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ICT教育と子どもの発達

1月28日にNoteに書いた「ICT教育導入に伴う子どもの健康被害予防のための提言」を「ICT教具論からの脱却」というにFBグループページにシェアしてくださった方がいらして、Noteや私のFB投稿、シェアされた投稿にいいねやコメントやシェアが多くありました。

印刷してみたところ、自分のコメントの返信を含め、A4で14枚になりました。まだ返信しきれていないところに対して「後ほど」と書いて2週間経ち、遅くなりましたが、このグループページは公開で誰でも読めるものですので、改めて発信源であるNoteで公開の形でまとめて返信させていただき、シェアしようと思います。

 最初に私の立ち位置を明確にしておきます。
 私は学校教育にICTが利活用されることに対して、反対ではありません。教職員がもっと良いICT環境の中で、ICTを使うための種々の条件が整った状態で業務ができるような支援が喫緊に必要であると思っています。また、子どもたちの心身と脳の健やかな発達を保障した上で、ICTを利活用した教育が導入されることにやぶさかではありません。ICTのメリットは大きいと思っていますので、よりよい形での導入を望んでいます。

 私は昨年度までは大学教授として教師教育に携わっていましたが、今は早期退職してフリーの立場です。今回の件に関して、団体で動いているわけではなく、個人で発信しているのみです。非常勤講師として2つの大学の授業を担当していますが、それらの業務とICT教育に関する発信は直接つながりません。収入にも関係ありません。心理臨床家として、いろいろな年代の子どもたちの体と心と脳の健やかな発達を保障する養育環境を作っていきたいと思っており、今回の発信はその一環です。
 ICTとの関係性についていえば、得意ではありませんが、パソコンやスマホは日常生活の中で使っており、コロナ禍より前からzoomも使っていました。大学の授業や講演などはもちろんオンラインで、対面の時と変わりなく全員参加型のアクティブな授業を行っています。

前回の投稿で私が書いたことは、以下のことに尽きます。

「ICT教育導入のスピード感で、同時に子どもの発達に対するリスクヘッジを取る(危険を予測し、それを避けるように対策する)ことが必要である」

もう少し解説しますと、
人間にとって、便利なもの、役立つものには、多くの場合、副作用があり、たとえば、火の使用も、車の利用も、そのメリットとデメリットを十分に理解して、バランスよく使うことで、社会は発展してきた。ICTも同じで、特に私は心理臨床家として、子どもの健康に対して未知の側面があるICTを学校教育に導入するにあたっては、どのようなデメリットがあるかについて慎重な立場を取っている、ということです。先回の記事は、それを書いたものでした。私一人では手が回りませんので、皆さんのご意見やご協力を得ながら、解決の道を探りたいと思っての投稿でした。
 
それに対して、お読みになった方たち、とくにICT教育を早急に実現したいと希求しておられる方たちの中には、私がICT教育導入反対論者であり、ICT教育導入の動きを止めようとしていると思われた方が少なからずいらしたようです。条件が整うまでは子どもの利用に制限が必要ではないかということも書きましたので、そう思われたのも無理はないかもしれません。研究調査のスタートが遅れれば遅れるほど、一般の保護者や先生たちの不安は高まるでしょう。それは私のような個人が書くレベルで動くようなことではなく、もっと大きな不安になるでしょう。そのような漠然と不安を抱く人たちに対しての後方支援も含めて、活用をしっかりと支援しないままの導入は先生たちの混乱と不安をも招くでしょう。

さて、「ICT教育導入のスピード感で、同時に子どもの発達に対するリスクヘッジを取る(危険を予測し、それを避けるように対策する)ことが必要である」
これに関して「ICT教具論の脱却」の投稿シェアに対して、2019年8月に提言をさせていただいた経産省経済教育室の浅野大介氏からのコメントがありました。

浅野 大介さんのコメント
この先生たちが何回かおいでくださいましたので、つぎのことを申しました。
①子どものゲームやスマホを禁止・制限する規制をせずにGIGAスクール構想を撤回しても意味がない
②文科省厚労省がちゃんと研究をするよう話してください
それ以来の動きを追えてませんが、文科省がまじめに対応してほしいですね、リスクをちゃんと考えて。

