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転ぶお婆さんの正体とは! 衝撃の事実

むかし、巣鴨に住んでいました。

巣鴨の地蔵通り、いらしたことはありますか?

おじいちゃんおばあちゃんの原宿、と呼ばれる賑やかな通りです。
高齢者の街頭インタビューが欲しいとき、テレビ局は必ずここにやってきます。
 
年の暮れ、お正月用品をアレコレ買い求めて帰る途中のこと。
地蔵通りは高齢者の方がとても多いです。
高齢者が高齢者を、お互いで支え合うようにして散歩していることもあります。
車いすに乗ったり、杖を突いている人も多いです。
 
年末の人ごみの中、前のほうを歩いていたちんまりと小さな背中の、高齢の女性がよろりとよろけました。

あ、あぶない、と思ったら、両脇を女性二人に支えられていました。良かった。

お婆さんは、両脇の女性に何かお礼を言っています。
 
その様子を見ながら、自分の老後はどんなだろ?と思います。

なんだか自分だけ年を取らないような気分で、でも頭では「その時」がくることはクッキリと分かっています。

でも、どうしようもない。
手も足も出ない。

誰だったか、アメリカの俳優が「老いること」について言ってました。

「『老いと闘う』なんていうけれど、これは闘いですらないんだ。大虐殺なんだよ。こっちはなすすべもないんだから(It’s not a fight. It’s a slaughter)完敗なんだ」。
 
二人の女性に支えられてとぼとぼと歩く、お婆さんのまるっこい背中を眺めて、感じた。

この世に生まれたからには、毎日毎日にしがみつくようにして生きるのだ。ただ生きる。息をする。それしか生き終えるすべはないのだ...

雪山と対峙し、おのれの非力さを痛感し、すがすがしいような、さっぱりしたような、心が冷えるような、沸き立つような、ココロの状態でありました。
 
その「冷えて高揚した」気分のまま、家路に急ぎます。
両手に持ったスーパーの袋は、かまぼことか栗きんとんとかお餅とか大根とか、ゴロゴロした重いものばかり入っているので、ときどきよいしょと持ち直します。
 
途中、畳屋のおじさんと会いました。

「見た?とうとう捕まったってね、あのババァ!年末は稼ぎ時だもんなぁ。スリまくってたんだよナ、きっと」

・・・?

・・・!!

あの小さなお婆さんは、有名なスリだったんだって!

「凄腕のナントカ」と異名をとってたんだって!

もう何回も捕まってるんだって!

両脇を支えていたのは婦人警官だったんだって!

逃げられないようにがっちり捕まえてたんだって!

あああ・・・
 
「お転婆」と言う字はなぜ「転ぶお婆さん」と書くのだろう、と不思議に思ったことがあります。そういうことだったのか、なるほど。

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