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こども家庭福祉Ⅰ(こども家庭を取り巻く環境と支援)第2節  子どもが育つ環境


子ども家庭ソーシャルワーカーのテキスト案として執筆した文章がネット上で公開されました。

「こども家庭ソーシャルワーカー(仮)の施行に向けた具体的運用に関する調査研究」
こども家庭庁 令和5年度子ども・子育て支援等推進調査研究事業費補助金報告書 2024年3月 一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟 別冊第1巻 P145-156 
こども家庭福祉Ⅰ(こども家庭を取り巻く環境と支援)
(講義3.0h/演習1.5h) 第2節  子どもが育つ環境 p4-15  

子ども家庭ソーシャルワーカーのテキストになると思って書いた文章が、PDFで出されるだけということなので、こちらでご案内します。
このテキストは、私の部分だけでなく、全部をネット上で読むことができますので、本気で学びたい方は、ここで学べてしまいます。

一番上に出ている報告書の右側にある「別冊」が、
子ども家庭庁の指定した内容が入っているテキストになっています。

私はこの本の一部分を書いただけですが、書籍化される予定がない(泣)ということですので、こちらから読んでいただければ幸いです。
別冊第1巻 P145-156 

http://jaswe.jp/researchpaper/20240331_kodomo_suishin_cfsw_houkoku01.pdf 

・・・と言っても、わざわざPDFを開く方も少ないかと思うので、ごく一部を抜粋して掲載しておく・・・ 

(3)乳児の発達に必要な養育環境と社会環境
   ・・・・・・また、同じ人からの繰り返しのケアによって、次に生起することを予測し、自分にとって最も大切な人(いつも生きることを支えるケアをしてくれる人)に気づいて愛着関係(危険を察知したときに安心してしがみつける関係)を構築し、感情表現も獲得していく。これらは、社会情動的スキル(非認知的な能力)の獲得と言われる。 さまざまに体を動かしつつ骨や関節、筋肉を鍛え、動かし方を覚え、寝返りやお座り、はいはい、歩行などの身体の動作が徐々にできるようになっていく。可動範囲を広げ、周囲の環境や社会やそこに働いているルールを理解するために、今まで体験していないことを一つ一つ急速に体験していく。そこで出会う新しい刺激を受け止めて学習し、それへの対応も身につけていく。
  そうしている様子を見て大人はしばしば、乳児が「遊んでいる」と言うが、しかし、一見無駄や無意味に思える動きや「遊び」など、日々繰り返す生活の営みは、全て周辺の環境や文化を学ぶ時間になっている。 そう考えると、児の成長が、養育環境とそれを支える社会環境によって変わることがわかるだろう。
・・・・・・・
  つまり、こどもたちには、徐々に増える新しい刺激とルーティーンの刺激がバランスよく提供されることが求められ、全く同じでもなく過刺激でもない養育環境が、乳児の脳の力、生きる力を高めるのである。逆に言えば、環境に何か働きかけたときの自己効力感は、応答がなければ獲得できないばかりかむしろ学習性無力感を生じるし、同じ働きかけに対する周囲の対応がバラバラだと、学習が遅れたり獲得できなかったりするわけであるから、特に生後1年間の目覚ましい発達の時期の養育環境には留意が必要である。

     一方で、どのような刺激を与えないかということも確認しておきたい。一日中大きなテレビをつけたままにしていないだろうか。泣き止ませるためにすぐにスマホを見せていないだろうか。大人の便利さを優先した育児グッズは、乳児の身体機能の発達を遅らせ、ひいては運動機能や自立を遅らせる可能性も考えられる。コンテナベビー症候群といって、身体の動きを制限するコンテナ(容器)に長時間入れられた乳児の発達は阻害される。手づかみ食べは、欲しいものを自分でコントロールして手に入れることの学びにつながるが、もしいつまでも大人が食べさせていると、こどもの主体性は阻害される。 どんな人が近くにいてどのようにふるまうか、どのような声かけをするかiiなど、すべてがこどもの発達のモデルになる。
  こども家庭ソーシャルワーカーは、さらに発達心理学や精神分析学などの周辺学問の基本iiiも学び、こどもを観察する視点を身につけよう。
  さて、地域には、住民が上記のようなこどもの育ちについて自然に気づく機会が用意されているだろうか。特に孤立した子育てをしている家庭には、年長の他の親子を見て学ぶような場が必要であるし、将来、親になるこどもたちにも、孫の世話をする高齢者にも、多世代が交流する中で子育てについて学んでいける場が欲しい。こども家庭ソーシャルワーカーには、そういった社会環境を作りだしていくための視点を持って意識的に活動を展開していくことを求めたい。


幼児期の発達に必要な養育環境と社会環境
 人の発達は乳幼児期にその基盤を完成させる。こども家庭ソーシャルワークは、常に「社会の中の」こどものいる家庭をイメージし、その家庭が置かれている社会状況を把握したうえで、この時期のこどもの発達を支え、ウェルビーイングを高める総合的な支援に取り組むことが必要である。養育環境を支え、社会環境を整えるための対応は、
 ①必要最小限の経済基盤
 ②ゆとりある生活空間
 ③ゆとりある生活時間
 ④支え合いの人間関係
 ⑤子育ての担い手
という5つの観点から考える必要がある。

学童期の発達に必要な養育環境と社会環境
 小学校に入ると、一般にこどもは学校で勉強して育つという認識が強くなり、それ以外の場面でこどもが成長していることが忘れられがちになる。しかし、こどもは 24 時間成長し続けており、家庭教育、学校教育、地域教育のすべてがこどもを育てている。さらに言えば、「教育」や「カリキュラム」というような、大人たちが意識して用意をするところではない時間や場において、こどもたちは乳幼児期に基盤を構築した社会情動的スキルを含めた主体的・自律的・探究的な学びを拡張・深化させている

  そういう視点で、学童期のこどもたちはどんな養育環境の中でどのように育つといいか考えてみよう。毎日の生活の中で身体的・心理的・知的・社会的発達を自然に促す環境、しかも現在の数十年先を生きる可能性を持つこどもたちを育てる環境である。このときに考えるポイントは、4点ある。

・成人後のウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に健康)な生活のために、こどもたちは今の日常をどんなふうに生活し、体験していくといいか。
・予測不能な変化の激しい社会で生きていくこどもたちに、大人たちはどんな学びを提供すればいいか。
・こどもたちが自分たちで社会を作って行けるようになるまでの間、大人たちは彼らに引き渡す社会をどのように準備することができるか。
・こどもたちの育ちのために、地域の大人としての自分、専門家としての自分は今、それぞれ何をすればいいか。



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