私はNPO法人子どもとメディアの清川輝基代表と日本小児科医会の内海裕美氏と共に、2020年2月に経産省を一度訪れました。浅野氏とは、それ以前の8月にFBメッセンジャーで数日にわたり、私の危惧を伝え、先の提言をお送りし、1月の日本医師会開館におけるシンポジウムの実施を踏まえて、再び2月に訪問し、その後も少しやり取りをさせていただいています。浅野氏が、文科省が実行に入る以前からこの一大プロジェクトのキーパーソンであることは皆さんもご存じと思います。あいにく、その後コロナ禍に入り、浅野氏がその対応にお忙しい状況になっておられることがメディアで報道されていましたので、改めて連絡を取ったのは8月末でしたが、文科省などとの連携を検討してほしいという私からのメールにお返事はいただいていませんので、お忙しかったのであろうと推察しています。
その時のメールは以下の通りです。

「一人一台が実現する際に、子どものウェルビーイングな生活に対して、ICTの利活用の開始と同時にどのような予防的配慮を行うかということが、導入側にとっても、子どもたちや先生たちにとっても、重要なポイントになると思います。
 子どもの教育におけるICT利活用の健康上の影響に関して、関係者への研修⇒縦断研究⇒成果活用という形で進められればと思いますが、研究結果を何年も待っているわけにもいきません。どのように進めていくことが、子どもたちの心身と脳の健康に対する予防となりうるか、その手順などについて、誰がどう動くことが必要か、現時点でのアドバイスをいただければ幸いです。
 関係の皆様には、以下の3点に加えて、新たな提案も含めて検討していただければと思っています。
1)文科省における関係者(関係省庁、関係機関等スタッフ)への横断的研修、
2)国研による縦断的研究の開始、
3)導入期の現場教員研修における予防的な取り組み事例モデルの構築
4)その他、提案
もし、関係者に連絡を取り、調整をしていただけるようでしたら非常にありがたく、また、私から直接、連絡を取った方が話が早いということでしたら、その部局の方にご紹介いただければ幸いです。
なにとぞアドバイスをよろしくお願いいたします。」

 2月の訪問の際には、浅野氏は、関係諸官庁のメンバーが専門家の方たちと勉強会をする機会を作りましょう、つなぎましょうと言ってくださっていて、すぐに文部科学省、国立教育政策研究所に連絡を取って下さって、健康被害への認識が薄いことを確認してくださいました。そして、これから対応しましょうと言って下さったのですが、その後、連絡が途絶えてしまったことが大変残念です。

すでに厚生労働省は各種調査研究をしていますので、それらの結果を他の所轄官庁と共有しつつ、GIGA school導入という大きな国家プロジェクトに際して、国家レベルで子どもの発達への影響を検討していただきたいというのが、私の希望です。

特に、何歳からどのくらいの時間のどのような条件下での使用がどのような影響を及ぼすと考えられるのか、小学校の低学年、中学年、高学年、中学生ではどうか。それが家庭におけるICTの使用とどうつながって、どのような家庭において不適切な利活用がさらに促進される可能性があるか、というようなことについて、懸念を持っています。
たとえば、テレビの長時間視聴がネグレクト傾向のある家庭において特に問題であるように、スマホの使用もまた、大人の関与の少ない子どもたちに影響が及ぶ可能性が大きいでしょう。子どもの一日の生活時間を考えあわせたときに、学校だけではなく、家庭をも含めて何が起きる可能性があるかを考えていくことは、大人の責務であると思います。これは縦割り行政では解決できず、関係各省庁も民間も含めたチームとしての対応が必要でしょう。でも、私のようなバックグラウンドに何もない個人が発信しても、それには限界があるのです。そこで、関心のある皆さんに、このように投稿を投げかけて考えていただきたいと思うのです。

 さて、「ICT教具論からの脱却」にいただいたコメントに対して、簡単ではありますが、コメントさせていただきます。私はこの分野の研究者ではありませんので、エビデンスを示すようにと言われても当惑するばかりです。他の研究者の方たちの研究結果については、以前、note  にまとめました。

 でもそれらがどこまで信頼性、妥当性のあるものであるかどうか、エビデンスの必要性、より厚い研究の必要性を主張しているのはむしろ私なのです。
 なお、お名前は、名字のイニシャルのみにさせていただきます。元のやり取りをご覧になりたい方はこちらからご覧になることができます。また、やり取りのすべてを転載するのではなく、流れの中で説明に必要な部分を紹介し、挨拶等はカットしましたので、どうぞご了解ください。
https://www.facebook.com/groups/1059176697441865/permalink/5733890229970465/

