FPビジネスにおけるオンライン移行と展望② -withコロナの時代
コロナ禍で対面ビジネスが大幅に制限されている現在、対面ビジネスを主流としてきたファイナンシャルプランナーや保険外交員、リテール金融パーソンにとっても大きな転換点となっています。
SYN Groupは【ミレニアル世代に特化した金融アドバイザー】の企業であり、保険代理業を主軸としております。
まだ20名ほどの小さな会社ではありますが、FP業界に於けるいち経営者として、個人的なアウトプットも含めて、今後の展望を考えてみます。
※ 客観的事実を基に記載しておりますが、個人的見解であることをご留意下さい。
前編はこちら!
With コロナ時代の変化
ここまで、前提となるFPビジネスの「これまでのルール」を私なりに記述してまいりましたが、コロナ禍による変化はどのようなものが起きているのでしょうか。
端的に申し上げると、オンライン商談が増加し、対面での商談が減少しています。
これまでなかなか実現されなかったオンライン移行が、外部要因によって半ば強制的に実現されつつあります。
対面ビジネスであった営業職員チャネルを抱える各社が一斉に自粛を進める中、オンライン商談を積極的に取り入れていた大手保険代理店アドバンスクリエイトにおける相談件数は、前年同月比80%超の増加となり、市場に好感され株価も反応しています。
大前研一氏の言葉を借りると、「実体経済空間からサイバー経済空間への移行」が、業界において初めて実現しつつあり、これまでの実体経済空間において各プレイヤーがパイを奪い合っていた変化とは、大きく異なる状況であるのではないでしょうか。
FPビジネスの展望
これまでの前提を基に、実体経済空間からサイバー経済空間への移行が実現した時、FPビジネスにおいてどのような変化が起きていくのか、を考察してみたいと思います。
アドバイザー単位での展望
縮小再生産というルールはなくなり、多様な戦略を選択することが可能になる?
例えばですが、既存のクライアントへのアフターフォローだけをオンラインで実現出来た場合でも、生産性が大きく向上しそうです。
これまでコストとなっていた、旅費交通費や会議費を削減し、当然ですが時間も削減できるようになります。
生命保険を取り扱う場合は、給付など、対面が欠かせないシーンはもちろん残ると思いますが、「既存のお客様のフォローが多すぎて大変!!」などという状況は大幅に減少しそうです。
また新契約時においては、これまで時間とコストをかけてクライアントへアプローチしていた状況が、オンライン移行によって一変し、極論、自宅に居ながらノーコストで新規アプローチに取り組んでいくことも可能となります。
一方で、対面ビジネスを続けていく場合、新規アプローチにおける初回面談を設けるハードルは大幅に高くなるかもしれません。
そもそもFPとの面談は「不要不急」であると、大半の見込み客は認識している仮定で、
その上、人との接触を極力減らしたい、と考えているとすると、「FPとの初回面談」はなおさら高いハードルになりそうです。
また、オンライン面談における大数の法則が見いだせてない現在からすると、業績に対するダウンサイドリスクも考えられます。
業績の構成 = 初回面談数 × 成約率 × 顧客単価
ですが、「オンラインだと成約率が下がりそう」や「顧客単価が下がりそう」といった悲観的な声は耳にすることが多いです。
現段階ではあくまで予想にすぎませんが、これらの変数を初回面談数の増加でカバーできるのか?という検証は時間をかけて行っていく必要があるでしょう。
もしくは、業績が低下したとしても、アドバイザー単位の収支を考えたときに、オンライン移行によって経費率が大きく低下して、最終的な利益が変わらなければ、‘‘アドバイザーにとっては‘‘大きな問題ではないのかもしれません。
企業単位での展望
これまでの前提を基にすると、実体経済空間における「オフィス」のような空間は、中長期的に優先度が下落する可能性があります。
そもそも好立地に立派なオフィスが構える必要があるのか?という問いに対する明確な答えがない限り、立派なオフィスが企業にもたらす影響力は減少するのではないでしょうか。
一方で、保険代理業を取り巻く環境として、手数料率の減少、体制整備のコスト増加、人材獲得コストの増加などが挙げられますが、体制整備項目における「IT設備投資」が占める割合が増加していくことは想像に容易いでしょう。
株式市場においては、IT設備投資額とROEに相関性が見られますが、この流れが保険代理業にも到来し、積極的にオンライン商談の体制を整えることが出来た企業が、対面ビジネス→オンライン商談への市場トレンドの恩恵を受けることになると考えています。
現に米国ニューヨークにおいては、「対面商談を行わない」ということを全面的に押し出して、ミレニアル世代へのアプローチを行っているファイナンシャルアドバイザーも存在するような状況です。
思うこと
ここまで書き連ねてきましたが、リテール金融のオンライン移行は何年も前から議論されており、コロナ禍によって半ば強制的に移行が進められましたが、国内において完全な移行が急速に進む、とは到底考えられません。
金融商品は、金融工学や保険数理学、統計学など様々な学問を用いて緻密に組成されたプロダクトですが、購入の意思決定の現場においては、感情的な動機が占める部分も非常に多いです。
つまり、顧客とのRMを抜きにして、論理的判断だけで経済合理性を求めた購買行動だけが起きる、ということは起こり得ないとすると、今後も対面ビジネスにおける加入チャネルは主軸であり続けるでしょう。
あくまで経営戦略として、自社がどのようなポジションを築いていきたいのか、今回を機に深く考えさせられています。
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