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◆濱中史朗氏 ロングインタビューVOL.4

モノトーンの事

のぶちか
「白磁とかレザーにしても結構モノトーンが多いというかメインですけど、何か思いとかコンセプトがおありですか?」

史朗さん
「まぁ黒が好きっていうのもあるし、その……憧れてたよね山本耀司とか…、当時その…、まぁ兄貴が服飾関係のその…、そういう影響もあったりする。それでまぁ山本耀司とかさ。『黒の衝撃』っていう(笑)。で今は特にここ何年か黒が強くなってる(笑)。で猿山の場合は最初、白。『白してくれ』って言われて。『白、難しいなぁ』って思ったけど、その時は…。」

のぶちか
「白が難しいと思われた理由は何ですか?」

史朗さん
「いやもう無釉だし、何の化粧もされてない状態のものを出す訳やから…、もうほぼほぼ技術だけ、ロクロのね。」

のぶちか
「丸裸(器体も技術も)ですもんね。」

史朗さん
「うん。それをさせられたというか…、課題を持って来てくれて…、で最初はまぁ何年か白もありながらちょっと黒もありながらやってたけど、最終的にもうほぼ黒になったっていう(笑)。黒の憧れがあるというかコンプレックス…」

のぶちか
「コンプレックスですか?」

史朗さん
「うん。あんまり言うあれじゃないけど…。でも耀司さんのまぁ影響もある…一部。でそれに付随してそのルドン(オディロン・ルドン。フランス人画家)とかさぁそういう…、シュールな世界の表現って言うかさぁ、モノクロだったりとかね。そういうのに興味があった。で、黒の方が(自分に)会ってる様な気がする…んじゃないんかなぁとか…。全部仮説よ(笑)!」

のぶちか
「ハハハ(笑)!じゃあ最初が黒で…」

史朗さん
「最初は土器やから黒だね…、でもその時は黒を…意識してたのかなぁ…、まぁとにかく耀司さんが好きだったっていう(笑)。でも兄貴の関係で色んなものも好きになった(笑)。ゴルチェだったりとかさ。で一緒に東京行ったら連れてってもらったりして、古着屋にも行ったりね。」

のぶちか
「耀司さんはおいくつぐらいの時からお好きだったんですか?」

史朗さん
「まぁでも十九(歳)とか二十歳かな。まぁお金も無いし。(山本耀司の)古着もねぇ買った事があって、着ないんだけど買って、眺めてね(笑)。」

のぶちか
「何を見るんですか?デザインですか?」

史朗さん
「パターンとかね。」

のぶちか
「若い時、そんな服の見方した事ないですけどねぇ、なんか『俺、このブランドも着てるぜ』みたいな(笑)」

史朗さん
「あ~、着るというよりは憧れやからね。似合わない、まずその十九(歳)とか…、全部スタイリングしてる訳でもないし。どっちかっていうと兄貴の古着を着てた、お金が無いから(笑)。もうくたくたになったやつを貰ったりとかぁ(笑)。靴下も買った事なかった位だからね(笑)。でも、車買ったよ。二十二(歳)の時かな。お金貯めてそれ全部使ってワーゲン買った。で車買うんだったらまぁ多少良いの買わないとあれだなぁって思って、デザイン的にね。で親父も昔乗って車だから。昔のビートル。それが最初。買うんだったら良い物を買わないとあかんなって思ってて…。」

のぶちか
「以前、(全然給料が少ない時に)李朝の家具で百何万のを買われたというお話を聞かせて頂きましたが、あれはいつ頃買われたんですか?」

史朗さん
「三十(歳)半ばかなぁ…。」

のぶちか
「当時は『資料として買った』と言われてましたが…」

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史朗さん
「うん、資料として買ったって言うのと、なんかすごい良く見えたっていう(笑)。で、まぁ所有する事によってそのレベルに近付きたいとかさ、憧れがあるじゃん、その服でもさぁ良いもの買って、それに近付きたいっていうかさ、そのスタイリングとかじゃなくてまぁ…、そういう買い方もあるね。それを買ってそっちに近付く…、まぁ分かんない。自分が思ってるものがそこに反映されてるだけかもしれないから、どっちが先かは分からない。とにかく良いと思ったり参考にしたいものがあるんだったら買うべきやろ、って感じ。買わないと近付けないっていうかね(笑)。『身銭を切らんといけない』、って親父も言ってたし。」

