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『マチネの終わりに』は映画までもが素晴らしかった

なんとも幸運なことに、ここ最近最も心を掴まれた小説『マチネの終わりに』の映画初演+舞台挨拶に行けることに。原作が好きすぎて、映画化が発表されたときに、大きな喜びと期待を覚えた反面、同時に主役のお二人(福山雅治と石田ゆり子)の既にお持ちの世界観の強さに作品が持っていかれてしまうのでは、という不安も感じていましたが・・・そんなもの杞憂も杞憂。なんて素晴らしい作品なんだろうと鑑賞後改めて心を奪われることに。

実は劇場に行く少し前にコルク代表の佐渡島庸平さんが本作に関して絶賛する記事を拝見して、不安がだいぶ吹き飛んでいた一方で、今度はこんなにハードルが上がってしまって大丈夫だろうか、と別の不安がもたげる始末。

そんな緊張感を持ちながら会場に向かい、上映が始まるとあっという間に2時間強が過ぎていた・・・

記事の中で佐渡島さんが触れている通り、音楽がストーリーに加える厚みといい、映像の美しさといい、そして何より福山雅治・石田ゆり子という二人の素晴らしい役者の演技。今となっては蒔野は福山さん、洋子は石田ゆり子さん、この二人しか考えられない。それぐらい二人の持つ雰囲気が、ちょっとした仕草や表情の語りが素晴らしく、時間の尺の影響でカットせざるを得なかった物語の行間を見事なまでに補足し、最初から最後まで集中力が途切れることなく、むしろどんどん物語に惹き込まれる素敵な作品に仕上がっていた。

原作が多くの共感を呼んだ、日本人ならではのプラトニックな恋愛と人の心の機微が役者の演技と繊細なギターの旋律とに相まって綺麗に描かれ、オープニングの伏線が回収された瞬間に流れ出る涙。作中ではすべての主要キャストが英語での演技があり、石田ゆり子さんに至ってはフランス語も含めた三ヶ国語、伊勢谷友介さんはもはや英語オンリー、という繊細さが求められる作品に於いて役者としてもかなりハードな条件があったにも関わらず、見事に演じきった皆さんには脱帽。劇場に二度でも三度でも足を運びたくなる本当に素敵な作品。

また、舞台挨拶では西谷監督、福山さん、石田さん、伊勢谷さん、桜井さんを間近に見てそのオーラに圧倒されつつ、各人が持つ個性と他キャストや会場への気配りの素晴らしさも感じて、改めてファンに。西谷監督は言葉のセンスが素晴らしく、福山さんは立ち姿/姿勢の良さが余りにもかっこよく、石田さんは優しく纏った空気感が素敵で、伊勢谷さんは暖かい場の空気感を作り出し、桜井さんは謙虚さと凛とした佇みを持ち合わせ、本当に皆さん素敵だった。

原作が好きすぎた余りに裏切られるのが怖くて、見るのを躊躇っていたこの作品。こうした形で鑑賞することが出来て、本当に良かった。

映画は娯楽であると同時にやはり芸術なんだな、そう思わせてくれた本作に感謝。

サウンドトラックを聴いて余韻に浸りながら。


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