Mさん
武田さんの主張は、すでに日本よりよっぽど進んでいる国の子ども達に、どんな影響が出ているかについて書かれていない。だから説得力がないのですが…
武田 日本よりよっぽど進んでいる国とはどこでしょうか。またそういう国でどういう影響が出ているかわかりますか。まだわからない段階ではないでしょうか。それをいち早く研究してほしいと思っています。
 下記は、メディア依存が問題となり、対策が進んだ韓国やタイの7年半前の状況です。依存者の人数は、年々倍々ゲームで増えていますので、こんなに古い情報ではと思いますが、対策を取ったことによって成果も出ているようですので、今後、どのような対策が必要であるか、参考になるのではないかと思います。また、厚生労働省は、韓国と米国を対象に調査を実施していますので、そちらも確認するとよいでしょう。https://style.nikkei.com/.../DGXNASFK0100W_R00C13A8000000/

今回の補足)あくまでも個人的経験からですので、参考にならないかと思いますが、私の場合は、大掛かりな研究で事前に対象国の教育委員会を通して、ICT教育の進んだ学校を紹介してもらって訪問するというようなものではなく、対象国に行ってから、そこでの知人を通して、ごく普通の学校を数校、その学校の先生に案内してもらって歩いて回るというような視察の仕方ですので、却って、統計には出てこない日常の普通の学校の様子が見られているかもしれないと思い、批判されてしまうかもしれませんが出会った事例を書いてみます。体験記レベルだという前提でお読みください(ただ、日本のライターさんの書いた記事なども伝聞のものが少なくないようで、一つの事例をその国の事例のように書いてあるものを散見するのも事実です)。

 ICT教育の先進国と言われるシンガポールでは、家庭内で日本ほど子どもたちのスマホ使用、ゲーム等の利用が進んでいないと聞いています。民族性や家族をめぐる文化の違いが背景にあると思われます。ただ、そんな中でも知人のお子さんは、メディア依存で親子喧嘩が絶えません。
 フィリピンの場合、貧困層の子どもたちがノートや鉛筆を用意できないために、教室に大きなスクリーンを置いて先生がパソコンで授業をしていました。このような状況は、パソコンが導入されているというふうに報告されるのでしょうか、そうではないのでしょうか。
 オランダの場合、2006年時点で、オルタナティブな学校においては教室に1-2台のパソコンが置いてあって、生徒たちが自由に使っているという学校がありました。その後もしばしば訪問していますが、大学や学校において、スクリーンが前に置かれている場合と、パソコン教室がある場合があって、数年前に訪問した時には、スクリーンが前に置かれてパソコン授業が進んでいるわきで、ベテランの先生が異国から来た私に気を許して、「若手の先生たちに使い方を教わっているけれど、さっぱりわからない。これまでやってきた教育が否定されているようで自分は辛い」とおっしゃっていました。確かに一方で、若い先生は最新の時事教材をインターネットからダウンロードして使っていました(これは2006年)。カナダなどもそうなのですが、英語圏を中心に、メンバーになればいつでも世界中の(英語の)資料をダウンロードできるサイトがありますので、そういうところに登録すると、いい教材を手に入れて、世界標準の授業をすることも可能になります。
 デンマーク(2018年、2019年)では、学校の教室にも学童保育の教室にも大きなスクリーンがありました。普通に使っていましたが、私が見た学校(数校)は、一人一台ではありませんでした。
 ウルグアイ(2017)の小学校ではおもちゃのようなノート型のカラフルなパソコンが教室に積み上げられていて、使うときには子どもたちが先生に言われて手にしましたが、メモを取る以上の使われ方はしていませんでした。中学校では、少なくとも普通教室では使われていませんでした。
 カナダでは2015年の頃、公立も私立も中学校以上では全体によく使われていました。先ほどオランダのところで書いたのですが、小学校の社会科で、難民の救済についてディスカッションする授業の資料はインターネットからとってきていました。最新の国際政治の状況を小六の子どもたちがわかるレベルの教材で学ぶ授業は素晴らしく、その教材をいただいてきて、日本で紹介すると驚かれます。ただ、パソコンは全ての学校のすべての教室にあるわけではありませんでした。特定教室においてある場合が多くて、パソコンの授業や調べ物などに使っていたように記憶しています。STEM教育を実践している学校などにも行きましたが、私の見学した授業では、特にパソコンを使ってはいませんでした。
 一方、発達障害の子どもに個別最適なプログラムを提供しているArrowsmith School については、以前、note に書きました。ちなみに小学生のときから知っている男性は、ゲームセンターを含むエンターテイメントビルのオーナーのお子さんでしたが、家の地下室でベビーシッターさんの制止を振り切ってずっとゲームをやっていて、20代の今はゲーム中毒でアルバイト生活。大変です。
 その他の国々、この10年位に何十か国か行っていますが、そんなにICT教育が進んでいるなあという学校には出会っていません。本当にここ数年、各国で様々な変化が起きているところでしょう。そして、それが子どもたちにどのような影響を及ぼしているかについての研究はまだ始まったばかりで、様々な結果が出ていて、結論は出ていないというのが、実際のところではないかと思います。