のぶちか
「物に対しての執着だとかリスペクトという所と、それを見てそこに近付きたいというのをクリエーターサイドとかデザイナーサイドの方に偶像的に『彼(彼女)に追いつきたい』とかそういう感覚とかはあるんですか?そこはものになるんですか?」

史朗さん
「人に?そう言われると人じゃないんかも知れないねぇ。やっぱりものなんだよねぇ…。やっぱ人を見れば見るほど『どうかしてる』って思う事もあるしね(笑)。人に対する憧れが…、(人よりは)ものやろうねぇたぶん…。」 

のぶちか
「ものなんですねぇ~…」

史朗さん
「ハンス・ベルメールって知ってる?」

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のぶちか
「いえ、教えて下さい。」

史朗さん
「まぁ変人…、変人なんよ。それになりたいとは思わない。あの…球体人形とか知ってる?気持ち悪いシュールなやつ。見たら知ってるかもしれない。」


史朗さん
「これ、版画やからね。」

のぶちか
「へぇ~………(しばらく眺める)」

史朗さん
「まぁそういう(作品を)買う出会いもあったりして…。」

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のぶちか
「…僕の場合だと人の方に入ってっちゃって失敗した事がいっぱいあって」

史朗さん
「人?」

のぶちか
「例えば、アーティストとしては成功してるんだけど私生活の方は非常に堕落してたりとか、」

史朗さん
「あ~」

のぶちか
「おかしい人だったとかっていう、だからアウトプットがしっかりしてるとそういう私生活だったりとか人間性とかが崩壊しててもそれすらアートになるとか、美化されるとか、ダダイスティックな感覚っていうか、っていう風に僕は変換しちゃった時期があって『あっ、それ違ってたな』ってやっと気が付いたんですけど(笑)、今史朗さんのお話を伺ってるとそこは綺麗にちゃんと遮断されてるというか」

史朗さん
「遮断(笑)」

のぶちか
「だからといって人間性…、例えばこの人(ベルメール)が変だった場合に『この人変だから、この人の作品は嫌だな』っていうところを紐づけないで、切り離して作品として見られているというか…」

史朗さん
「あ~…、どうだろうねぇ…、人としてあった事が無い人が多いからねぇ。物故作家が多いからねぇ。まぁ…、素晴らしいとは思うけどねぇ…変だけど…。」

のぶちか
「あ~…」

※そして本を見せてくれながら

史朗さん
「これ見て…、こういう…人形。ハンス・ベルメールってあの四谷シモンって知ってる?日本でも球体人形を作った人がいて、四谷シモンっていう…ちょっとベルメールに影響を受けてね、人形作るんよ。まぁそういうシュールな感じ(の作品)。」

のぶちか
「……ちょっと怖いです、僕は…怖い(笑)」

史朗さん
「これ怖いの?(笑)怖い?(笑)」

のぶちか
「はい(笑)!」

史朗さん
「ハハハ(笑)!それでこの人が版画とかも結構遺してる。それがねぇまぁめちゃくちゃ線が綺麗。」

のぶちか
「線が綺麗?はぁ~…」

史朗さん
「線が綺麗…だなぁ…」

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※しばし本を眺める時間が過ぎ、次の本を出してきてくれる史朗さん

史朗さん
「この人知ってる(笑)?女性(出口直日)なんやけど。大本教って出口王仁三郎(直日の父親)って…知らん…?」

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のぶちか
「いや…、もうなんか勉強不足で恥ずかしいです…汗」

史朗さん
「いや、その人(本の中の人)知ってる人(あまり)いないから。」

のぶちか
「(ホッとしながら)はぁはぁ…汗」

史朗さん
「もう当時『壺中居』で個展したり」

のぶちか
「あっ、そうなんですか!?」

史朗さん
「宗教家の娘。」

のぶちか
「へぇ~(※この後、本を見ながら直日の事や作風などに触れ)、この方を知るきっかけはなんだったんですか?」

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史朗さん
「まぁ出口のお父さん、王仁三郎。で、百碗って言って戦争中に茶碗作ってた人なんやけど、で、その~、好きとか嫌いとかじゃなくてそういう…あの、まぁあの世というか、あの世を表現するんよね、宗教家だから。で戦争中に戦争じゃなくこう…、茶碗を作った…。で、大本教の本部に一回行った事があって、でその後にその直日さんていう人を知って、まぁその…、無欲の陶芸の代表みたいなもんだよ(笑)。目指すっていうかこれ…だろうなって感じもするしね(笑)。目指すって訳やないけど…」

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◆濱中史朗作品はこちら⇩


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