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経済書(9):「失われる民主主義、破裂する資本主義」「グローバルサウスの逆襲」

今回も前回に続いて現在の社会状況について、世界の論客たちはどう考えているのか、コンパクトに解説した本と関連書籍について紹介したいと思います。

失われる民主主義、破裂する資本主義

今回は朝日新聞社が主催した「朝日地球会議2022」に登壇した世界の論客たちのインタビューと日本の識者たちのシンポジウムをまとめた新書
「2035年の世界地図」を紹介します。

「民主主義の未来予想図」「資本主義の未来予想図」の2部構成ですが、タイトルからして、おどろおどろしいですね。

登場する識者はNHKスペシャル「欲望の資本主義」で取り上げられている識者も多いので、被るところが多いかもしれませんが、こちらの新書もわかりやすく現代社会の論点をまとめられています。


本書に関連する経済書・社会学書

民主主義の未来予想図

まず、「民主主義の未来予想図」の章から、まもなく民主主義は寿命を迎えると説くエマニュエル・トッド氏。

パンデミックや紛争が絶えない危機の時代だからこそ、「新しい啓蒙」が必要と説くマルクス・カブリエル氏。

資本主義の未来予想図

つぎに「資本主義の未来予想図」の章では、いま起きているのは利己主義と利他主義の戦い。真に必要なものは「命の経済」と説くジャック・アタリ氏。

そして、現代には「2種類の資本主義」が顕在化するようになったが、本来、資本主義は無道徳で、現在はさらなる「グローバルな不平等」をもたらしていると説くブランコ・ミラノビッチ氏。

また、日本の識者代表として、東浩紀氏の本も紹介しておきます。


グローバルサウスの逆襲

そして、もう1冊、日本の論客代表として、テレビ解説やジャーナリストとして有名な池上彰氏と元外交官で作家の佐藤優氏の対談本も合わせて紹介しておきたいと思います。

この本では、
 今や人口でも経済規模でもBRICS先頭にアフリカ諸国に拡がる「グローバルサウス」が世界の過半数を超えるようになった。
 そして、グローバルサウスは民主主義やポリティカルコレクトネスといった先進国・欧米的なイデオロギーに囚われず、個々の利害で動く自国中心主義を掲げて行動するようになっている。
 米国におけるトランプ旋風も米国の中の中間層・経済発展から取り残された国民がグローバルサウス的な自国中心主義を理屈抜きに支援するようになったからではないか?
と中東やロシア、アジア、欧米の最新情勢を分析しながら「いまの世界の動き」を「グローバルサウスと先進諸国の対立構図」として捉えています。

この話は前述のブランコ・ミラノビッチ氏の「2種類の資本主義」の話、
前回 noteで紹介した「ブレグジットに反対するエニウェア族」にも共通する話になっているかと思います。

分厚くて難解な単行本の経済書を読むのはちょっと苦手という方は
今回紹介したような新書を中心に読まれてみてはいかがでしょう?
きっと、これまでの見方や知識とは異なる「世界の動き」が見えてくる
と思います。


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