見出し画像

急性期の経静脈栄養

経静脈栄養って何??

経腸栄養とは点滴で栄養を投与することになります。

現在は口から食べたり、お鼻から胃に管をいれて栄養を投与したり、腸を使用した栄養が主流になってきております。

しかし、点滴による栄養投与は必要でしょうか?


画像1


急性期における経静脈栄養についてまとめました。


経静脈栄養は一般的に経腸栄養に代替するものではなく、経腸栄養での栄養投与が不十分な患者への補完、または長期経腸栄養が困難な患者への代替手段として用いられます。

数千人を対象とした大規模無作為化比較試験では1週間以内の早期経静脈栄養の方が感染などの合併症が多くなり、治療期間なども長くなったと報告されています(4)。

図6


日本で作成された日本版重症患者の栄養療法ガイドライン総論2016&病態別2017(J-CCNTG: Japanese Critical Care Nutrition Therapy Guidelines)(3)では経静脈栄養の推奨はどうなっているでしょうか?

ガイドラインにおいてはJ-CCNTGでは初期の1週間に経腸栄養が20 kcal/hr以上投与できていれば急いで経静脈栄養を開始する必要はないとされています。

西欧諸国を中心としたESPEN(European Society for Clinical Nutrition and Metabolism)の2019年のガイドライン(2)ではどうでしょうか?

ESPENでは3-7日以内に経腸栄養ができない場合に経静脈栄養を開始することを推奨しています。

つまり、経腸栄養で十分な栄養を投与できない場合の補完ということになります。

画像3

一方で米国を中心としたASPEN(American Society for Parenteral and Enteral Nutrition:米国静脈経腸栄養学会)の2022年のガイドライン(1)ではどうでしょうか?

実はASPENのガイドラインだけ全然違います。

ASPENは2016年のガイドラインでは経腸栄養を7日以内に開始できない患者での経静脈栄養を推奨していました。


しかし、2022年のガイドラインでは経静脈栄養が経腸栄養と比べて感染の合併症などのアウトカムが変わらないとして、経静脈栄養と経腸栄養を同等に扱っています。


えーーーー!!!って、感じです。

画像4


経静脈栄養と経腸栄養が同じ???


経静脈栄養のあり方には一定のコンセンサスが得られてきたと思っていたのですが、今後の経静脈栄養のあり方はかわってくるのかもしれません。


意外すぎる推奨で自分自身も少し混乱しています。

今後の経静脈栄養のあり方に注目です!!

医学はどんどん、かわっていきますね。

**********************

筋萎縮ゼロプロジェクト:クラウドファンディング継続中

一人でも多くの重症患者さんの社会復帰を目指してクラウドファンディングを継続しております、御協力よろしくお願い致します。

**********************

画像5

参考文献
1. Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr46:12-41,2022
2. Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN guideline on clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr38:48-79,2019
3. 日本版重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会. 日本版重症患者の栄養管理ガイドライン-総論2016&病態別2017‐ (J‐CCNTG) ダイジェスト版.2018
4. Casaer MP, Mesotten D, Hermans G, et al. Early versus late parenteralnutrition in critically ill adults. N Eng J Med365:506-517,2011


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?