Kさん
散々プライベートでスマホ使いすぎて中毒みたいなんになっている家庭事情、世情背景もあるのに、全く浸透してもいない学校に何を求めるのか、と…
Sさん
特に眼は悪くなりますよね〜ただ、国際競争の観点で考えると、中国などは健康の課題すら(人工細胞等)テクノロジーが解決するというような勢いでIT大国に成長してきました。
中国のドローンの祭典をYouTubeでみましたが、あれにミサイル積んだら・・・もう太刀うち出来ないと恐ろしく感じました。国際社会で立場を保つためにも、もはやデジタル化しないと国力の減退に繋がる気がしています。
武田 Kさんへ コロナ禍で、さらに子どもたちのメディア中毒は進行しています。学校現場で用いた場合に、どのように家庭での使用をコントロールしていくかということは、とても難しい課題だと思います。どうすればいいとお考えでしょうか。また、すでに一人一台を導入している学校で、子どもたちが先生の目を盗んでゲームをやっている状況があります。家庭と同じように、先生と子どもたちが鼬ごっこにならないようにと思います。なにしろ、先生たちよりも子どもたちの方が、使い方の習得は早いのですから。学校の情報化については、自治体によってひどい環境のところがあることを聞いています。ぜひ進めていただきたいと思っています。
武田 Sさんへ 国家としてICT戦略をどう進めていくかということは大きな問題であることは確かだと思います。だからこそ、それを使う使い手の子どもたちの健康は最重要ではありませんか?さまざまな早期教育が必ずしも、子どもたちにとってポジティブな結果を出しはしないということは、少し調べればわかるかと思います。

豊福さん(こちらのグループページの運営をなさっておられるので実名で)
武田さんは2020年1月だったか、カタリバのイベントで鼎談したことありますけど、結局僕の話何にも聞いてなかったんだなとガッカリです。
全部論駁したいけど、時間がないので一言だけ。アカデミックな世界では何を主張しようが勝手ですが、政治や行政はそうはいかない。
川島隆太とか久里浜医療センタとかと一緒で、科学の顔して保護者の不安を煽る商法は、日本の教育情報化を停滞させてきた原因のひとつであり、むしろ、このネガティブな埋没コストに対するご自身の責任を明らかにしていただきたいですね。
武田 
豊福さんは、2020年4月のカタリバのイベントの私の回に一参加者として参加してくださっていましたね。私がzoomでお名前を見つけて、2回目の豊福さんの回の時、参加させていただいていいかをうかがって参加させていただきました。鼎談をしたことはありません。
時間があるときに全部について解説していただければ幸いです。教えていただきたいのです。文中に書きましたように、私はよくわからないのです。わからないから導入を図る国が責任をもってきちんと研究・調査してほしいと書いたのです。また、現在、私はほぼ無職ですので、商法といっても、これを書いても残念ながら一銭のお金にもなりません。
学校の教育情報化は促進すべきだと思っています。WIFIも飛んでいないし、学校にメールを送っても代表アドレスしかない、そもそもファイル添付が自由にできないなど、教員の教育情報環境はかなりひどい状況だと思います。まず教員のICT環境から変えていくということではいけない理由がよくわからないので知りたいし、ぜひ、学校のICT環境をよくするように進めていただければと思います。
豊福さん
これは記憶違いでしたね。失礼しました。

