

「番号が出た人は陽性です。隔離します」ってことないよね。 


PCR検査を待つ間、羽田空港で買ったもの:こんにゃくゼリーと、伊右衛門特茶と缶コーヒー

2年半ぶりの「日本の自販機」!

海外からの旅行者が「ワンダホー!」とトリコになる、日本の自販機!

自販機はオーストラリアにもありますが、値段が高いし、おつりは出ないし、カードは飲み込んじゃうし、書いてある電話番号は通じないし、いわば、ぼったくりバーです。お客はカモです。泣き寝入りです。

缶コーヒーは、オーストラリアでも最近になってBossが輸入されるようになりました。$3.30(約300円)します。お中元・お歳暮によいですね。
 
私は2001年にオーストラリアに移住してから、毎年2,3回は帰省して実家に寄生しています。

最初の10年間、買いこむ定番は

ユニクロ・無印・ダイソー、スーパーで日本の食材(梅干し・高野豆腐・切り干し大根・昆布・鰹節・ふりかけ・緑茶)、マツキヨで胃薬・風邪薬・虫よけ、でした。
 
その後ユニクロ無印ダイソーが豪進出。日本で買うユニクロの量がぐっと減りました。
 
ユニクロに代わって、「買い込みリスト」の上位に台頭してきたのが化粧品。

とくに化粧水。
こちらでは、保湿を目的としたいわゆる「化粧水」があまりありません。
基本は「拭き取り化粧水」なんですね。拭き取り化粧水ってのは、ピーリング剤が入ってるから、これを日本風にたっぷりバシャバシャつけると、あな恐ろしや!なことになる。だめだめー絶対ダメ。


「化粧水パック最強」「1週間で1本使うべし」というネット記事を鵜呑みにしてからは、毎回、ビックカメラで「ハト麦化粧水」を6本買って帰ってました。

あと、お酒。日本酒を税関申告しなくてOKな量(2.25L以上は申告)をスーツケースに詰めて、割れないようにそろそろと歩く。

化粧水とお酒がぎっちり詰まったスーツケースは、ちゃぷちゃぷ音がして、金魚が入ったでっかい金魚鉢を運ぶココロモチでした。
 
2020年と2021年。

メルボルンは、「世界で最も過酷で長いロックダウン」を経験しました。
海外旅行なんてとんでもない。外出は、自分の家から5キロ四方以内、1日2回、家族以外は会っちゃダメ、という日々。
 
このとき、驚愕すべき事実を発見してしまった。
「つーか、どういうこと!?」と思った。
 
驚愕すべき事実:日本での買い出しがなくても、全く生活が変わらない
 
今まで、あれだけひーひー言って、年に3回、目当ての品々を買い集め、スーツケースに馬乗りになってなんとかギューギューに押し込み、重量オーバーか否か・・・とドキドキ肥大した心臓で、よいこらせーどっこいしょ!と人目もはばからず掛け声をかけて、スカイライナーに乗り込んだ苦労はなんだったんだ...!?
 
過去二年で、メルボルンでも「日本の化粧品」「日本の薬」が流通するようになりました。

日本に行けない中国系・韓国系の人たちの「日本の胃薬が欲しい!」「『蒸気でアイマスク』が欲しい」の声に呼応するかのように、ローカルのお店で、日本製品を見かける率がグングン上がっていきました。今や、うちの近くの小さい八百屋さんでも「太田胃散」が手に入ります。

八百屋さんで太田胃散!

食品もしかり。大阪出身の友人は「昔はお好みソース、担いできたもんやで」「今はフジマート(日系食材店)で買うても、値段変わらへんもん」。
 
日本到着初日に話を戻します。

羽田空港からモノレールと山手線を乗り継いで、都内の実家に到着。
夜8時。コンビニに直行しました。

初日の夜に買ったもの:コンビニのおにぎり

ああ、おにぎり!
イギリス留学から帰国した夏目漱石も、ドイツ留学から帰った森鴎外も、きっと「そうだ!そうだ!」と激しく同意してくれるでしょう。鮭のおにぎり。梅のおにぎり。ご飯と海苔のハーモニー。

デザート・菓子パンも食い入るように一つ一つ見つめます。

うちの女子中学生は大きな声でつぶやいた。

「コンビニに住みたい・・・・」

『JCコンビニに住んでみた』とかやめてね!かーさん捕まるからね!
 
するすると時は過ぎ。3週間の日本滞在の終わり。
 
帰りのスーツケースは、エコノミー預け荷物の限界23㎏×2個。
プラス手荷物。

・・・いったい何が入ってるのだ。
いきなり地球の重力でも強まったのか?といぶかる重さである。
 
そうだ、あれだ。

4月初め、日本到着3日目のこと。
池袋のジュンク堂書店におもむき、上へ下へと往復した末に、かご一杯の本をレジへ運んだ。
レジに運ぶだけでひと苦労の重さ。その時点で「買った本は、これから家まで持って帰らねばならない」という単純な事実を失念していました。

レジがゴールだと思ってた!

なぜ学ばないのだ、人類は!!
 
レジの書店員さんは優しく「1万円以上は宅配しますけど」と言ってくれたけど、こちらは、実家から義実家へと行ったり来たりする身。

いわゆるあれだ。「住所不定」です。犯人の名前の前にくっつくやつ。

不審者に思われないよう「いえ、持って帰ります」とキリっといい顔をして宣言してしまった。

外に出ると氷のような雨。

歩きながら靴下がじわじわと湿ってきます。

紙袋が濡れて破けたらどうしよう、と気が気じゃなかったです。雨の街トーキョー。いい思い出です。
 
 2年半ぶりに帰国した海外在住者が日本でタガが外れたように買ったのは
 
本と漫画
 
でした。

日本の「紙質」って素晴らしいですね。しっかりとした重量がありますね。すべすべしていますね。ほおずりしたくなる。アブラで汚れるからやめてよっ、とコドモが嫌な顔をする。
 
ネットで日本のニュースを読んだり、漫画を読んだりしているから活字に飢えている自覚はなかったのです。本屋さんで大量の本たちを前にすると、おーおー!おー!と手に取ってしまった。家に連れて帰ってしまった。文庫本の、あの、手のひらの上に存在する「重さ」がいいんですよね。

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