急性期のリフィーディング症候群
急性期の栄養投与ではリフィーディング症候群に注意する必要があります。
リフィーディング症候群って何??って方も多いかと思います。
リフィーディング症候群とは長期間栄養不良状態が続いている患者さんで積極的な栄養を開始した時に意識障害、心不全、呼吸不全など様々な症状をきたす症候群です。
長期間の飢餓によりエネルギー代謝の中心が脂肪中心であったのが、栄養投与により、エネルギー代謝の主体が炭水化物に変化して、それに伴って電解質、リンなどの異常が発生することが原因となります。
重症患者さんのリフィーディング症候群に関して代表的な栄養ガイドラインではどのように記載されてますでしょうか。
日本で作成された日本版重症患者の栄養療法ガイドライン総論2016&病態別2017(J-CCNTG: Japanese Critical Care Nutrition Therapy Guidelines)(1)ではどうでしょうか?
リフィーディング症候群のリスクのある患者では血中リン、マグネシウム、カリウムのモニタリングが推奨されています。
特に慢性的な栄養不良患者、10%以上の急激な体重減少のある患者、7-10日以上の不十分な栄養投与患者などでは注意が必要とのことです。
米国を中心としたASPEN(American Society for Parenteral and Enteral Nutrition:米国静脈経腸栄養学会)の2022年のガイドライン(2)ではどうでしょうか?
残念ながらASPENではリフィーディング症候群に関する具体的な記載はありません。実はASPENのガイドラインはメタ解析が可能なクリニカルクエッションに項目を限定したため、急性期の栄養療法に関して記載のされてない項目が多々あります。
一方では西欧諸国を中心としたESPEN(European Society for Clinical Nutrition and Metabolism)の2019年のガイドライン(3)ではリフィーディング症候群に関してしっかりと記載してあります。
ESPENでは連日のリンの測定、またリンの値が0.65mmol/L(2.01mg/dL)未満、または0.16mmol/L(0.50mg/dL)以上の低下がある場合は1日に2、3回リンを測定する必要があると記載してあります。
またリフィーディング症候群を疑えば48時間は栄養を中断することを推奨しています。
2021年にCrit Careに記載された急性期の栄養療法10箇条でも急性期は1日1回、血中のリンを測定して、30%以上の低下がある場合は栄養投与量を減らす必要があると記載されております(4)。
急性期の栄養療法はとても重要です。
早期経腸栄養、蛋白質投与は社会復帰には欠かせません。
しかし、良かれと思った栄養投与が患者さんに有害とならないように
常にリフィーディング症候群のリスクに関して注意をする必要があります。
多職種でしっかりとモニタリングしていきましょう!
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参考文献
1. 日本版重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会. 日本版重症患者の栄養管理ガイドライン-総論2016&病態別2017‐ (J‐CCNTG) ダイジェスト版.2018
2. Compher C, Bingham AL, McCall M, et al. Guidelines for the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: The American Society for Parenteral and Enteral Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr46:12-41,2022
3. Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN guideline on clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr38:48-79,2019
4. Preiser J-C, Arabi YM, Berger MM, et al. A guide to enteral nutrition in intensive care units: 10 expert tips for the daily practice. Crit Care25:424,2021
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