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始まりは対話から。今年も「中つ火」に集う。 【週刊新陽 #55】

赤司展子

新学期も2週目に入り、いよいよ通常時間割での授業が始まりました。

最初の週はオリエンテーションのような時間も多いものの、まだ体が慣れていないうちに1日6コマ(単位制は3コマ)を終えると生徒も先生もちょっとぐったり。特に週も後半になると、放課後、職員室に戻ってきてしばらく放心している先生もいます(笑)。

授業準備や生徒状況の把握に加え、今年度は、学習指導要領の改定、単位制の導入、さらにコロナ対応など慌ただしいスタートとなりましたが、チーム力を発揮して邁進中。先生たち、ほんとにお疲れさまです。

夕方の職員室はすこしだけゆったり

そんな中、4月20日は職員研修のため午前授業。毎月第3水曜日に開催する『中つ火を囲む会』の日でした。

中つ火を囲む会とは

これまでも何度かご紹介してきましたが、『中つ火を囲む会(通称:中つ火)』は新陽高校の教職員の対話の場。月に一度「たった一つの正解は無い問い」を主題として、リフレクションと対話を行います。

名称にある中つ火とは焚き火のこと。焚き火を囲むようにリラックスして、そしてフラットな関係性で対話する場を作りたいという想いを込めて、そう呼ぶことにしました。

新陽では今、『学習する組織』のコンセプトをベースに学校改革を進めています。『学習する組織』は、MIT(マサチューセッツ工科大学)のピーター・センゲ氏が提唱する組織マネジメントのアプローチで、そこでは以下の能力が大事であるとされています。

志を育成する力
複雑性を理解する力
共創的に対話する力

ピーター・センゲ「学習する組織〜
システム思考で未来を創造する」より
雑誌HOPEで特集された『学習する学校』
新陽も事例校として取り上げていただきました

新陽が、組織としてこれらの能力を兼ね備えた『学習する学校』を目指していくなかで、軸となる取り組みの一つが中つ火を囲む会なのです。


自分らしさが複数ある生き方

新任の先生も加わり、新しいチームで行う最初の中つ火は、自己紹介も兼ねて「互いを知ろう」というテーマです。

ファシリテーターはリクルートのR&D組織 Hitolab.(ヒトラボ )の福田竹志さん。昨年度から、福田さんと熊平美香さん(21世紀学び研究所代表)のお二人が中つ火のファシリテーションを担ってくださっているのですが、ずっとリモート(オンライン)での参加でした。

それが今回、福田さんが来札されることになり、とうとう対面でのファシリテーションが実現。みんな福田さんに会えるのをとても楽しみにしていました!

ワークショップの前半は「#(ハッシュタグ)型の自分らしさ」。

新陽では、組織の多様性、そして一人ひとりの中にある多様性を見える化するために、よく「#(ハッシュタグ)」を使います。

ハッシュタグとはもともと、SNSの投稿で特定のテーマやコンテンツを集約し探しやすくするために単語やフレーズの頭に付けられるものですが、そこからヒントを得て、個性や特色を表す単語やフレーズの「しるし」として使っています。

福田さんから、分人理論なども参照しながら「自分らしさとはなにか。働き方も生き方も多様な社会において、自分らしい#(ハッシュタグ)が複数ある人生ってどうでしょう。」という問いが投げかけられました。そして、「自分が自分らしさを分かっているとも限らない」とも。

あらためて福田さんご自身について、「#人生ずっとバックパッカー、#遊びも本気、#寿司屋の息子」などハッシュタグが紹介されたあと、いよいよみんなで対話する時間です。

ワークは、5人程度ずつ分かれて

・自分らしさ
・新陽の生徒らしさ
・新陽の教員らしさ

について、

①それぞれが「#」を2〜3個出し、そのエピソードとともにグループ内にシェアする
② 他メンバーから質問、または共感や感想を本人へ返す
③ 本人から感想を述べる

という流れ。各グループで挙がったのは以下のようなハッシュタグでした。

新陽の生徒らしさ
#素直 #正直 #純粋
#愛嬌がある #人懐っこい #挨拶よくする
#悩み多い #繊細 #感受性高い
#大人をよく見ている #洞察力 #かまってほしい
#自由 #我が道を行く #夢が大きい

新陽の教員らしさ
#いろいろな人がいる #個性しかない #クセ強め
#フットワーク軽い #なんだかんだやる・どうにかする #柔軟
#生徒想い #生徒との距離近い
#元気 #明るい #ノリが良い
#会話が多い #コミュ力高い #チームワーク

***

後半は、「生徒の数だけ学びがある多様性を尊重する教育とはあらためて何か、がテーマ。ビジョン2030『人物多様性』から思い浮かぶ状態やシーンを出し合って、さらにそれをポジティブ(いいね!ワクワクする!)とネガティブ(大変そう・・・困ったな)に分類するというワークです。

前半のワークで場が温まっていたこともあり、どのグループもかなり盛り上がって深い対話が生まれていました。

学習内容や学び方に関すること、指導のアプローチや生徒とのコミュニケーション、自分自身の働き方や生き方、社会の価値観(大学や企業からの評価、地域の目)など視点は多岐に渡っていたし、また過去・現在・未来と時間軸も広がりのある発言が出ていたことも印象的。

こんなふうに、中つ火ではいつも新陽の多様性を感じることができます。そしてこの場自体が、多様性を認め合うカルチャーの表れだと思っています。


多様性を味わう

実は会の冒頭、「職員室の酸素が薄い気」と福田さん。そのコメントに笑いが起きたものの、同時にちょっとハッとした私たち。

年度が始まったばかりという忙しさのせいか、単に人が多く集まっているからなのか・・・確かにみんな肩に少し力が入って、呼吸も浅い感じがありました。

「この2時間はリラックスして、ぜひ対話に集中してください。もし急ぎの仕事があるなど他の作業をしたい方は別の場所でどうぞ。」という一言で、場が良い緊張感に包まれました。

新陽が目指しているのは、自律し、支え合う仲間としてのチームです。

だから中つ火を囲む会の目的は、「自分と他者の考えを知る」ことと「ジャッジせず、多様性を味わう」こと 。

ともすると、新年度始まったばかりの忙しく慌ただしい時期に「ただ対話する」会を開くなんて・・・しかも2時間も!?と思う方もいるかもしれません。
あるいは、目の前にたくさん問題があると、正解を教えてもらいたくなったり、解くためのハウツーを求めてしまうかもしれません。

でもそんな時こそ、内省(リフレクション)と対話を大切に。

ゆったりした気持ちで中つ火を囲む会をやっていきたいなぁ、と思いながらふと外を見ると、霞がかった藻岩山の夕焼けがきれいでした。札幌もようやく春が来たみたいです。

【編集後記】
中つ火を囲む会について「先生の学校」のイベントや記事で紹介してもらったこともあり、「うちの学校でもやってみたい」「どうやってやっているんですか」という相談をいただくようになりました。
また校内でも、生徒版中つ火をやってみたり、実際に焚き火を囲んでPTAで対話しましょうという声が挙がったりしています。
中つ火を囲む会の輪、徐々に広がっていきそうな予感です。

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赤司展子
札幌新陽高校校長/ウィーシュタインズ株式会社代表取締役/NPO法人インビジブル理事・社会彫刻家/一般社団法人STEAM JAPAN理事/一人ひとりが持つ彩り豊かな能力「多彩能®️」が輝く世界を目指し、学びの多様化に取り組んでいます。