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ドンデスタ!ドンデスタ!

先日タクシーに乗った時、中南米の音楽がかかっていました。

運転手さんは30代くらいの男性で、コロンビア出身だそうです。私は大学の第二外国語でスペイン語を勉強したので、こういう時ちょっと嬉しいのです。スペイン語で考える人になりたい、と願って、いっときはかなり真剣に勉強しました。そのあと、だんだん熱が冷めてきちゃって、今やスペイン語のひびきは「んー、どこかで聞いたことがあるなー、この音楽。前世かな?」ってくらいです。

バックミラーで運転手さんの眼が見えます。

細くなってうつらうつらしているのが分かった。

となりの友人が「まずいよ...運転手、寝そうだよ!?あんた、スペイン語できるんでしょ!話しかけて!早く!なんでもいいからぁー!」と押し殺した声でささやいた。こちらも命がかかってるから焦ったのなんの。

ひとまずスペイン語で

「ドンデスタビブリオテカ!」と叫んだ。

「ドンデスタ」はスペイン語で「どこですか」の意味です。シャレじゃなくてホントです。

ビブリオテカは図書館。

「図書館はどこですか」はスペイン語初心者が必ず覚える構文なのである!

続けて

「ビールクダサイ!」
「アタマガイタクテハキケガシマスー!」

と、思いつく限りの文章を頭の奥から引っ張り出して叫んだ。

引っ張り出しすぎて、脳みそが縮んだ。

運転手さん、急に後ろからへんなスペイン語で叫ばれてさぞ怖かったことと同情します。

やべぇ!こいつらやべぇ...!

眼がカッと見開いた。良かった良かった。

青山墓地の近くには、タクシーだけが駐車できる場所がありますね。(今もあるのかな?)ずらーっと並んだタクシーの中で、運転手さんがずらーっと仮眠をとっていました。昼寝行列。壮観。
 
 あのへんでタクシーを拾うと、ちょっと変わった運転手さんが多くて楽しみな反面こわごわした気分もありました。


バックミラーでチラチラこちらの顔を見ながら「お客さんの前世、教えてあげましょうか」と明るい声でサラッという人がいた。

いや、いいから!人相見なくていいから前見て、まえーー!

バブル崩壊後は「ワタシ、もとは証券マンだったんスよ」という人がいたり、「地方から出てきたばかりで道が良く分からないんです、すみません!!」と、乗り込んだとたん大きな声で怒鳴るように挨拶(?)する運転手さんもいた。
 
池袋で乗った運転手さんが話してくれました。

お婆さんがね、杖を忘れてたんですよ。


あ、と思って、連絡がついて届ける途中に気づいたんだけど、それ仕込み杖だったんだよね...

仕込み杖とは、たしか座頭市にも出てきた、中に刀剣を隠した武器ですね。

お婆さんは小柄で色白の上品な人だったという。運転手さんがどんな顔と口上で杖を返したのか、モノカゲに隠れて見たかったです。

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