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「うどん」による支配

初めて働いた会社の話です。

「#うどん」で美味しいうどんが食べれるお店の紹介だと期待してきた皆様、すいません。

今回紹介するのはあやしげな香りのするブラック企業になります。

企業情報:イラスト会社(主に不動産関係の絵を描いていました)

ブラック企業というのは、長時間労働というのはもちろんですが、社内には謎のルールが敷かれています。

・20人程度の会社に10名の新卒入社
・なぜか白衣にトランシーバー
・土曜日はDVD
・日の当たらない生活
・社長とエアガン
・土曜日のうどん

今回は、その中の「うどん」にまつわるエピソードを書いていきたいと思います。

A社は、毎週土曜日の夕方、社員の手作りうどんが出されるという決まりがありました。

約20名分のうどんを用意するので、ラーメン屋か!っていうぐらいの寸胴鍋がオフィスに設置されており、大量のうどんをうどん担当が作ります。

うどん担当は、高田さん(仮称)

いわく、このうどんのレシピは社長(格闘家のような体型)が考えたもので、レシピは口頭でだけ伝えられていくという、世紀末に流行ったどこかの国の太い眉毛のお兄さんが使う暗殺拳と同じシステムを引いていました。

ちなみに、うどんには、肉と長ネギとが入っていたと思います。麺も確か製麺所から取り寄せていました。

それだけあって高田さんの作るうどんはとても美味しかったです。他の先輩方も口々に「美味しい」「このうどん最高だわ」という賛辞を送っていました。

分量、手順、時間、全てにおいて高田さんは社長に言われたようにうどんを作っていきます。(実際には作ってるところは見せてくれませんが、そう言っていました。)

ちなみに社長は平日の夕方にやってきますが、うどんの日である土曜日は、ほとんど社長が来ることはありません。

そんなある日、社長が土曜日の夕方にやってきました。

そのため、その日の夕食は社長を含め全員でうどんを食べることに。

高田さんのうどんは、先週と変わらない味で、とても美味しかったのですがそこで突然社長が口を開きました。

社長「このうどん、俺の作ったうどんと味が違う、高田、お前作り方をかえたんか?」

高田「い・・・いえ、社長の言われた材料、分量、手順で作っています」
うろたえる高田さん

社長「でも味違うわ、なぁみんなどう思う?」
他の社員に意見を求める社長

先輩A「確かに・・・言われてみれば、味が違う気がしますね」
あれほど、高田さんのうどんを絶賛していた先輩たちが口々に、うどんへの違和感を語りだしたのです。(いや・・・先週めっちゃ絶賛してたやん・・・)

ぼてじゅうのバイトリーダーがお好み焼きをひっくり返すよに、あざやかに手のひらを返した先輩に違和感を感じながら、

確かに先輩がそこまでいうのであれば、高田さんのうどんも美味しいけど社長が作るうどんはこれ以上の美味しさなのかぁとワクワクしました。

社長「よし、来週は俺がうどん作ったるわ!」
突然社長が言いました。

社員一同「おぉ~久々に社長のつくったうどんが食べられるんかぁ」

社内に広がるどよめきに、私は心を躍らせ、1週間後の土曜日を待ちました。

社長は土曜日の昼頃にやってきて、準備をはじめます。(この人、もはや何屋なんだろう?)

格闘家みたいな体格の人が頭にタオルを巻いて、寸胴鍋をかき回しています。私が就職した場所は確かイラスト会社だったはずですが、、、。

仕事も終わり、ついにうどんを食べる時がやってきました。

社長が作ったうどんを初めて食べることにワクワクが抑えられませんでした。

社長「えぇ感じでできたわ、さぁ食うてみろ」

社長の合図と共に食べ始める先輩たち

先輩A「やっぱ、社長のうどんは全然違いますね・・・コクというか、深みというか・・・」
なんか先輩は、追い詰められた政治家のように良く分からないコメントを社長に伝えている。

でもまぁ、先週のうどんとは全然違うというのだけは伝わってきた。

いよいよ私も食べることにした。

見た目は先週と同じ(材料は同じなので)

そして、味も同じ!え?味も同じ?

そう、1週間前に食べた高田さんと1㎜も変わらない味、上振れも下振れもしない、先週と同じうどんがそこにありました。

でも先輩たちは
「やっぱ社長のうどんは違うなぁ」「うまみかなぁ」「麺の感じかなぁ」という風に、違いの無いものに対して違いを見つけようとしているのです。

ブラック企業における社長とは神(邪神ですが・・・)なのです。神が違うといったら違うのです。これが、支配するということか・・・と妙に納得しました。

そして私は、なるべく早く会社を辞めたいと思うと同時に、もう二度とハローワークで仕事は探さねぇ!と誓いました。

以上です。

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