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エモから逃げない。

お正月、マーケティングに関してぼんやり考えていたことを明文化しておきます。SaaSの例を挙げますがマーケティングに関する仕事をしている人には汎用的な課題かと思います。答えは出せていないのでノウハウを学ぼうと思っている人には価値がない記事の可能性がありますが、一応、”今年の目標”という形のアウトプットにはなりました。

SaaSにおける「施策」の測り方

SaaSのビジネスは数字が全てなところが結構あって、基本的にはMRRを積み上げる為に、毎月の新規有料顧客数×ARPUの最大化を行いつつ、Churn Rateの最小化を目指して行くというだけの考え方としては簡単なものです。ですので、基本的に全施策は下のいずれかもしくは複数への寄与の為に行われます。

・リード獲得
・有料転換

・アップセルクロスセル等ARPU最大化
・Churn Rateの最小化

そのうちの1つにしか明確に機能しない施策は、計測がとても楽です。例えば、「リード獲得の為の検索広告施策」であれば、広告経由のリード獲得数・単価で成果測定が可能ですし、「単一商品の新規顧客向けセールス」であれば、有料転換数・率を見ることでどの程度効果があったかが一目瞭然です。「既存顧客向けのクロスセル商材開発」であれば、ARPUの変化を見るでしょうし、「カスタマーサクセスの強化」であれば一般的にはChurn Rateの改善の為の施策でしょう。このように、単一の施策で単一のKPIを計測するのが一般的なSaaSの各種施策の効果測定の行いかただと思います。

ただ、単一の施策で単一のKPIを追うようになると、いくつかの弊害も出てきます。

単一KPIの弊害

一つ目は、間接効果を無視してしまうことです。

例えば、先ほどの「リード獲得の為の検索広告施策」の効果は本当に広告経由のリード獲得数にしか寄与しないのでしょうか?その場ではクリックはしたけど、CVはせずに離脱した。内容は覚えていて後に自然検索でLPに流入しCVした。ような場合には当然間接的に広告効果があったと言えますし、クリックすらされていなくても、検索画面でサービス名を見たことで認知には寄与している可能性があります。もっと言ってしまうと、自社が広告ランク高めに広告を出せた代わりに、競合他社にとっては無駄な広告費が増え、リードが増えず、結果として広告が、自社のシェアに寄与しているというような効果も考えられるかもしれません。こういった効果は見逃してしまいがちになります。

二つ目は、KPIの可視性に施策が縛られることです。

単一のKPIを追うということは、そのKPIが計測可能であるという前提条件によって支えられています。つまり、計測できないKPIは設定できないのです。そうすると、急に手数が絞られてきます。ありがちなのが、”認知”の数値の可視化を諦めることで、認知施策を実施できなくなることです。
1億円あったら、有料契約数増加のために何に使いますか?という問いに対して、
1.テレビCMをおこなって、認知が上がり、指名検索が上がり、有料契約数が上がる。
2.検索広告を行なって、無料登録数が上がり、有料契約数も上がる。

という有料契約数増加の2パターンを考えられたとしても、「認知」指標を正確に測定できないこと、「認知」は指名検索数に部分的に寄与するだけなので、指名検索数の上昇のうちのTVCMの効果を疑わしく感じてしまうこと、から1の施策を選ぶことに抵抗がある人がきっと多いと思います。自分もそうです。一億円のうち300万円をキャンペーントレースで使って認知を可視化するということを考える方もいるかもしれませんが、その場合施策単体ではすでに300万円分効率が悪い状態からスタートすることになります。

三つ目は、単一KPIで劣ると思われる施策はそもそも試されないことです。

一般的に、リード獲得CV単価でいうと、検索広告<ディスプレイ<動画広告となることが多いです。検索広告はすでに「検索」という行動を起こしている人に表示するので、CVまでの障壁が低いからもっとも安く、動画広告は、動画クリエイティブを見せるという別の便益を広告主側に与えているので、その分CPAは高くなる傾向があります。となると、検索広告しかやっていなくて、「リード獲得CPAの最適化」が目標の場合、なかなか動画広告に足を踏み出せません。CPAは高くなっちゃうし、動画完全視聴がどのくらい価値あるものなのかわからないからです。

なんとなくの大切さ

こんなことを考えていて思ったのですが、上記の考え方を地で行くと、例えば、サービスロゴを変えるって判断、一生できないなと思いました。簡単に効果が見えないからです。
ロゴは変えるのがとても大変です。サービス、販促物、協賛サイト、リリース、営業資料、全部差し替えないといけません。しかもロゴを変えた結果、可視化できるKPIがどの程度上昇するかはやってみないとわからないし、の変化がどの程度の純度でロゴの影響だったのかは、やってみてもわからない側面があります。あと、前のロゴのイメージがついているので、最初は違和感があり、各種KPIがちょっとずつ落ちるのでは?ということも普通に予想されます。

ですが、その選択肢が出てきたということは、「なんとなくそうしたほうがいい」と思っているということでもあります。

エモから逃げない。

前述の「なんとなく」を分解すると、大事なことが出てきます。最近のデザイントレンドにあっていないという価値観、サービスの目指したい方向性と乖離が出てきたなどの感覚や、そのロゴにチーム全体が飽きてしまったという感情など、そういった課題感が合わさって「なんとなく」思っています。

自分は、社会人の1年目から広告代理店のメディアプランニングの部署にいたので、仕事の大半は「効果の可視化」「可視化された効果の最大化」でした。そこでは、ものごとを数字で表す力を嫌という程鍛えられました。一生物の経験でした。
ですが、数値化できないことに関しては、滅法弱いです。あんまり自分の感覚を信じていませんでした。
今年は、そんな自分の「感覚」を信じる年にしたいと思います。

・感覚を研ぎ澄ます
・価値観を標榜する
・感情を表明する
・感動させるようなものづくりを目指す
・共感を生み出す

こんな感じのことを総称して、エモから逃げない。としてみました。
数字で凝り固まった頭に、いろんな刺激をぶち込むご協力を、ぜひ皆さまよろしくお願いいたします。


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