Sさん
こういう違った視点を知ることは大切だと思います。日本の社会に根強く残っているICTへの不安を反映しているのだと思います。教員の中にも、こういう考えを持っている人がいます。日常的にスマホやタブレットを使っている保護者の中にも漠然とした不安はあると思います。ただ、武田さんたちは、ひとつひとつの項目については、ご自分の意見に沿った資料を持ってこられて当てはめている。なんとでも言えるところで、項目を作っておられる。別にICTではなくても、使い方次第で当てはまる。本当は先に使いたくないという前提で、ご意見が構成されている。これがいつまでも堂々巡りする原因を作っている。嫌いだと言えばいいのに、そこに子どもの健康とか発達などという言葉を当てはめて正当性を主張している。これは水掛け論に落ち入る典型的な例ですね。でも、最初に言ったようにこういう反対意見を推進する側がきちんと意識しておくことが大切だと思います。そして、彼女と同じくらいの努力はしなければならないと思います。ご紹介ありがとうございました。
武田
丁寧に読んで下さってありがとうございます。使いたくないわけでも嫌いでもないのですが、そう読みこまれたということなので、それは否定させてください。学校のICT環境が整い、安全性が保たれる形で、教育が充実していくことを心から願っています。

Eさん
ちょっと浅はかというか、ICTを使った学びについて知らないで書いてるのではと思わざるをえません。ただ、こちらもこの方の主張なり書いたものを一通り読んでおく必要はあるかと。
武田
浅はかと書かれてしまったことは、ちょっと悲しいですけれど、ぜひ情報交換をさせていただきたいと思います。ICTを使った学びは、いくつかの先進的な学校で見せていただきましたが、基礎的な学習を深い学びにつなげることができずにいる状態であったことが残念でした。もし、基礎的な勉強を単純な作業にするのではなく、深い学びにできるICTソフトなどありましたら、知りたいです。どうぞよろしくお願いいたします。
武田
因果関係の証明されていない子どもたちへの健康被害への懸念よりも、ICT導入の遅れの方が問題であると思われる方が多いのだと思います。私は、子どもたちの健康のことを心配する立ち位置にいますので、その立ち位置で発信させていただいて、子どもたちの発達全般にとって、バランスのとれた対応がなされることを願っています。国家にとって、健やかな国民は宝ですから。
武田
スマホ・タブレットの正しい使い方を教えるための導入であって、しっかりコントロールがされるという条件の下であれば、私は導入に賛成です。
Eさん
本当の先進校は自由に使わせながら授業デザインも工夫して結果的にリテラシーが上がるような取り組みができていますが、中途半端に導入だけしてガチガチに管理して、結果的になんの効果もなくおもちゃにすらならない例が数多く存在します。ある意味ICT虐待です。ちなみに、私の取り組みに関してはこちらを読んでいただければと思います。
https://www.jstage.jst.go.jp/.../2/34_13/_article/-char/ja/ 学習用SNSの利用の継続による生徒の学習態度の変化 -担任教師による学習環境のデザインを考慮に入れて- JSTAGE.JST.GO.JP
武田
高校の事例ですね。私がとりわけ懸念しているのは特に低年齢の場合なのです。何歳くらいからマイナスの影響が弱くなるかなどの研究がなされる必要があると思っています。
Eさんのおっしゃることと私の考えはほぼ同じですね。上手くやればできる、ということをもっと強調する文章が必要だったかもしれません。実際はおもちゃにすらならない例が数多くある状態で、うまく導入が進むのでしょうか。Eさんの実践がどの学校でもできるようにするためにはどのような条件を整えることが必要になりますか。導入にあたっては、それもセットで進めることになるといいですね。
武田(追記)
私の大学の授業を見ていただくと、私がICT教育について門外漢かどうか判断していただけるかもしれません。得意な方たちのようには十分に使いこなせていませんし、自分の授業に必要以上にICTを組み込むことはしていませんが、30年近く前から対面の場合でも一斉授業や時間中ずっと一斉スタイルの講演は基本してきていませんし(その方が効果的であると判断した場合は一斉を用います)、それはオンラインでも同じです。

