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急性期の栄養管理でビタミンB1は投与すべきか?

みなさんビタミンB1というとどんな食品を思い浮かべますでしょうか?おそらくビタミンなので果物を想像する人も多いかと思います。

しかし、実際には豚肉に多く含まれてるんです。食品100gあたりのビタミンB1含有量を比較した時に豚ヒレ肉 2.1 mg、小麦 1.8 mg、うなぎ 0.6 mg、オレンジ 0.1 mgです。意外と豚肉に多いんですね!

1日に人が必要なビタミンの量は1.0-1.5mgです。ですので小麦や豚肉なども重要なビタミンB1の摂取源となりますね。

さて、このビタミンB1が不足するとどうなるのでしょうか。ビタミンB1はグルコース(糖)からエネルギーを産生するのに重要な酵素の役割を果たしています。

ビタミンB1の役割


ですので、このビタミンB1が不足するとエネルギーをたくさん必要な臓器である脳や心臓に悪影響をきたします。これらは脚気やウェルニッケ脳症などで有名ですね。

日本は経済的にも豊かな国ですので戦時中のように食べ物がなく脚気になったり、ウェルニッケ脳症になることは少ないですが、ICUにいるような患者ではどうでしょう。

実は報告により異なりますが、ICUに入室するような重症患者の約20%、敗血症患者の10%から多くて70%もがこのビタミンB1が不足しているという報告があります。

ですので、ICUで栄養療法を考える時はこのビタミンB1を投与するかについても考えないといけません。


基本的にビタミンB1が欠乏しているような状態では腸管からの吸収が不良であることが多いでのでビタミンB1を静脈から投与します。さらに静脈から投与しても組織に吸収されずそのまま尿に排泄されることも多いので、静脈から投与する時は数百mgという量で投与します。

ESPENという欧州経静脈経腸栄養ガイドラインでは急性期におけるこのビタミンの投与量について具体的に記載してあります(DOI: 10.1016/j.clnu.2022.02.015)。

外来に通院できるような状態で経口摂取できれば1日10mgを1週間、その後3-5mgを6週間投与。利尿薬を使用している患者では尿からビタミンB1が排泄されることも多いですので1日50mgの経口投与が必要とも記載されています。

ビタミンB1の欠乏リスクが高い患者さん、つまり連日アルコールを摂取していたり、利尿薬を使用していたり、担癌状態にある患者さん、食事摂取をできていない患者などでは1日100mg×3回の静注

ビタミンB1の欠乏が明らかになった、明らかである患者では1日200mg×3回の静注

ウェルニッケ脳症またはそこまではいかなくても脳症が疑われる患者さんでは1日500mg×3回の投与が推奨されております。

またリフィーディングシンドロームを疑う患者さんでは1日1回300mg静注して、1日1回200-300mgの投与を維持、CHDFのような持続透析をする患者では1日100mgの投与が推奨されております。

よく使用されるビタミンB1を含有したものは
アリナミンF(1本に50mg含有)とビタメジン(1本に100mg含有)になります。

つまり、ESPENのガイドラインに基づくと急性期にビタミンB1欠乏を疑うような患者さんでは1日100mg×3回の静注を投与する必要があります。

ビタミンB1は採血ではすぐにでないので、臨床的に欠乏を疑った時に投与の対象となります。

臨床的な効果がどこまであるかは敗血症や心不全で複数の無作為化比較試験やメタアナリシスがありますが、ショックの改善に有効というものや、意味はないとのメタアナリシスなど様々な結果があり有益性はまだまだ研究が必要なところではあります。

しかし、多くの無作為化比較試験は敗血症全例や心不全全例にビタミンB1を投与していますので、対象患者の選定にも問題があるのかもしれません。

ビタミンB1欠乏を疑うような意識障害、心機能低下、アルコール多飲、栄養不良、リフィーディングなどのエピソードなどあれば投与してみるのがよいかと思います。

社会復帰への一歩です!

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