見出し画像

とりあえず、信じた方向へ歩いてみる~初めてのロンドン

先日、日本橋三越の英国展に誘われて、朝10時にデパート集合の約束をした。

朝に弱いのでバタバタしてしまい、少し遅刻しそう。
日本橋三越から少し遠い浅草線の「日本橋」駅から、地下通路の誘導に従って向かったところが、途中で地上に出てしまい、はて? どちらに向かうんだったか……。

えい!っと決めて歩き始めたら、なんだか様子がおかしい。地図アプリで見たら、見当違いの方向に向かっている。
慌てて先に到着している友人に「見当違いの方向に歩いてた!もうちょっとお待ちを」とメッセージしたら、「信代さんらしい」と返信。

私らしい?
見当違いの方向に歩く私が?

一瞬ムッとしたが、そうね、確かにそうです(笑)。
よく確かめもせず、見当違いの方向に歩き出す。

私の旅は、肝心なときに「見当違い」をやらかしてばかりだ。


初めての海外旅行で、「見当違い」デビュー

それで痛い目にあったのは、大学の卒業旅行として行った初めての海外旅行だ。

「ユーレイルパスで巡るヨーロッパ21日間の旅」。
パックツアーに、ひとりで申し込んだ。
ツアーだったけど参加者は3人だけで、出発の成田空港で航空券とホテルのバウチャーを渡され、「では、お気をつけて~」と送り出される、添乗員なしのツアーだった。

到着したのは、イギリスのガトウィック空港。
まだ春浅い3月で、着いたのは17時くらいだったか、空は薄暗くなっていた。

空港からホテルのあるハマースミス駅までは、ブリティッシュレイルでまずはロンドン中心部のヴィクトリア駅まで出ないと行けない。
そこから地下鉄に乗り換えて、最寄り駅のハマースミス駅まで向かえばいいのだが……。

地下鉄の中で行き先がわからなくなる

何を思ったか、地下鉄の車中で「どこで降りたらいいのか」がわからなくなってしまい(正解はハマースミス駅)、ガイドブックでかろうじて記憶のあった「マーブルアーチ」駅で降りてしまったのだ!

スマホがある今なら、こんな間違いは絶対に起こらないと思うけど、ときは1990年の3月である。もう想像すらできないと思うけど、当時は、インターネットもなかった!!
だから、行き方を検索することも、地図を確かめることも、すべてガイドブックか地図しかなかったのだ。

そして今思い出したけど、私は行き先についても宿泊場所についても、ろくに調べていなかった(背筋が凍る)。
いや、成田空港でホテルのバウチャーと、現地語で書かれた周辺の地図を渡されたので、自分がどこに泊まるか、出発間際までわかっていなかったのだった(いま思えば、ツアーを企画した会社も結構、無謀だ)。

実は、このツアーで泊まったホテルは、都心部から少し離れた場所のことが多く、そうそう、バルセロナではバスに乗って行ったし、チューリッヒも隣の市だった記憶がある。

そんなこともあって、都心部から少し離れたハマースミスは頭の中のロンドン地図にはなくて、かろうじてわかるマーブルアーチ駅で、「とりあえず降りよう!」と思ったのだ。

とにかく地図を購入。歩いて行くしかない!

「どこに行くのかわからないから、とにかく降りて地図を買おう」
駅の出口から目についたスタンドに向かい、地図を買った。
地図はすべて英語表記(当たり前)で、日本で見慣れた地図と描き方もちょっと違う。しかもハマースミスは、その地図の端の切れそうなところにあった。

このときすでに18時くらい。あたりはもう完全に夜である。
地図で方向を確かめた私は、「とにかく歩いていくしかない」と決め、大きな道路に沿って歩道を歩き始めた。トランクをひきずって……と書きそうになったが、この旅のときはボストンバッグ一つだった(笑)。

30分ほど歩いただろうか?
ハマースミスはまだ遠い気がする(なぜかこういう勘は働く)。自分がどの程度まで進んだのか、向こうからやってくる男性に尋ねてみることにした。

ホテルの周辺地図を見せながら、
「ここに行きたいんだけど、どう行けばいい?」
男性は、軽く目をみはって驚き、
「ここへ歩いて行くの?」

うなずく私。

「この道をまっすぐ行けば行ける。でも、とても時間がかかるよ」
男性は、親切に答えてくれた。

振り返ってみると、このときの私は、なにかちょっと変だったと思う。
30分も歩いたから、体は十分に温まって少し汗ばんでいて、
「とにかく歩いてたどり着くんだ!」
と、妙な使命感に燃えていた。

結果として、私は無事にハマースミス駅の近くのノボテルホテルに到着した。19時30分をすぎていたと思う。

初めてのロンドンなのに、しかも夜なのに、1時間以上も歩く。
なによりハマースミス駅は、地下鉄の駅なのに!(笑)

見当違いでも歩き出すことで得たもの

今ならもちろん、違う答えを出しているけれど(スマホがあれば大部分は解決)、あのときに「歩いて行けば必ず解決する」という自信を得たことは、私の人生にとって大事だったなあと思う。

いやまあ、その自信が、「見当違いの方向へ、とりあえず歩き出す」をやらせるんだけど。性懲りもなく(笑)。

とりあえず、信じた方向へ歩いてみる

この生き方は、結構、気に入っている。

だいぶ大人になったいま、「動いてから考えろ」「構え!撃て!狙え!」という言葉をよく目にするけれど、動いてから考えても大丈夫、と思える。

最後は、2本の足があればなんとかなるから。
一歩一歩、進んでさえいれば、ゴールにたどり着けるから。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?