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オカンがアルゴリズム

先日Uberに乗った時、インド人の運転手さんと話していたら「Arranged marriage(お見合い結婚)」の話になりました。

何年か前にNetFlixで『Indian Matchmaking』というインド上流社会のお見合い結婚リアリティ番組が放映されまして、特にメルボルンではインド人コミュニティが大きいこともあり話題になりました。彼らにしてみると「自分たちにとってフツーであるお見合い結婚」が西洋でカルチャーショックとして受け止められていることを面白がっている風もあります。

「でもさ、Arranged Marriageって結局Tinderとかマッチングアプリと一緒なんだよねー」

と運転手さんは言う。

えええマジか?インドの古くからの風習がTinderと同じ、なんて言ったらガネーシャに怒られやしないか。

「The only difference is... まあ違いがあるとすれば」

ふむふむ

「Your mum is the algorithm. お母さんがアルゴリズムなだけで」

オカンがアルゴリズム!!!!???

曰く。インド人の見合い結婚では、お母さんがものすごいネットワークを駆使するのだそうです。総指揮官。

お母さんだけでなく、お父さんもお兄さんもお姉さんさらには親戚も、一族総出で、口コミネットワークを縦横無尽に操り、良さげな人を探す。相手のバックグラウンドチェックも完膚なきまで行う。

星の数ほどある『Kundaliマッチングサイト』を駆使して相性をチェックする。『Kundali』は占星術みたいなもので「太古の昔からある」んだって。「スコアは36点が満点なんだけどさ、18点以下だとまずだめだね、うん」。

そうやって考えてみると、確かにお母さんはアルゴリズムですね。

ほら、よく、スマホをテーブルの上に置いてコスメの話をしていたら、SNSの「あなたへの広告」にまさにその化粧品の宣伝が出てきて「えーやだ、聞かれてたのかなー?」なんてことがあるじゃないですか。

最初の頃こそ「これって偶然だよね?そんな近未来みたいなことがまさか」と半信半疑だったけど、いまや「まあそんなもんだよね、すべて見られてるよね、聞かれてるよね」と思う。そう自然に納得してしまうこと自体、すごい世の中になっちゃったよな、と嘆く。しかし。

思い返せば、小学三年生の時、隣の席の男子が超絶いけ好かない奴だったので、日記に虚実ないまぜにして罵詈雑言の限りを尽くし、ココロを晴れ晴れとさせた翌日。いつのまにか母が学校に「席を変えてください!」と電話していた。

そうでした。我々は思い出さなければならない。このようなことは昭和のころからくりかえされているのでした。

子供が石ころで遊んでいるのを見れば、将来の学者か!もしくは宮沢賢治か!と学研の『鉱物図鑑』をポチってさりげなくソファのあたりにおいて置き、読まなければ「高かったのに!」とふてくされて元を取るために自分で読む。

一度「ピンクの服が好き」と言ったら何歳になってもピンクの服を押し付け、スポーツに興味を示せば、あらゆるスポーツ教室の申込書を集めまくる。一回検索しただけの商品の広告をことあるごとにあの手この手で出してくるGoogleの広告っぽい。

ちょっと口にしたワードをがっつり別の文脈に置き換えて、こちらが思ってもみなかった斬新な動きを繰り出してくるところもAIアルゴリズムと似ている。オカンアルゴリズム。

オカンアルゴリズムは、思い通りにいかないと逆上する傾向がある。そのうちAIもフキゲンをむき出しにしてくるのでしょうか。「こんだけ広告出してるんだからさっさと買えっちゅーねん、ウキーッ」みたいな。

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