武田 Kさんへ
この場へのシェアどうもありがとうございました。皆さん、とてもお詳しい方たちがいらっしゃる場ですので、どきどきです。わからないことをわからないと認識することはとても大切なことで、特に、今回、子どもたちを実験台にしてはならないと思うと、どうしても慎重な意見を言う人もいないといけない、と思います。慎重派からの声も聴いてほしいと思ったのです。何が確実にできて、何があまりうまくできなくて、何は全くできないのか。導入にあたって、学校はどのような準備をすべきか、何歳以上の脳であれば、耐性があるのか。などがわからないまま導入して、子どもたちの健康が損なわれてしまったら、それが何よりの国家の損失になるのではないか、と私は心配してしまうのです。議論を尽くして導入を、と思います。
Kさん 
たくさんのコメントありがとうございます。この場所でシェアすることでまた違った視点ができるかなと思います。確かに議論は尽くされてはいないと思います。しかし取り巻く環境はどんどん変わっています。人間にはそれらに順応していける力があると個人的には思っていますが、それは信仰に近いかも知れません。目の前にいる彼らが、どんな未来を歩いていくかを僕らは知り得ませんし示すことは正直僕はできません。これは願いに近いのかも知れません。こうして皆様考えが少しでも聞けてよかったなと思います。そして導入はもう始まっています。これからです。
武田
はい、もう始まっています。だからこそ、今からできることを考える必要があると思います。ある中学校では、生徒たちに大人たちが持っている情報をシェアして、生徒たちで考える機会を設けたそうです。その結果、生徒たちがお互いに自分たちでルールを決めて、注意し合いながら使うようになったとのことです。子どもたちに情報提供することはとても大事なことだと私は思います。

Hさん
世界で最も都市計画に失敗したといわれるブラジリアと対称に、90年代世界で最も都市計画に成功したといわれるブラジル・クリチバをみてきました。
ゴミの分別を子どもたちに教え、分別して持ってくると代わりに野菜が手渡されたことにより、街中がきれいになりました。
僕は子どもたちにAIを教えています。職業が変わるどころか文明が変わる。保護者や先生方にもお伝えしていますが、幕末に陸蒸気を説明しているようです。
先日80歳の母にOculus Quest 2を体験してもらいました。彼女は仮想空間で紙飛行機を投げています。感想は「生きててよかった」だそうです(^^)
ここにいらっしゃる方々も含め、Teahable Machine をまだ経験されていない方、VRゴーグルを経験されていない方は、どうか急いでご体験ください。陸蒸気をみたことない人には、文明開化を話しても伝わらないのです。
武田
面白そうですね。どうしたら体験できますか。健康被害を懸念する私の文章とどう関係しますか?これらを子どもたちが用いるようになったとき、どのようなことが彼らに起きると予測されるでしょうか。研究などありますか。いろいろな技術が進んでいくことは素晴らしいことと思えますが、文明はそれが開化する結果として何かを失わせてきたという歴史上の事実があります。その影響がわかり、適切な対応ができればいいですね!
Hさん
今日ちょうどとある中学校でも先生方にVRゴーグルを見せてきました。とても盛り上がって内線で他の先生も呼びまくり、子どもたちに伝えるべき未来が変わることを実感されていました。
先生が先に変わるべきということについては同意しますが、1人1台についての健康被害については大丈夫ですよとしか言いようがありません。(VRゴーグルは年齢制限がありますが)
先生のコンテンツをいくつか拝見してきましたが、昭和以降が多く、近世・中世・それ以前の子どもの遊びと育成についてどのように捉えられているのかよくわかりませんでした。またいろいろ教えていただければうれしいです。食品の画像のようです。
武田
面白そうです、私も体験したら依存してしまいそう(笑)。年齢制限があるのがいいですね。
私の書いたものを読んで下さってありがとうございます♪ 遊びは私の専門ではありませんので、カイヨワ、梁塵秘抄、エリコニンあたりを読むといいと思います。また、ブリューゲルの絵画「子どもの遊戯」はよく遊びを語るのに使われていますね。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%90%E4%BE%9B%E3%81%AE%E9%81%8A%E6%88%AF 動物の遊びを研究すると由来がわかって面白いと思いますが、人間の遊びに関しては精神分析家ウィニコットの著作が参考になるでしょう。
さて、なぜ、日本の子どもたちが今、ICT依存に陥るかというと、その背景に、生活や対人関係、空間に「遊び」がなくなり、安心できる居場所が確保されないからという考え方があります。自分の視野の範囲内で小さく目を動かし、脳の中のバーチャルな世界で遊ぶわけですね。さまざまな人生体験がある高齢者と体験を持たない子どもでは、その世界の受け止め方が異なるでしょう。それがどのように脳を育てていくか、これからの研究が待たれますね。
Sさん
そうですね。研究は継続的に行なっていく必要はありますね。ただ、様々な検討は昔から行われています。海外との比較も面白いです。文科省にも膨大な資料が集約されています。この資料も現状を理解するのには参考になると思います。武田さんの心配していることとは直接関係ありませんが、今の日本が置かれている現状です。
https://resemom.jp/article/2020/01/09/54151.html ゲーム&チャットは1位で学習は最下位…日本の15歳のICT活用の実態 | リセマム RESEMOM.JP 
あと豊福さんの論考です。https://www.ipsj.or.jp/.../9faeag000000jvu7-att/5604-01.pdf
武田
ご紹介ありがとうございます。残念ながら豊福さんのものは読み込めませんでした。ゲーム&チャットの利用については、今の子どもたちがリアルな世界よりも、メディアの中に居場所を求める状況になっていることに対して、社会的な振り返りと対応が必要であると思います。そしてそのような状況において、学校教育に導入するということが日本という国においてどのような成果、結果をもたらすかということについて、私たちはしっかりと予測し、動向を見ていく必要があると思います。

