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生徒指導とは生徒の成長を支えること〜教員研修と対話の会 【週刊新陽 #97】

先月発刊された『きみの人生はきみのもの : 子どもが知っておきたい「権利」の話(谷口 真由美、荻上 チキ 著)』を読みました。

子どもが抱える悩みや疑問に関係する権利を紹介し、「こんな風に声を上げていいんだよ」「こう行動してみたらどうかな」と問題解決の道が示されています。自分の人生は自分のもの、だからこそ、誰かに相談したり頼ったりしていい、というメッセージが詰まっている気がしました。

子どもの権利が守られなければいけないことはずっと言われてきたものの、12年ぶりに改訂された生徒指導提要に、児童生徒の権利や校則について明記されたのは注目すべきことです。他にも修正された箇所や新たに記載されている内容が多く、学校現場にいる私たちも知識やマインドのアップデートが必要だと思います。

そこで今月の中つ火を囲む会(以下、中つ火)は、生徒指導をテーマにすることにしました。

12年ぶりに大改訂された生徒指導提要

昨年12月に公表され、12年ぶりの大改訂と話題になっている生徒指導提要とは、生徒指導の考え方を体系的にまとめたものです。2010年に初めて作成され、その後のいじめ防止対策推進法の制定や社会の変化などを受けて再整理されたのが今回の改訂版です。

これには、

生徒指導とは、児童生徒が、社会の中で自分らしく生きることができる存在へと、 自発的・主体的に成長や発達する過程を支える教育活動のこと

「生徒指導提要(改訂版)」より

とあります。

皆さんは、「生徒指導」と聞いてどんなイメージを思い浮かべますか?

生徒指導は教育活動すべて

「生徒指導提要について、みんなで研修したい」と最初に言ってくれたのは、教育相談部長の山田先生とCC・入試広報担当の森先生。

森先生は札幌市の中学校の校長を務めた後、昨年4月から新陽高校で生徒募集を担当してくださっている方。中学校など外部との関係構築はもちろん、「広報するには生徒を知らないとね。」といつも生徒を見守ったり、若手の先生にアドバイスしたり、頼もしい存在です。

ぜひ研修はやりたいものの、提要を理解するだけでは何か足りない、それに、年度末処理や次年度の準備で忙しいなか全員で研修する時間を新たに確保するのは難しいのでは・・・と生徒指導部長の川端先生と相談した結果、年初から予定している中つ火の時間を使って、対話とセットで行うことにしました。

2月15日(水)の午後、視聴覚室に集まった先生たち。森先生と山田先生から学ぶ『知識編』の始まりです。

森先生は、中学校教員や校長としての経験から生徒指導提要が大幅に改訂されたことに関心を持ち、提要を読み込んでご自身のために要点をまとめたのが今回のきっかけ。改訂のポイントやご自身の気付きを、みんなに共有してくれました。

「生徒指導とは児童生徒が自発的・
主体的に成長や発達する過程を支える教育活動。
私たちは支える側なんです。」(森先生)

一方、山田先生は教育相談のスペシャリスト。実施上の視点から今回の生活指導提要を解説していただきました。

教育相談とは、児童生徒が将来において社会的な自己実現ができるような資質・能力・態度を形成するように働きかけること
(注:教育相談は独立した教育活動ではなく生徒指導の一環として位置付けられる、特に、児童生徒の個別性を重視し個に焦点を当てて行うもの、と書かれています。)

「生徒指導提要(改訂版)」より

生徒一人ひとりの学校生活での困り感が何によるものなのかに目を向けると、結局のところ教育相談を含む生活指導はすべての場面に関わること。

だから、何かが起きてから対応するリアクティブ(即応的)アプローチよりも、日頃の活動の中で基盤となるプロアクティブ(先行的)アプローチの生徒指導の方が(もちろんどっちも大事だけど)より重要、という説明に、みんな納得でした。

「発達支持的生徒指導(プロアクティブ)の
厚みが大事です!」(山田先生)

いちばん大切なことは?

お二人の熱の入った90分に渡る講義を、先生たちは頷いたりメモを取ったりしながら集中して聞いていました。

そして、これで終わらないのが新陽の研修。後半60分は『対話編』です。

学んだことを「知っている」で終わらせないためにはリフレクションして「自分ごと化」するのが大事。そして対話を通した「集合知」の共有によって、自分の学びに昇華する。これが中つ火のプロセスです。

今回、対話のテーマ(意見を出すための問い)は1つに絞りました。

『知識編』を受けて「一番大切なことは何だと思いましたか?」

ファシリテーターをお願いしている熊平美香さん直伝の思考フレーム『認知の4点セット』を使って、まずは個人でリフレクション。共有のスプレッドシートにそれぞれ意見・経験・感情・価値観を書き込んでいきます。

そのあと4名ほどのグループに分かれて、まずは一人ひとり自分のリフレクションを語っていきます。どのグループも盛り上がっていて、外の雪とは対照的に、職員室や視聴覚室は気温が上がったようでした。

最後に、各グループで出た話を全体で共有してもらうと、様々な気付きや意見、経験のシェアがあり、深い対話が起きていたことが分かりました。

この日、滋賀と京都から他校の先生が視察に来られていたので、ぜひどうぞ、と中つ火に参加いただきました。

「皆さんが自分の意見を素直に出し合うんですね!スプレッドシートに一斉に書き込みが始まったのにも驚きました。他の先生に見られていると思ったら普通は書けないかな・・・」という感想をいただいたのですが、それは、「評価・判断を保留する」ことが中つ火の前提にあるからではないかと思います。

特に今回のように、どの先生にも身近でリアルで、ともすると「正しい生徒指導」があるかのように考えがちなテーマの場合は注意が必要。リフレクションと対話の目的は、失敗を懺悔することでも叱責することでもなく、この学びをどう活かすか、生徒にどうやって還元するかということにあるのです。

今回もたくさん学びました。まず私自身、プロアクティブな生徒指導がしやすい学校になるにはどうすればいいか意識することから始めたいと思います。

視察に来られていたお客様も一緒に

【編集後記】
この4月入学予定の生徒が生まれたのは2007年4月2日〜2008年4月1日。2007年といえば初代iPhoneが発売された年です。今の若者は生まれた時からインターネットがある、とよく言われますが、いよいよ生まれた時にiPhone(スマートフォン)がある世代が高校生に。近年、生徒問題インターネットやSNSによるトラブルも無視できませんが、そもそも子どもと大人の間に感覚の違いがあることも理解して問題を捉えなければいけないな、と思います。

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