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ムトゥルさん

新聞を開いて一番最初に読むのは、「Odd Spot」と題された、5センチ四方の小さな記事です。

「侵入者に撃たれた銃創を、猫のひっかき傷だと思って放っておいたアメリカ人男性の話」

とか、ツッコミのマグネットみたいなヘンな事件ばかり扱っています。

この前はこんなニュースでした。



トルコのムトゥル氏(50歳・男性)が友人たちと飲んで帰りが遅くなり、心配した奥さんが捜索願を出した。

ちょうどその頃、いい感じに酔っぱらったムトゥル氏は深い森の中を家路に向かっている最中だった。

森の中で捜索隊と出会ったムトゥル氏は「なになに?誰か探してるの?俺も手伝うよ」と捜索活動に加わり「おーい!おーい!」と数時間に渡って歩き回った。

だんだん酔いがさめてきて、捜索隊の人々が探しているのが「自分」だと気づいた。

自分を見つけることに成功したムトゥル氏は非常に恐縮してみんなに謝り、捜索隊と一緒に帰ったとさ。



捜索隊と一緒に数時間も自分を探し回っていた、というのがシビレますね。

大勢を巻き込んだ、自分探しの旅!

「・・・あれ?みんなが探してるのって、俺じゃね?」

とハッと気づいたときのムトゥルさんの顔が見てみたい。

発見したことをみんなにどう知らせたのか知りたい。私だったら、右手で左手を掴んで「ここにいましたよー」って叫んでみるかなー。いや、怒られそうだから「捜さないでください」のメモを置いて失踪するか...。

『人狼』というゲームをご存じですか。

人間の中に紛れ込んだ人狼を探し当てて血祭りにあげるのです。

自分が人狼になると村人のフリをしたりします。殺伐としたゲームです。

そういえば、大ヒット中のNetflix『イカゲーム』の制作者が

「何年か前に同じ企画をプレゼンしたら『殺伐としすぎている』という理由で却下されたんだけど」

と言っていた。

最近の娯楽は「殺伐」がカギなんですかね。

この『人狼』を今年のお正月、友人たちと遊んだんですが、最後まで誰が人狼が全然分からなかった。結局、日本語ペラペラのオージーが人狼だったんだけど、彼はこのゲームをするのが初めてで、しかも「狼」という漢字を知らなくて、自分が人狼であることに気づいてなかったんですね。だから周りも全く疑わなかった。

「気づいていない」というのはある意味、無敵です。

学生時代、まだ自動改札がなかったころ、定期券の期限が切れてるのに気づかず1か月フツーに通学していたことがありました。

あれ!?と気づいた時、気づかなかった自分のことはポーンと棚に上げて、なんで駅員さん気づかなかったんだろ!?とびっくりした。

結論。

本人の「気づいていない」は周りにも「気づかない」の力を及ぼす。だからなに?って話ですけど。

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