Hさん
なんとなく話している対象年齢層が違うような気がしてきました。私は主に小学校中学年以上に関わっていますが、幼児のICT機器使用についての危惧は理解できます。
ただそういう意味ではどちらかというと家庭の問題であって、家庭では適切に制限、学校ではきちんと学習に使っていくという形がいいのかなと思っています。
むしろ家庭できちんと教えるべきことを教えていないという状況こそが問題の根源ではないでしょうか。https://www.facebook.com/enterkey.or.jp/posts/1463007730525435
武田 
丁寧な対話を続けていると、すれ違いも見えてきますね。私は高校生以上については、本人の理解力もあると思いますし、そもそも義務教育ではありませんので、特に問題視していません。ただそれ以下の年齢の場合、どのような影響があるかについては、「わからない」のです。そして、家庭の問題であっても学校の問題であっても、私たち大人は対応する必要があると思っていて、それが「学校教育」というすべての子どもたちが通う場において、どう扱われるか、について、検討する必要があると思うのです。どんな家庭も子どもをきちんと育てられるというわけではなく、学校や放課後支援が託児機能を果たしているという現状が実際のところあるわけです。家庭へのアプローチが必要である、ということになったら、どうするのか、それも含めて私は問題提起したいと思います。

Kさん
読みましたが、依存症や健康被害については、相当に条件を絞った状態での「コホート研究」「相関と因果」「調査・実験における倫理」「悉皆調査(母集団数)」「パラメータ調整」といった制約条件だらけで、日本で結果の数値を求める/証明するのに何年間を要するのでしょうか?
その間、使用を押し留めるのであれば、プライベートでのICT機器利活用が進展している中で、それすらも禁止せよ、に等しい話かなとも危惧します。
おそらく、多数の保護者も、こうした大人の声に危惧されている対象の子どもにとっても、不利益の方が多いように考えます。
大上段に構えますが、研究用の条件があることを、一般的な国民(関連する中央省庁の官僚もほぼ含む)が知ることはまず稀なことでしょう。
研究者が最もすべきことは、「結果や推測を通した素人への警鐘」(苔脅し)ではなく、まずは「科学的理解と科学の限界」「悪魔の証明」を伝え啓蒙すること、なのかもしれません。
武田
私は今回、研究者という立場で発信したつもりではなかったのですが、大学勤務という履歴からはそういうご指摘は受け止めなくてはなりませんね。もうICT機器の使用は始まっていて、押しとどめられないですよね。そういう時期に入っています。
では、今から何ができるのか。何をするのか。研究は研究として専門家に縦断研究を始めていただくとして、実際のところ、現実的に起きている問題は何か、それにどう対応できるのかという現実的なところを考えることが必要であると思います。そして、提言に書きましたように、子どもと親に選択肢を与えることも必要でしょう。いやいやそれはコストがかかってできない、という反論もありそうですが、子どもの健康はコストで考えるべきことではないし、一体どの位のコストがかかるかの試算もしていません。 
タブレットを家に持ち帰ったときに、どのようなことを子どもたちが考えて使いこなしていくのか、それが子どもたちに可能なのか、可能にするためにどのような工夫が必要なのか。親たちに対してどのような啓発が可能なのか。それをどこが真剣に考えていくことになるでしょうか。治療機関や予防機関がどの位あって、どのようなプログラムで脱感作していくか(韓国にはソウル市内だけで4つの施設があります)。学校で進めていく際に、それは管轄が違いますから、ということではなくて、私たちの国の子どものことをみんなで考えましょう、ということなのです。 

Sさん
読みました。ICTを活用してインクルーシブ教育を実現することを目指して実践に取り組んでいる立場からすると、
「もともと対人コミュニケーションに抵抗感のある発達障害等の子どもは、メディア接触の心地良さからより一層対人接触の時間や体験の減少が生じ、対人コミュニケーション能力を育てる機会を失う可能性が高く、後に社会との接点に困難が生じやすい。」
と言い切ってしまうのは如何なものかと思います。もちろん、そういう事例もあるとは思いますが、対人コミュニケーションに抵抗感の子どもがICTを通じて自分の考えを発信できるようになるところから、コミュニケーションへの意欲を高めていくような事例をいくつも経験しています。
また、例えば読み書きに困難を抱えていて、タブレットの読み上げ支援を利用した方が良い子供たちが「周りが誰もタブレットを使っていないのに自分だけ使うのはいやだ」と感じてしまうようなことがこれまではありました。GIGAによって「みんなタブレットを持っている」という状況が生まれることはそういう子供たちにとっても福音です。
思うに、「健康被害」という尺度で見ているところが狭すぎるのではないでしょうか。ICTを使わなかったこれまでの教育によって健康に限らず被害を被っていた子供だっていたのではないでしょうか。
ICTを使うことが子供の心身にどのような影響を与えるかの研究はもちろん大切だと考えますが、それを待つ間、ICT活用に制限を課すことで、被る必要のない被害を被る子供がいることを思うと、私は賛成できません。
武田
こちらの視点もとても大事と思います。発達障害の子どもや、ICTによるコミュニケーションに活路を見出している子ども、居場所になっている子どもたちから突然それを奪うことは危険ですし、むしろ有害なこともあるでしょう。代替行動の獲得が必要になりますし、子どもの状態によっては、生きていくためにそれが必要な場合もあるでしょう。
 タブレットの例については、「みんなと一緒」でなければならないという日本の学校文化が問題であって、そちらの問題をそのままにして、「みんなでタブレットを持ちましょう」というのはどうでしょうか。様々なありかたがあっていい、個別化、と言っていることと矛盾しないでしょうか。いろいろな勉強の仕方が認められるようになるといいと思います。提言、で書いたことは、議論が起きればいい、と思って書いたことであって、提言の最初に書いたように、みんなで考えませんか、という問題提起なわけです。だから、一律に禁止、ということを声高に主張しているわけではなく、どうしたらいいでしょうか、考えませんか、たとえば・・・と言っているのだということをご理解いただければと思います。
 なお、ICTを使わないことで被害を被っている子どもたちについては、私も教育の問題を(学校に限りませんが)エデュケーショナルマルトリートメントという言葉で問題提起しています(あいにく、まだ書籍が出せていませんが、小さな文章で書いたり、シンポジウムを何回か開いたりしてきました)。しかしながら、ICT教育を持ってくればそれが解決できるというのは、楽天的であると思いますが、可能性の幅は広がるでしょうし、可能性を追求することは必要であると思います。むしろ、ICT教育が特に必要な子ども、より適切である子どもはどういう子どもたちであるかを明らかにして、あるいはそれを望む親子を抽出して、そこから始めるということも考えられませんか。こちらもArrowSmith Schoolくらいしか私は知見を持ち得ていないので、いろいろな研究があれば知りたいと思います。そうでないと、また逆も真なり。ICT教育によって被害を受ける子どもたちを守れなくなってしまうかもしれないと思うのです。

この後、いくつかのコメントがありましたが、私宛のコメントではないことが明記されているため、返信は控えさせていただきます。

大変長くなりました。ここまでお付き合いくださった読者の皆様、どうもありがとうございました。私はICT教育関連のことを仕事としているわけではないので、常にタイミングよく動くことができるという保証がありませんが、皆様からのご意見をいただきつつ、単なる「不安」や「盲信」ではないところで、子どもを真ん中において、子どもたちとともに、意見交換、情報交換、対話ができるようにと思っています。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

※写真は5年前の今日、カナダのイエローナイフにて撮影。
 半年間のカナダ滞在中に訪れた学校は十数校、1月にはコスタリカの学校もいくつか見てきました。

#ICT教育 #子どもの発達 #健康被害 #GIGA  School 
#メディア依存 #心の発達 #体の発達 #脳の発達    


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